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7.元上司が恋人になりました
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「いい加減にしてくれ! 俺はお前とやり直す気は少しもない! もう恋人ができたから、もう連絡してくるな。迷惑だ!」
……コイビト?
なぜか、その言葉に少しだけ胸の奥がモヤる。
いや、モヤるというかくすぐったいという方が正確かもしれない。
というより、どこか他人事のような不思議な感じ。
自分が出演している漫画でも見ているような、そんな感じ。
こいびと……。
「ったく! 非通知をブロックってできんのか?」
篠井さんが乱暴にスマホをタップしている。
ピロピロピロッ、ピロピロピロッ。
「またかっ! くそっ!」
koibito……。
ヤることヤっておいて今更なのだが、どうにもしっくりこない。
ピロピロピロッ、ピロピロピロッ。
「夏依。非通知のブロックってどうやって――」
恋人…………。
「――夏依?」
私と篠井さんが……?
「夏依!」
「はい! 喜んで!」
ぼうっとしていたら、呼ばれて無意識に答えてしまった。
しかも、かなり元気よく。
「……は?」
「あれ?」
顔を見合わせて瞬きをすると、篠井さんがぶはっと吹き出した。
「あっははははは! どこの居酒屋だよ!」
篠井さんがお腹を抱えて笑う。
自分でもなにが『喜んで!』なのかと恥ずかしくなった。
とはいえ「そんなに笑わなくても」と思ってつい唇を尖らせてしまう。
ん? あれ?
「悪い。香里からの電話で苛立ってた分、ウケた」
「え?」
「ん?」
あ、また声に出てた……。
私の悪い癖だ。
つい心の声が言葉になってしまう。
昔から、この癖のせいで苦い思いをしてきたのに、なかなか直らない。
篠井さんに笑われたことよりも、悪い癖だとわかっているのに直せないことに落ち込んで、項垂れる。
が、すぐに篠井さんの大きな手が私の頭の上にのせられ、強制的に顔を上げさせられた。
「部下だった頃のお前とギャップあり過ぎて、ヤバいな」
彼のニッと笑った顔が近づき、唇が重なる。
ドライ……とは?
どう見たって真逆の甘さだと思う。
抱きしめられ、素肌の胸に手を置くと、少しヒヤッとした。
当然だ。
起きてからお互いに裸。
篠井さんの唇が開いたのがわかり、私もそうしてしまったのは、反射的なもの。
さっき飲んだ水のせいでまだ少しひんやりしていた互いの舌も、触れあい絡め合えばすぐに熱くなる。
「ん……」
篠井さんの片手が腰に触れ、意味ありげにさわさわと撫でる。
そこでピーッと電子音。
オユハリガシュウリョウシマシタ。
空気を読まないその声に、キスは強制終了。
「さ、風呂入ってこいよ」
立ち上がった篠井さんが、ベッド下に散らばったままの私の服を拾い上げた。
「篠井さん」
「ん?」
自分の服もまとめて拾い上げ、抱える。
「腰が痛いです」
「ああ、悪い。これ、持って」
二人分の服をぐしゃっと丸めて私に押し付けるように持たせると、そのまま前のめりになって私を抱きしめた。いや、そうじゃない。
私の腰に腕を回すと、抱き上げた。
「わわっ」
バランスが不安定で、洗濯物をお腹に抱えて彼の首に手を回す。
手を貸してくれると思った。
まさか、抱き上げられるとは。
「腰、大丈夫か?」
「はい」
「頭、気をつけろよ」
ドアの位置は天井が低くなっているから、私が頭をぶつけないようにと一度立ち止まる。
ドライ……。
私が頭を下げると、彼がフッと笑った。
ドライ……。
「なに、難しい顔してんだよ」
「え?」
「お姫様だっこってやつが良かったか?」
「そんなこと――」
「――あれじゃ、余計に腰を痛めそうだからな」
……コイビト?
なぜか、その言葉に少しだけ胸の奥がモヤる。
いや、モヤるというかくすぐったいという方が正確かもしれない。
というより、どこか他人事のような不思議な感じ。
自分が出演している漫画でも見ているような、そんな感じ。
こいびと……。
「ったく! 非通知をブロックってできんのか?」
篠井さんが乱暴にスマホをタップしている。
ピロピロピロッ、ピロピロピロッ。
「またかっ! くそっ!」
koibito……。
ヤることヤっておいて今更なのだが、どうにもしっくりこない。
ピロピロピロッ、ピロピロピロッ。
「夏依。非通知のブロックってどうやって――」
恋人…………。
「――夏依?」
私と篠井さんが……?
「夏依!」
「はい! 喜んで!」
ぼうっとしていたら、呼ばれて無意識に答えてしまった。
しかも、かなり元気よく。
「……は?」
「あれ?」
顔を見合わせて瞬きをすると、篠井さんがぶはっと吹き出した。
「あっははははは! どこの居酒屋だよ!」
篠井さんがお腹を抱えて笑う。
自分でもなにが『喜んで!』なのかと恥ずかしくなった。
とはいえ「そんなに笑わなくても」と思ってつい唇を尖らせてしまう。
ん? あれ?
「悪い。香里からの電話で苛立ってた分、ウケた」
「え?」
「ん?」
あ、また声に出てた……。
私の悪い癖だ。
つい心の声が言葉になってしまう。
昔から、この癖のせいで苦い思いをしてきたのに、なかなか直らない。
篠井さんに笑われたことよりも、悪い癖だとわかっているのに直せないことに落ち込んで、項垂れる。
が、すぐに篠井さんの大きな手が私の頭の上にのせられ、強制的に顔を上げさせられた。
「部下だった頃のお前とギャップあり過ぎて、ヤバいな」
彼のニッと笑った顔が近づき、唇が重なる。
ドライ……とは?
どう見たって真逆の甘さだと思う。
抱きしめられ、素肌の胸に手を置くと、少しヒヤッとした。
当然だ。
起きてからお互いに裸。
篠井さんの唇が開いたのがわかり、私もそうしてしまったのは、反射的なもの。
さっき飲んだ水のせいでまだ少しひんやりしていた互いの舌も、触れあい絡め合えばすぐに熱くなる。
「ん……」
篠井さんの片手が腰に触れ、意味ありげにさわさわと撫でる。
そこでピーッと電子音。
オユハリガシュウリョウシマシタ。
空気を読まないその声に、キスは強制終了。
「さ、風呂入ってこいよ」
立ち上がった篠井さんが、ベッド下に散らばったままの私の服を拾い上げた。
「篠井さん」
「ん?」
自分の服もまとめて拾い上げ、抱える。
「腰が痛いです」
「ああ、悪い。これ、持って」
二人分の服をぐしゃっと丸めて私に押し付けるように持たせると、そのまま前のめりになって私を抱きしめた。いや、そうじゃない。
私の腰に腕を回すと、抱き上げた。
「わわっ」
バランスが不安定で、洗濯物をお腹に抱えて彼の首に手を回す。
手を貸してくれると思った。
まさか、抱き上げられるとは。
「腰、大丈夫か?」
「はい」
「頭、気をつけろよ」
ドアの位置は天井が低くなっているから、私が頭をぶつけないようにと一度立ち止まる。
ドライ……。
私が頭を下げると、彼がフッと笑った。
ドライ……。
「なに、難しい顔してんだよ」
「え?」
「お姫様だっこってやつが良かったか?」
「そんなこと――」
「――あれじゃ、余計に腰を痛めそうだからな」
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