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Mission 20*誓い
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しおりを挟むベストシステム――?
「正解! やっぱり、俺だって知らなかったか」と、長谷川はご満悦。
「つーわけで、これからヨロシク、ボス」
ボ……ス?
「え? じゃあ――」
伊織は嬉しそうに頬を赤らめ、満面の笑みで長谷川を見つめる。
「ありがとう!」
「いや、こちらこそ誘ってもらえて嬉しいよ」
二人だけの会話が気に入らない。
「おい! イミ、わかんねーんだけど!!」
「あ、ごめんね? 私、ずっと長谷川くんをヘッドハンティングしてたの」
「は?」
ヘッドハンティング?
「長谷川くんの開発したシステムに一目惚れして、T&Nに来て欲しいってお願いしてて――」
伊織がこんなにはしゃぐのを、見たことがあっただろうか。
「でも、まさか、長谷川くんだったなんて――」
「俺も、俺を欲しがっているのが古賀だって聞いて、驚いたよ」
俺を欲しがる……とか、意味あり気に言いやがって――!
感動的な俺のプロポーズは忘れ去られ、意外な展開にみんなが成り行きを見守っていた。
「ってわけで! これからゆっくり口説くから、一先ず婚姻届はナシにしない?」と言って、長谷川が婚姻届を指さす。
「しねーよ! お前っ、ふざけ――」
ムキになって長谷川に噛みつく俺を横目に、伊織がペンを走らせ始めた。
え――――?
部屋中の視線がペン先に集まる。
「あーあ……。書いちゃった」と、長谷川が残念そうに呟く。
伊織がペンを置くと、俺は急いで用紙をたたみ、バッグにしまった。
「ふふふ。変わってないね、長谷川くん」
伊織が笑う。
「ありがとう」
「芹沢に泣かされたら、言えよ?」
二人の意味深な会話に、苛立ちが募る。
「え? なに。長谷川と古賀って付き合ってたの?」
「いや、振られたんだよ」
「いつ?」
「高校の時と……今?」
高校の時……?
長谷川が伊織を好きだったなんて、知らなかった。振られていたことも。
「芹沢! 油断してっと奪うかんな!」
「誰がやるか!」
俺は長谷川から引き離すように、伊織を抱き寄せる。
「つーか! 伊織に寄るな」
「ホント、余裕ねぇな」
必死になっているのは俺だけで、伊織も長谷川も笑っている。
何なんだよ……一体!
「ま、こんだけ証人がいるんだ。古賀を泣かせたらここにいる全員に一発ずつ殴らせろよ?」
長谷川の言葉に、みんなが賛同する。
「いいね!」
「一発だろうが三発だろうが殴られてやるよ!」
「お、言ったな?」
「誓って俺は伊織を泣かせないし、お前にもやらない!」
俺が嫌いな長谷川の見透かすような不敵な笑顔は健在で、挑発だとわかっていながら乗ってしまった。
「神様に誓うより、重いぞ?」
「上等だ!」
神聖な近いとは程遠いが、誰を前にしても断言できた。
死んでも伊織を離さない――――。
喧嘩腰の誓いに、伊織が呆れ顔で笑った。
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