復讐溺愛 ~御曹司の罠~

深冬 芽以

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番外編*甘いお仕置き

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「ムカつく!」

 ボタンはあんなにてこずったのに、ベルトは簡単に外す。

 酔った梓の言動が予測不能すぎて、焦る。

「待て待て待て! 何する気――」

「――今日は! お仕置きです。皇丞は私に触っちゃだめ」

「はぁ?」

「触ったら、一年エッチ禁止ね」

「いや、無理だろ」

「どっちが?」

「どっちも!」

「手、縛る?」

「そういうことじゃ――」

「――とにかくダメ!」

 今頃、梓が飲むのを止めなかった事を後悔しても遅い。



 いや、だって、こんなんなるとか知らねーし。



 ファスナーが下ろされて、思わず生唾を飲んだ。

 正直なところ、このまま流されたい。

 が、やはり、すっきりした気持ちで愛し合いたい。

「梓、ストップ! マジで――」

 ピーンポーン

 救いのチャイムに、梓が顔を上げた。

 俺は素早く立ち上がり、パンツを穿き直す。

「ルームサービスだ」

 こんな姿の梓を見られるわけにはいかない。

 俺は寝室のドアを閉め、何となくジャケットのボタンまで留めて、ドアを開けた。

 ウエイターがワゴンに乗った料理をテーブルに置く。

 後で食べるから蓋をしたままにしてほしいと頼むと、そうしてくれた。

 冷えた水を一杯飲んで、寝室に戻る。

 梓はさっきまでと同じ場所に座っているが、さっきより顔が赤い気がする。

「軽く食べよう」

 梓が首を振る。

「怒ってるなら怒ってるって――」

「――怒ってるけど、皇丞にじゃない」

「じゃあ――」

「――倉木社長はズルい。あんな風に託されたら、皇丞は断れないし、忘れられないじゃない」

「梓……」

「もっと、すっごく、嫌な女性ひとなら良かったのに……」

 唇を尖らせ、俺を見上げる妻は最高に可愛い。そう言ったら、ふざけるなと怒られそうだが。

「梓、おいで」

 俺は彼女に手を差し出し、彼女はそれに手を重ねた。

 立ち上がらせ、ベッドに座らせる。

「寒くないか?」と聞くと、身体を摺り寄せてきた。

 梓がこんなにストレートに甘えてくるのは珍しい。

 俺は、彼女の髪を指で梳いた。

 そして、妻の腰を抱き、自分に跨らせて向かい合う。

「託されたって言っても、ウチはウチの仕事をするだけだ。それも、俺が担当するわけじゃない」

「けど……」

 膨れっ面の妻の頬に口づける。鼻や、目にも。わざと、チュッと音を立てて。

 そして、最後に唇。

 梓の柔らかな唇がわずかに開く。

 当然のように舌を挿し込むと、彼女の温かな舌に迎え入れられた。

「ん……」

 シャンパンの味がする。

 彼女が俺の首に腕を回し、俺は彼女の腰を抱いた。

 布越しに彼女の体温を感じて、身体が火照る。

 梓の髪が耳をかすめて、くすぐったい。

「触っちゃだめだなんて言うなよ」

「いや。これはお仕置きだもの」

 梓が俺の耳たぶを食む。

 背筋がゾクッと寒くなる。なのに、身体の中心は熱くなる。

「なんの? 俺のことは怒ってないんだろ?」

「只野姫」

「やめろよ」

「離婚するくらい愛されてるのね」

「本気だったら、そもそも結婚しないだろ」

「確かに」

 耳に彼女の弾んだ息がかかり、思わずぎゅっと目を閉じた。

「でも、だめ。お仕置き」

 俺の弱点だと知っていて、耳ばかり舐める。

 さっきは外せなかったボタンをするすると外し、俺の腕からジャケットとシャツを抜いた。

「梓……」

「着物、脱がしたかったんでしょ?」

「ああ」

「でも、だめ。触らせてあげない」

「意地悪言うなよ」

「だ~め」
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