ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる２

Mission ４＊疑惑

６

　月曜日。

　仕事を終えて電車を待っている時、電話が掛かってきた。

　調査結果をＰＣにメールしたという内容。

　俺は家に帰り、ＰＣを開いた。

　伊織は大学で情報工学とコンピューター科学を学び、応用情報技術者、システムアーキテクト、ネットワークスペシャリストなどの国家資格を持っている。在学中に発案したサイバーセキュリティが高く評価された。



　なんだ……これ……。

　なんでこんなコンピューターのプロが、ＳＩＩＮＡの総務で報告書の作成なんてしてるんだ……？



　学部を首席で卒業後、卒業後は派遣会社に登録。現在はデザイン事務所・ＳＩＩＮＡに勤務。

　最後にＪＰＧファイルが添付されていた。俺はファイルをダブルクリックした。

　ディスプレイに大きく表示されたのは伊織と社長が楽しそうに食事をしている画像と、二人がホテルの部屋に入って行く画像。日付は先週の金曜。伊織が社長に誘われて食事に行った日だ。

　二人の画像を見ながら、俺は大きく深呼吸をして気持ちを静めた。



　伊織は気持ちのない相手と寝るような女じゃない。

　まして、二股なんてあり得ない。



　それは確信があった。



　伊織はこの翌日、俺の腕の中にいた。

　つまり、社長とはそういう関係ではないのだろう。

　じゃあ……どういう関係だ……？



　画像の伊織は職場では見せない安心しきった表情で、社長と向かい合っている。部屋に入って行く時も、何のためらいも緊張もない様子。



　一体、どうなっている……？



『私は圭を信頼してる』



　俺も伊織を信頼している。



『だからと言って全てを共有することは不可能なの』



　本当にそうなのか？



　俺はネットから支払いを済ませ、ＰＣを閉じた。

　シャワーを浴びて、ベッドに横たわる。微かに、伊織の香りを感じた。目を閉じると、昨夜の彼女の感触が思い出された。



　言葉にしないだけで、伊織が俺を好きなのは確かだ。

　じゃあ、社長は……？

　伊織は社長に誘われてＳＩＩＮＡに入ったと言っていた。

　けど、あれだけの資格を持っていれば、就職先は好きに選べたはずだ。

　それに、履歴書にも書かなかった俺の保有資格を知っていた。

　どうして……。

　伊織は俺に、何を隠している……？



　そんなことをぐるぐると考えながら、俺は眠りについた。