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番外編*甘いお仕置き
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「やっぱり泊って行こうか」
梓がそう言ったのは、倉木社長が部屋を出て行って二杯目のジャンパンを飲み干した後。
「なんか、疲れちゃったし。ホテル内で着替えは買えるよね」
梓らしくない言葉。
やはり、倉木社長のことが気にかかって、というより怒っているのだろうか。
部屋でゆっくり話す必要があるな。
「部屋、取ってくる」と言いながら、俺は立ち上がった。
すぐに、妻も立ち上がる。
「私も、行く」
彼女から俺の腕に手を添えた。
俺は彼女に合わせて、ゆっくりと歩いた。
どうしてこんなことになった。
倉木社長の誘いに乗ったのは俺だし、その必要もあった。だが、まさか、こんなに後味の悪い話になるとは思ってもいなかった。
ちょうど部屋のカードキーを受け取った時、俵の姿を見つけた。
さっきの電話で、実家にある梓の荷物を持って来てほしいと頼んであった。
それを伝えると、梓はほんのり赤い顔で俵に微笑んだ。
「ありがとう、理人さん」
は――っ!?
人前では表情を変えない俵も、目を丸くしている。
「梓――」
「――皇丞くん」
呼ばれて振り向くと、永江さんがいた。
「寿々音さんに頼まれてね? 梓さんを手伝って欲しいって」
「ありがとうございます」
「堀田様。申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします」
俵が秘書の顔で永江さんに頭を下げた。
「お着物はあなたが?」
「はい。持って戻るように言われております」
「じゃあ、私が持ってくるまで、あなたたちはコーヒーでも飲んでいて?」
「いえ、そこまで――」
「――待っていてね?」
「はい」
物腰柔らかそうに見えても、あの堀田社長の奥様だ。
有無を言わせぬ声色と優しい表情がミスマッチで、俵がああっさり引き下がった。
「じゃあ、俺が荷物を――」
「――待っていてね?」
永江さんとは違う、思いっきり笑顔で楽しそうに言うと、梓は俵の手からバッグを奪い取り、胸に抱いた。
「永江さん、行きましょう!」
梓がくるりと半回転し、ずんずん歩き出す。
「おいっ! カードキー」
「私が持って行きましょうね」
差し出された永江さんの手に、カードを渡す。
「梓ちゃん、酔ってんじゃね?」
俵に言われて、彼女が何杯飲んだか思い出す。
会場で一杯、部屋で二……三杯?
「つーか、梓ちゃんの名前呼び、マジでヤバかった」
「忘れろ。聞き間違いだ。妄想だ」
俺も、思った。
どうしていきなり?
永江さんを待つ間、俺と俵は言われた通りラウンジでコーヒーを飲んだ。
倉木社長との話を俵に伝え、父さんへの報告を頼んだ。
秘書の件は話さなかった。
社長はああ言っていたが、如月秘書の意向を確認していない。
それに、少し気になることもあった。
二十分ほどで永江さんが下りてきた。
着物を受け取った俵を見送って、永江さんを堀田社長の元に送り、もう一度礼を言った。
専用エレベーターで二十五階に上がり、エグゼクティブフロアのフロントでルームサービスを頼んでから、部屋に向かった。
部屋では、梓がソファに腰かけて、夜景を眺めながらグラスを傾けていた。
「梓? 今、ルームサービス頼んだから、あんまり飲むな」
「は~い」
グラスを置き、梓が立ち上がる。
ドキッとした。
バスローブかと思った白い羽織は浴衣のようで、バスローブより全然薄い。
凝視しそうになり、慌ててフイッと目を逸らした。
話をしなければ。
「先にシャワー、浴びるか?」
「……一緒に?」
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