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17.指輪に誓う永遠
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しおりを挟む「麻衣ちゃん、寂しいのはみんなおんなじだからね?」
「そうだよ、麻衣。OLCが大事なのは、みんな同じだよ?」
地球滅亡の瞬間、『みんなと一緒に居たい』と麻衣は言った。
きっと、十年後も、二十年後も、そう言ってくれる気がする。
その頃は、『みんな』の中心に鶴本くんがいるのだろうけれど、それでも、きっと、麻衣は彼だけを名指ししたりしない気がした。
「前に、地球滅亡の時に誰と居たいかって聞いたじゃない?」
振り向いた麻衣の顔は涙でぐちゃぐちゃ。鶴本くんのシャツは麻衣の涙と化粧で、さらにぐちゃぐちゃ。
「私、あの時は答えなかったじゃない? だから、今、言うね。私も……みんなと居たい」
「千尋……」
「比呂と、生まれてくる子供と、みんなと、一緒がいい」
正直な気持ちだった。
比呂は大事。生まれてくる子は、同じかそれ以上に大事。
だけど、OLCのみんなのことも大事。
大事に想う気持ちの種類が違うから、どっちが、なんて言えないくらい。
「一緒に、居よう」
麻衣が大きく頭を頷くと、大粒の涙が彼女のスカートに落ちた。
「ほら、もう涙拭いて。私とさなえはいつでも会えるんだし」
「うー……」
ティッシュを渡すと、麻衣は豪快に鼻をかんだ。
「私も! いつでも帰って来るから」と言ったあきらの目にも、涙が浮かんでいた。
かく言う私とさなえもで、みんなでティッシュを引き抜いて、涙を拭う。
「いや、いつでもはヤメテ」と、龍也が言った。
「ホントにいつでも帰って来そうだから」
「龍也はいつまでもあきらに頭が上がんなそうだな?」と、陸が呆れ顔で言った。
「惚れた弱みだな」と、大和が笑う。
龍也が苦笑いをしてこめかみを掻いた。
こうしてみんなで笑い合える時間が、ずっと続けばいいと思った。
十年後も二十年後も、ずっと。
心から、そう思った。
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