【完結】★赤い月(作品251008)

菊池昭仁

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第8話

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 本当のターゲットは才蔵ではなく俺だった。
 少しホッとした自分がいた。少なくとも親友と戦うことはなくなったからだ。
 では誰が俺の命を狙って依頼主は誰なのか? 内調? それはないだろう。
 となると海外の組織か?
 いずれにせよ小百合が狙われる可能性がある。人質として利用されることも十分ありうる。
 ひとまず小百合を安全な場所に匿う必要がある。俺は小百合に連絡を取ることにした。




 夜、小百合が家にいるとチャイムが鳴った。
 
 「誰かしらこんな時間に」

 小百合のマンションはオートロックになっており、まずインターホンで相手を確認した。
 モニターには宅配便の配達員の姿が映っていた。

 「はい」
 「藤堂義彦様よりお届け物です」
 「義彦から? 誕生日のプレゼントかしら。ちょっとお待ち下さい」

 小百合は喜んでロックを解除した。
 3階のフロアに男が上がって来て玄関ドアのチャイムを押した。
 
 「はーい、今開けまーす」

 小百合がドアを開けた途端、スタンガンで小百合は気絶させられた。
 男は手際よく小百合をコンテナに詰めるとそのままマンションを出て行った。



 いつもなら3コールで電話に出る小百合が電話に出ない。嫌な予感がした。
 すると俺のスマホに見知らぬ電話番号の着信があった。

 「・・・」
 「シリウスか?」
 「お前は誰だ?」
 「女を預かっている」
 「女は関係ない、すぐに解放しろ」
 「そうはいかない。お前ほどのエージェントに仕事を依頼するには手持ちのカードは多いに越したことはないからな。心配するな、仕事が終われば返してやるよ。
 明日の22時、日の出埠頭に来い」
 
 そして電話は切れた。




 翌日、俺は標準武装で日の出桟橋へと向かった。
 
 港に着くとスマホが鳴った。

 「桟橋に止まっているメルセデスまで来い」
 
 俺が黒のメルセデスS600 に近づいて行くとドアが開き、運転手を残したスーツ姿の男たちがクルマから下りてきた。

 「関本・・・」

 関本和也。彼は以前一緒の部隊にいた傭兵仲間だったが詳しい過去は知らない。

 「久しぶりだなシリウス、いや藤堂義彦。ニカラグア以来か?」
 「お前だったのか関本。小百合を返せ」
 「安心しろ、女は無事だ、危害は加えていない。仕事が終わればすぐに解放してやるよ」
 「俺に何をしろというんだ」
 「お前に取って来て欲しい物があるんだ」
 「俺はコソドロではない。ただの殺し屋だ」
 「確かにお前は殺し屋だがただの殺し屋ではない。精密な「兵器」だ。
 先日、ロシアから日本のとあるカルト教団にヤバい物が売り飛ばされた。中性子爆弾だ」

 中性子爆弾とは爆発によって放射された中性子線によって生物細胞の組織が破壊されるが、建物などには影響がないという放射性核爆弾のことである。

 「それを取って来て欲しい」
 「中性子爆弾で何をするつもりだ? テロか?」
 「『赤い月』を知っているな?」
 「国際テロ組織の『赤い月』のことか?」
 「テロ組織? 『Red Moon』は政治結社だ。安っぽい殺人愛好家ではない。俺は今、そこに雇われている」
 「どうやら断るわけには行かないようだな?」 
 
 関本は俺にアタッシュケースを渡した。
 
 「そこに資料が入っている。ナルハヤで頼むぞ、女のためにもな?」

 
 するとベンツは関本たちを残したまま急発進をしてゲートを出て行き、関本たちは予め用意されていたクルーザーに乗り込むと港を出て行こうとした。

 俺は咄嗟に係留索を掴んで海に飛び込んだ。
 すぐに係留索は切断されたが俺の目的は達成された。クルーザーにGPS装置をセット出来たからだ。

 俺はすぐにクルマで船の後を追った。
 

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