楽園 ~きみのいる場所~

深冬 芽以

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12.逃避行、結ばれる夜

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 蜜口に指よりもずっと太くて熱いモノを押し当てられ、足の指がキュッとシーツを掴む。

 上下に擦られる。

 いつ挿入ってくるのかと、緊張が高まる。

「痛かったら、殴ってくれ」

「え?」

「もう……っ、優しくできる気がしない」

 両手で腰を掴まれると同時に、身体の中心に彼が侵入してくる。

「ん……っ、は……ぁ……」

 めりめりと柔肉を押し開いて奥へと突き進む。

 正直、痛かった。

 一度だけ修平さんとシた時は、こんなに痛まなかった。

 痛みを感じるほど奥に到達する前に、彼が想い人を抱いているという錯覚から覚めてしまったから。

 眉をひそめ、痛みに耐えながらも見上げると、私と同じく眉をひそめて苦しそうに息を吐く悠久の悩まし気な表情が目に入った。

 悠久も痛いのだろうか。

 聞きたくて、でも声が出なくて、私は彼に手を伸ばした。

 上体を起こしている彼の顔までは届かなくて腕を掴むと、パッと彼の瞳が私を映した。

「痛い?」

 私が聞きたかったことを、彼が聞いた。

 私は小さく首を振る。

「悠久の方が……痛そう」

 私の言葉に、彼が目を見開き、ハハッと笑った。

「気持ちいいんだよ」

「でも――」

「――良すぎて、少しでも楽の膣内なかにいたくて、耐えてた」

「そんな――」

「――けど、もう、ちょっと……無理かも」

 何が無理なのか聞く前に、彼が腰を揺らし始める。

「楽――っ」

 小刻みに揺さぶられ、けれど、きっと時間にすると一分もないくらいで悠久は「うっ」と声を漏らし、動きを止めた。

 私の膣内で、悠久が震えているのがわかった。

 覆い被さるように私に身体を寄せる彼の肩を抱き締める。

 お互いの鼓動が聞こえるほどぴったりと抱き合う。

 夢を見ているようだった。

 七時間前まで、悠久の姿を一目でも見たいと願うだけだった。

 それが、今は、彼と身体を繋げている。

 死んでもいい、と思った。

 本気で、思った。

 この幸せに包まれて死にたい、と。

 涙がこめかみを伝う。

 明日のことなんて、どうでもいいと思った。

 誰に咎められても、構わない。

 悠久と一緒なら、いい。

 地獄でも、いい。

「楽……」

 肩に、首に、悠久の口づけが落とされる。

 顎に、頬に。

「悠久……」

 彼の指が私の涙を拭う。

「もう、離さないから」

 揺らいでいた視界が晴れる。

 鼻先が触れ合うほど近くで私を見下ろす悠久の瞳も、涙に揺れていた。

 彼の涙をすくうように、口づけた。

「もう、離れない」

 互いの瞳を見つめたまま、キスを交わした。

 目を閉じて、次に目を開けたら夢から醒めてしまうんじゃないかと怖かった。

 その夜、悠久は何度も私を抱いた。

 デキなかったなんて嘘のように、何度も。

「間宮楽になって」

 声が枯れるほど喘がされて、意識が遠のく直前に、悠久が言った。
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