【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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【番外編】最後の夜、最初の夜

最後の夜 -7

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「耳が痛てぇ……」と、男性陣が顔を歪ませる。

「コウの奥さんの話だけどさ――」と、あきらが切り出した。

「――麻衣が言った通り、女って四十を境にホルモンバランスが崩れて、身体も精神的にも不安定になりやすいのよね。だけどさ、だからって急に、甘えたりできないじゃない? それこそ、キャラが違うって思われたくなくて。そういうの、心当たり、ない?」

「んー……」と、コウが唸る。

「気遣われるのも、嫌かも。――あ! そりゃ、それなりには大事だけど、なんか……年上扱いされてるって言うか――」

「――ババア扱いされてるって?」と、千尋がオブラートを引っぺがして言った。

 身も蓋もないが、その通りだ。

「けど、年下に猿みたいに盛られたら、引かない?」

「限度があるけど、私は引かないな」

「きっちり相手すんの?」

「いや、っていうか……、うん」

「なになに? なんか意味ありげな反応じゃね?」

 お酒の威力は恐ろしい。

 普段ならば絶対、他人にこんな話はしない。

 二度と会うこともないだろうという安心感もあるかもしれない。

 とにかく、私の認知能力は普通ではなかった。

 それでも、僅かに残った羞恥心が、両手で顔を覆わせた。

「最近は……私の方が猿……で?」

「麻衣が猿?」

「しかも……、イジメるの……好きで……」

「麻衣が!?」と、千尋とさなえとあきらが声を上げる。

「まい、Mっぽいのにな」と、マキが言った。

「そ! この見た目と巨乳のせいで、そういう扱いが多かったのよ」と、千尋。

「それが、実はSだったって、ビックリなんだけど?!」

「要は、セックスの良さを知らなかっただけだろ? それを知って、目覚めちゃったってこと」

「相手が年下なら、母性本能も混じって、Sとしても目覚めちゃったってわけか」と、男性陣が納得の表情で頷く。

「確かにねぇ……。麻衣のダンナって、可愛い顔してるから。泣き顔とか、興奮するかも」

「そういうこと?」と、さなえが耳打ちする。

 私は頷き、手を外しておしぼりで顔を覆った。顔が火照り過ぎて、ぬるくなったおしぼりが冷たく感じる。

「もう……っ。私の方が引かれてるかも! いい年してハマっちゃって」

 そうなのだ。

 あれだけ濡れなかった私の身体が、駿介とのセックスですっかり濡れやすくなってしまった。

 そして、セックスがこんなに気持ち良くて幸せを感じる行為なのだと知った私は、セックスが楽しくて仕方がない。

「えーっ、嬉しいでしょ。男としては堪んないよね」と、カズが言う。

「自分にだけ見せてくれる一面とか、サイコーだよ」

「確かに! 普段はツンツンしてんのに、セックスの時はめっちゃ甘えたがりなのとか、その逆とか。いやー、想像したら嫁さん抱きたくなってきた! 俺、帰るわ」と、テツが立ち上がった。

「マジで? 薄情だな、おい!」

「ちょうどいい時間だしな」

 スマホを取り出して時間を見ると、二十二時四十八分。

「もうこんな時間か」と、カズもジョッキを飲み干して立ち上がった。

「十二時過ぎると怒られんだよ」

「そうね。私たちもそろそろ帰ろうか」と、あきらが言った。

「すげー楽しかったよ。これ、俺の分。細かいのは今度精算してくれ」

 そう言って、テツとカズが一万円ずつコウに渡す。

「俺ら東方面だけど、誰か一緒に乗ってく?」

「さなえ、どうする?」と、千尋が聞く。

「うん。乗せてもらおうかな」と言って、さなえが立ち上がった。

「麻衣ちゃん、明後日楽しみにしてるね」

「うん! 今日はありがとう」

 四人が店を出て行き、四人が残った。

「あきらは? どっち方面?」と、マキがあきらに聞いた。

「私は歩き。ホテルだから」

「あ、そうなんだ? 札幌住まいじゃないの?」

「うん。旦那の仕事で今は釧路なの。麻衣は? 帰る?」

「うん。電話して迎えに……来てもらう」

 私は駿介にメッセージを送った。

 迎えはいらないと言ってあったのだけれど、飲み会が始まった頃に、やっぱり迎えに行くからとメッセージが届いていた。
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