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第5話
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成木はその日、組の幹部を引き連れて、山間の温泉旅館を貸切り、乱交パーティに興じていた。
「ヨダレを垂らしてションベンまで漏らしやがって、祇園の一流芸者が台無しじゃねえか? このシャブ中おんな!」
「お願いだから早く頂戴よお! あはははは」
覚醒剤を打って、みんな狂ったように快感に溺れていた。だが成木だけはシャブを打たない。
「シャブをやる奴はバカしかいねえんだよ。何でシャブって言うか知ってるか?
死んで火葬にすると骨も残らねえ。だから「骨までしゃぶり尽くす」という意味でシャブなんだよ! クソ野郎どもが!」
背中に墨を入れた組幹部たちは女に激しく腰を打ち付けていた。
組長の成木には女が三人付いていたが成木だけは冷静だった。女たちは三人で成木を舐め回していた。
「組長さ~ん、早く私たちも抱いて~」
「ああ、順番にな」
成木は薬漬けになることの恐ろしさをよく知っていた。
成木は自制心の強い男だった。常に周囲への警戒を怠らない。
人間ドックには三ヶ月に1回は受ける。食事も塩分や糖分、脂肪分も抑えていた。
権力の座に就くと人は臆病になり、死への恐怖が増すのである。
藤堂はその大広間から約300m離れた森の頂から狙撃のタイミングをじっと窺っていた。
腹這いになり、近くの草を千切って落とし、風を確認した。南南西の風、風速3m/s、気温12℃、曇り。狙撃にはベストコンディションであった。
マーズが改良してくれた高性能カラシニコフを組み立て、藤堂は気配を消して森と同化した。
成木の背中には龍の入れ墨が彫られている。藤堂は成木が立ち上がるその一瞬を狙っていた。
双眼鏡で時折内部を覗いていた。
トリガーに指を掛け、その時を待った。
そして遂に成木が立ち上がった。
息を止めて藤堂は引き金を引いた。
弾丸は2発発射された。1発目は成木の頭をスイカのように砕き、もう1発の弾丸は心臓部分の上半身を貫通した。即死だった。
「キャー!」
「親父!」
「誰じゃ! あそこや! あっちの森からやられたんや!」
旅館の周りに配置されていた組員たちが一斉に藤堂の元へと向かった。
警察に通報するわけにはいかない。組員たちによる検問がすぐに行なわれた。
そこを1台の野菜を積んだ軽トラックが通り掛かった。藤堂である。藤堂は長靴に農作業着を着て村人に扮していた。
「ここに来る途中、怪しい奴を見なかったか?」
「なんだおめえら? スジもんか?」
「しばくぞこの野郎!」
「百姓になんかかまうな!」
「ヘイ。早く行け!」
藤堂はまんまと脱出に成功した。
その日、藤堂は食事の後、久しぶりに小百合を抱いた。
ジミーと呼ばれている藤堂ではあったが、セックスは別人のように激しくテクニシャンであった。
そのことは親友の里美にも小百合は内緒にしていた。
いつも小百合はエクスタシーに昇天させられていた。
「イク、イきそう!」
藤堂はそのままピストン運動を続けた。
「あ、あ、あん、ダメ・・・」
小百合は果てた。
「ズルーい、また私だけ先にイかされちゃった」
藤堂の体には傭兵時代の時に負った傷が無数に刻まれていた。
藤堂の体に触れ、甘える小百合。
「好きよ、義彦のこの傷だらけの鋼のような体。見ただけで濡れて来ちゃう」
小百合は藤堂との結婚を望んでいたがもちろん藤堂にその気はない。
小百合を好きになればなるほど、小百合を巻き添えにすることは出来ないと思った。
「里美、今度結婚するんだって」
「そうか。お祝いしなくちゃな?」
「そうだね?」
小百合は次の言葉が言えなかった。
「私も結婚したい」
の一言が言えなかった。それを言えばこの恋が終わるような気がしていたからだ。
「もうすぐ誕生日だよな? 何が欲しい?」
「安い指輪が欲しい。あなたとお揃いの」
「俺に指輪は似合わないよ。その代わり、小百合の誕生石の指輪をプレゼントしよう」
「私、4月だからダイヤモンドだよ」
「ダイヤじゃイヤなのか?」
「そうじゃなくて、高いから」
「ダイヤにも色々あるからな。今度の休みに一緒に見に行こう」
「ありがとう。凄くうれしい!」
小百合は藤堂に抱きついて甘えた。
だが藤堂にはそれが少し重く感じた。
(そろそろ別れ時か?)
藤堂は冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出して飲み始めた。
「ヨダレを垂らしてションベンまで漏らしやがって、祇園の一流芸者が台無しじゃねえか? このシャブ中おんな!」
「お願いだから早く頂戴よお! あはははは」
覚醒剤を打って、みんな狂ったように快感に溺れていた。だが成木だけはシャブを打たない。
「シャブをやる奴はバカしかいねえんだよ。何でシャブって言うか知ってるか?
死んで火葬にすると骨も残らねえ。だから「骨までしゃぶり尽くす」という意味でシャブなんだよ! クソ野郎どもが!」
背中に墨を入れた組幹部たちは女に激しく腰を打ち付けていた。
組長の成木には女が三人付いていたが成木だけは冷静だった。女たちは三人で成木を舐め回していた。
「組長さ~ん、早く私たちも抱いて~」
「ああ、順番にな」
成木は薬漬けになることの恐ろしさをよく知っていた。
成木は自制心の強い男だった。常に周囲への警戒を怠らない。
人間ドックには三ヶ月に1回は受ける。食事も塩分や糖分、脂肪分も抑えていた。
権力の座に就くと人は臆病になり、死への恐怖が増すのである。
藤堂はその大広間から約300m離れた森の頂から狙撃のタイミングをじっと窺っていた。
腹這いになり、近くの草を千切って落とし、風を確認した。南南西の風、風速3m/s、気温12℃、曇り。狙撃にはベストコンディションであった。
マーズが改良してくれた高性能カラシニコフを組み立て、藤堂は気配を消して森と同化した。
成木の背中には龍の入れ墨が彫られている。藤堂は成木が立ち上がるその一瞬を狙っていた。
双眼鏡で時折内部を覗いていた。
トリガーに指を掛け、その時を待った。
そして遂に成木が立ち上がった。
息を止めて藤堂は引き金を引いた。
弾丸は2発発射された。1発目は成木の頭をスイカのように砕き、もう1発の弾丸は心臓部分の上半身を貫通した。即死だった。
「キャー!」
「親父!」
「誰じゃ! あそこや! あっちの森からやられたんや!」
旅館の周りに配置されていた組員たちが一斉に藤堂の元へと向かった。
警察に通報するわけにはいかない。組員たちによる検問がすぐに行なわれた。
そこを1台の野菜を積んだ軽トラックが通り掛かった。藤堂である。藤堂は長靴に農作業着を着て村人に扮していた。
「ここに来る途中、怪しい奴を見なかったか?」
「なんだおめえら? スジもんか?」
「しばくぞこの野郎!」
「百姓になんかかまうな!」
「ヘイ。早く行け!」
藤堂はまんまと脱出に成功した。
その日、藤堂は食事の後、久しぶりに小百合を抱いた。
ジミーと呼ばれている藤堂ではあったが、セックスは別人のように激しくテクニシャンであった。
そのことは親友の里美にも小百合は内緒にしていた。
いつも小百合はエクスタシーに昇天させられていた。
「イク、イきそう!」
藤堂はそのままピストン運動を続けた。
「あ、あ、あん、ダメ・・・」
小百合は果てた。
「ズルーい、また私だけ先にイかされちゃった」
藤堂の体には傭兵時代の時に負った傷が無数に刻まれていた。
藤堂の体に触れ、甘える小百合。
「好きよ、義彦のこの傷だらけの鋼のような体。見ただけで濡れて来ちゃう」
小百合は藤堂との結婚を望んでいたがもちろん藤堂にその気はない。
小百合を好きになればなるほど、小百合を巻き添えにすることは出来ないと思った。
「里美、今度結婚するんだって」
「そうか。お祝いしなくちゃな?」
「そうだね?」
小百合は次の言葉が言えなかった。
「私も結婚したい」
の一言が言えなかった。それを言えばこの恋が終わるような気がしていたからだ。
「もうすぐ誕生日だよな? 何が欲しい?」
「安い指輪が欲しい。あなたとお揃いの」
「俺に指輪は似合わないよ。その代わり、小百合の誕生石の指輪をプレゼントしよう」
「私、4月だからダイヤモンドだよ」
「ダイヤじゃイヤなのか?」
「そうじゃなくて、高いから」
「ダイヤにも色々あるからな。今度の休みに一緒に見に行こう」
「ありがとう。凄くうれしい!」
小百合は藤堂に抱きついて甘えた。
だが藤堂にはそれが少し重く感じた。
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