指輪に導かれて

ゆきりん(安室 雪)

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 その後、エマさんに建物内を案内してもらい、昼食後にやってきた街で人気の仕立て屋さんが、出来合いのドレスを持ってやって来た。エマによって優は着せ替え人形のように何着もドレスを着替えさせられた。途中でお茶の時間を挟んだが、仕立て屋が帰ったのは既に日が傾く頃だった。

 そして優には、優専用の部屋が用意され、クローゼットには先程の仕立て屋から購入した服が半分位埋められている。それに靴や帽子。

 夕食を食べ部屋で所在無げにソファに座っているとエマが来た。

「旦那様がお帰りになったので、ご挨拶を」

 旦那様?

エマさんに着いてダイニングに向かうと、朝ベッドで一緒に寝ていた男性が丁度椅子に座る所だった。

「アレクサンドル様、お連れしました」

 優を前に差し出す。

「ああ、緊張しないで。紅茶でも飲む?俺は今から夕食なんだ。食べながら話し聞くから」

 と、笑顔で食事をしながら優にお茶を勧める。

「まず、名前は?」

「優です」

「何で森にいたの?」

「覚えてません」

 森にいたんだ?

「親は?」

「いません」

 高校に入って、両親とも交通事故で亡くなったのだ。

 ふうっ、とため息を吐かれる。

「俺はアレクサンドル。アレクって呼んでくれて構わない。で、優の魔力は何?」

「は?魔力?」

「ああ。火とか水とか風とか、何が使える?」

 「使えませんけど・・・」

 人間だからね?

「俺は・・・、こんなんかな?」

 とアレク様は掌を上に向け、ほんわりとロウソクの炎の様な火を出す。

「うわぁ~」

 マジック?種は仕掛けは?

「優もやってみて。掌を上に向けて、今みたいな火を思い浮かべて」

 言われるがままにやってみる。

 すると、ほわんと小さな火が出てくる。

「うわぁ、びっくりした!」

「自覚無しの魔力持ちか」

 ふむ、とアレク様はお肉を頬張りながら考える。エマに空のグラスを用意させると、優に向かい、

「優、このグラスに水がなみなみに入っているイメージしてみて」

 なみなみ?ああ、グラスいっぱいにって事?

 空のグラスに水なみなみなんて~と思ってると、水がどこからともなくグラスの中に入ってくる。そして溢れる前に止まる。

「ふむ。優秀だね。じゃあ、これを手を使わないで振り払ってみてっ!」

 いきなりお皿が飛んでくる。

「何するんですかっ、危ないじゃ・・・!?」

 優の目の前でお皿が弾き飛ばされて壁に当たり割れる。

「えっ!?」

「ふむ、反射能力プラス風かな?とりあえず後は、そのネックレスだね」

 ずっと付けたままのネックレスを指差す。

「グリフィンは知ってる?俺のグリフィンは銀って言うんだけど。優はそのグリフィンに名前を付けるとしたら?」

「は?このネックレスですか?う~ん目が赤いから『こう』かな?」

 と言うとネックレスからもやんと煙の様なモノが出てテーブルの上に掌に乗るサイズで生きてるグリフィンが出てくる。

「うわ~っ、何これ。可愛い!毛は柔らかいし、羽もフワフワ。もふもふ可愛いっ!」

 掌に乗せ、頬ずりする。

「ははっ、建物内だからそのサイズか。グリフィンも優秀だな。どれ」

 アレク様は優からグリフィンをつまみ上げると、部屋を出て行く。優も後ろを付いて行く。どこに行くのだろう!?

 付いた先には厩の様で馬がいるが、その最奥には大きなグリフィンがいる。その前に優のグリフィンをポイと離すと、優のグリフィンはぐぐぐ~んと大きくなる。

「銀と同じ位か」

 そう言うと、厩の係りに

「新しいグリフィンの『紅』だ。世話を頼む」

 と紅を残して、今度はサロンに向かう。長椅子やローテーブルが置いてあり、アレク様にコーヒー、優にはまたもや紅茶が用意される。

 そしてアレク様は優に向かって話し始める。




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