指輪に導かれて

ゆきりん(安室 雪)

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 朝食を食べる頃には、優の右手に現れたモノは影も形もなくなり、違和感も消えた。何だったのだろう?

 優の右手に現れたモノ。まるでこの世のモノとは思えない様な、キラキラした丸いダイヤモンドを上から見たようなものが手の甲に埋まっていたのだった。過去形。今は何も無い普段通りの右手だ。甲を上から撫でても何かある気配は無い。アレク様も一緒に見ているので寝ぼけた訳ではないし。

 デザートのいちごを摘まむと、アレク様から感嘆の声が上がる。

「美味いな、このいちごと言うやつ」

 朝摘みのいちごを気に入って貰えた様だ。普段はあまりケーキ等の甘いお菓子を食べないアレク様だが、何粒も口に運ぶ。ふふふっ、ここの庭に色々な果実育ててアレク様に食べて貰おっ。

「そうだ、優。右手の例のモノは、しばらく秘密にしておかないか?また陛下やライ様に目を付けられると面倒な事になりそうだし。とりあえず、今は現れてないしな」

「そうですね~。私もそうしたいと思ってました。お城に監禁とかイヤだし」

 目配せしてふふっと笑う。




 城に登城し、いつも通りの馬の葉の水遣り。でも、いつも通りにはいかなかった・・・。



 アレク様は毎朝、優が水遣りを終えるのを待ってから一緒に騎士塔に行くので、待っていてくれる。馬の葉の畑の前に立ち、水を降らそうと手を上にかざした時だった。フワリと右手が光り、七色に光るの水が降ってきたのだ。その水を受けた馬の葉はいつもよりも大きく育ち、株数も勝手に増え、畑じゃないところにもはみ出して育っていく。我に返った優が水を止める頃には、一面馬の葉のだらけになっていて、見える範囲全て覆いつくされている。馬の葉を掻き分けて優の側に来てくれたアレク様だが。

「優、ヤバイ事になる気がしてやまない」

「・・・、思います」




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