僕の記憶を、失くした者

あれ、ここどこだろう…。

景色が傾いて見えるのは、僕が横たわっているせいか。見えるものといえば、高くいくつも立っている大きな木達に、雑草くらいだ。

寒い。

僕は「よいしょ」と声を出して、重たい身体を起こすと、ゆっくり立ち上がった。
小さな風が吹く。
すると、周りの木々達が騒がしい音を立てて揺れる。

僕はここで、何をしているんだ…。
今さっき頭に浮かんだ疑問とは別に、そんなことが頭浮かんだ。周りを見渡してみても、あるのは、木、木、木、草、草、草。そして星空にぽっかりと浮かぶ満月だけだ。どうやらここは森らしい。それに不思議なことに、僕のいるその場所には何故か草も木も生えていない。

周りは雑草で生い茂っているのに、この円形の空間だけは、何故か切り取られたように何もなかった。


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