【完結】★赤い月(作品251008)

菊池昭仁

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第9話

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 関本は用心深い男だった。関本の乗ったクルーザーにヘリが近づいて来ると、関本はそのままヘリに乗り移ってどこかへ消えて行ってしまった。すでに藤堂の仕掛けたGPSには気づいていたようだった。

 男たちは先回りして逗子マリーナで待機していたさっきのメルセデスで逃げてしまった後だった。
 silver wayのインフォメーション・センターでも追尾は不可能だということであった。



 
 藤堂はまず、中性子爆弾のありかを突き止めることにした。
 そのカルト教団は最近急激に信者を増やしている『統一連合』であることが判明した。
 おそらく爆弾はその教団の本部にある筈だった。万が一、当局のガサが入った時の保険として身近にあると考えるのが妥当だった。
 小百合が拉致されている今、時間的余裕はない。教団に信者として潜入している悠長な時間はない。となると小百合を見つけ出して救出するか、後はセキュリティを躱して強奪するしかない。
 藤堂は強奪することを選択した。



 調査の結果、やはり本部の地下10メートルに10帖ほどのコンクリートの遮蔽空間があるのがわかった。
 どうやら中性子爆弾はそこに隠されているようだった。
 ひとつ救いなのは物が物だけに俺が侵入して警備を倒しても警察に通報されることはないということだった。故にセキュリティー装置の解除も不要だ。俺は手榴弾を使うことにした。
 おそらく警備には銃火器の使い手がいるはずだった。俺はサブマシンガンと予備にワルサーを2丁用意し、サバイバルナイフとマシューティを用意した。
 もちろん送電ケーブルには時限装置を仕掛け、電力は遮断する。
 ゆえに夜間、暗視ゴーグルで侵入することにした。




 送電が遮断され防犯装置が作動しなくなると、俺はガラス瓶の破片を埋め込んだ塀を乗り越え、敷地内に潜入した。
 すぐに数頭のドーベルマンが襲って来たがマシューティで撃退した。
 警備隊や信者たちが押し寄せて来た。俺は催涙弾を発射して彼らの妨害を阻止した。非常電源によりけたたましいサイレンが鳴り響く。
 俺は正面玄関からではなく、敢えてガラス窓を破って内部に侵入した。玄関には侵入者を撃退する仕掛けがあるかもしれなかったからだ。

 俺は真っ直ぐ予め調べておいた教祖の部屋の扉をぶち破った。
 教祖は丁度信者の女とお楽しみの最中だった。

 「お前は誰だね?」
 
 教祖は冷静だった。俺は教祖の喉元にサバイバルナイフを当てた。

 「物はどこだ?」
 
 すると教祖は呪文を唱え始めた。

 「オンサラバ オンキリヤ・・・」
 
 体が硬直し、手からナイフが滑り落ちた。催眠術であった。
 俺はなんとかサバイバルナイフを拾い上げるとそれを太ももに突き刺した。激痛により俺は教祖の催眠術から戻ることが出来た。
 無駄だと悟った俺は教祖を射殺した。女は怯えて失禁していた。


 地下への入口はこの部屋にあるはずだった。すぐに追手に囲まれた。
 俺は彼らに手榴弾をお見舞いした。生き残った連中には容赦なく機銃掃射を浴びせた。

 入口は隠し扉になっていることが予想された。おそらくこのキャビネットの裏か書棚の裏にあるはずだった。
 開閉ボタンはこの絵画か仏像、教祖の執務机にあるはずだ。
 ひとつだけ絵画が少しズレていた。絵画をずらすとそこに隠しボタンがあった。
 本棚が開き地下への階段が現れた。私はそこへ手榴弾を投げ入れ、爆発させた。
 レーザースイッチは切断されたようだった。


 地下に下りて重いコンクリート扉を開けると中性子爆弾があった。意外にコンパクトであった。これならひとりで持ち運びが可能な大きさであり、重量だった。

 大体この手の物にはこれを移動させようとすると何らかの仕掛けがある筈だった。見てみるとやはりそのトランクの下にはセンサーボタンがあるのが見えた。
 俺は近くにあったコンクリートブロックを素早くそこに乗せた。


 
 建物の周りはすでに多くの信者たちで囲まれ、経を唱えられた。
 俺は数人の信者を射殺した。すると信者たちはそこにひれ伏して怯えた。

 自分のクルマは用意してはいなかった。誰も信用出来ないし、奪われる可能性も高いからだ。
 俺は1台だけ教団のクルマを残して後はすべてタイヤを打ち抜き追って来られないようにパンクさせた。

 うまく中性子爆弾の奪還に成功した。



 
 クルマを走らせ、途中に予め用意しておいた電気工事の軽ワゴンに爆弾を積み替え乗り換えた。
 すると関本から電話が掛かって来た。

 「そのまま直進しろ、そこで女と交換だ」


 
 1kmくらい走ると4トンカーゴが止まっていた。
 中から小百合が男たちに連れられて出て来た。

 「義彦っ!」

 解放された小百合が走って来た。すると関本は背後から小百合を撃った。頭と心臓に一発ずつ。即死だった。
 
 「小百合!」
 「藤堂、ご苦労さん。これはお前への復讐でもあったんだよ。お前のせいで俺はこの通り、右足を拷問で義足にされた。お前もここで女と一緒に死んでもらう」

 四方から一斉射撃を受けたがすぐにクルマの影に隠れた。

 「撃つな! 中性子爆弾に当たったらどうする!」


 俺はトラックに手榴弾を投げつけ、そのまま関本たちを振り切ってそのまま逃走した。
 そして俺は復讐を誓った。
 


 
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