6 / 9
6日目
しおりを挟む
冥界では優作の審議が続いていた。
「死神、お前はどう思う?」
「はい、もう少し学ばせてもいいかと存じます」
「冥界王はどうじゃな?」
「私も死神と同意見でございます」
「では決を採る。根室優作の延命を認める者は挙手をせよ」
賛成5の挙手があった。反対は2であった。
「5対2。よって根室優作を延命三年に処す」
午前零時、俺はビル・エバンスを聴きながらモカ・マタリを飲んでいた。
死神は会議があるからと出掛けて行ったままだった。
不思議と死を恐れない穏やかな自分がいた。
「人はいつかは死ぬんだ。それが早いか遅いかの違いだけじゃないか」
いい音楽と一杯の珈琲。このありがたさが身に沁みた。
突然目の前に死神が現れた。
「たった今、審議が終わった。審議の結果を伝える」
「私は死ぬんですね?」
「執行猶予3年になった。この間に罪を犯さなければお前はあと3年生きられることになった」
「本当ですか!」
「本当だ。おめでとう、良かったな? 優作。 これであの女とお前は結婚出来るわけだ」
「ううううう ありがとう、ござい、ます」
俺は嬉しさと戸惑いに泣いた。
「運のいい男だ。お前にはもう少し学ばせてやりたいらしい」
「でも三年の延命なら結婚はやはり無理です。死ぬとわかっているのに結婚は出来ません」
「結婚すればいいじゃないか? その後もまた延命の可能性がないわけでもない。それにお前たちはそれを望んでいたではないか?
それに人はいつ死ぬかなんて誰にもわからない事だからな?」
「三年生きられるだけでもう十分です」
「お前はそれでいいかもしれんがあの女はどうなる? あんなにお前を愛している女だ。しあわせにしてやれ。
例えそれが三年間だとしてもだ」
「やさしいんですね?」
「私に心はない。あるのは職務を遂行することだけだ」
「わかりました。寧々と結婚します」
「そうか? それじゃあしばらくはお別れだ。くれぐれも罪を犯すなよ」
「はい、ありがとうございました」
そして死神は消えた。
日曜日の午後、丘の上にあるダグラス杉の下で寧々にプロポーズをした。
「寧々、俺と結婚してくれ」
「はい、喜んで!」
微笑む寧々。俺たちは抱き合いキスをした。
「一生お前を大切にするよ」
「私もあなたを守ってあげる」
俺は婚約指輪を寧々の左手薬指にはめてやった。
「ぴったり」
指輪を見て喜ぶ寧々。
「良かった、直さなくても大丈夫か?」
「ありがとう、優作」
クルマのトランクから寧々の年齢と同じ数の赤い薔薇の花束を出して寧々に渡した。
「来年の春、満開の桜の中で結婚式を挙げよう」
「うん、来年の春にね」
俺たちはすぐに結婚式の準備に取り掛かった。
「死神、お前はどう思う?」
「はい、もう少し学ばせてもいいかと存じます」
「冥界王はどうじゃな?」
「私も死神と同意見でございます」
「では決を採る。根室優作の延命を認める者は挙手をせよ」
賛成5の挙手があった。反対は2であった。
「5対2。よって根室優作を延命三年に処す」
午前零時、俺はビル・エバンスを聴きながらモカ・マタリを飲んでいた。
死神は会議があるからと出掛けて行ったままだった。
不思議と死を恐れない穏やかな自分がいた。
「人はいつかは死ぬんだ。それが早いか遅いかの違いだけじゃないか」
いい音楽と一杯の珈琲。このありがたさが身に沁みた。
突然目の前に死神が現れた。
「たった今、審議が終わった。審議の結果を伝える」
「私は死ぬんですね?」
「執行猶予3年になった。この間に罪を犯さなければお前はあと3年生きられることになった」
「本当ですか!」
「本当だ。おめでとう、良かったな? 優作。 これであの女とお前は結婚出来るわけだ」
「ううううう ありがとう、ござい、ます」
俺は嬉しさと戸惑いに泣いた。
「運のいい男だ。お前にはもう少し学ばせてやりたいらしい」
「でも三年の延命なら結婚はやはり無理です。死ぬとわかっているのに結婚は出来ません」
「結婚すればいいじゃないか? その後もまた延命の可能性がないわけでもない。それにお前たちはそれを望んでいたではないか?
それに人はいつ死ぬかなんて誰にもわからない事だからな?」
「三年生きられるだけでもう十分です」
「お前はそれでいいかもしれんがあの女はどうなる? あんなにお前を愛している女だ。しあわせにしてやれ。
例えそれが三年間だとしてもだ」
「やさしいんですね?」
「私に心はない。あるのは職務を遂行することだけだ」
「わかりました。寧々と結婚します」
「そうか? それじゃあしばらくはお別れだ。くれぐれも罪を犯すなよ」
「はい、ありがとうございました」
そして死神は消えた。
日曜日の午後、丘の上にあるダグラス杉の下で寧々にプロポーズをした。
「寧々、俺と結婚してくれ」
「はい、喜んで!」
微笑む寧々。俺たちは抱き合いキスをした。
「一生お前を大切にするよ」
「私もあなたを守ってあげる」
俺は婚約指輪を寧々の左手薬指にはめてやった。
「ぴったり」
指輪を見て喜ぶ寧々。
「良かった、直さなくても大丈夫か?」
「ありがとう、優作」
クルマのトランクから寧々の年齢と同じ数の赤い薔薇の花束を出して寧々に渡した。
「来年の春、満開の桜の中で結婚式を挙げよう」
「うん、来年の春にね」
俺たちはすぐに結婚式の準備に取り掛かった。
10
あなたにおすすめの小説
『大人の恋の歩き方』
設楽理沙
現代文学
初回連載2018年3月1日~2018年6月29日
―――――――
予定外に家に帰ると同棲している相手が見知らぬ女性(おんな)と
合体しているところを見てしまい~の、web上で"Help Meィィ~"と
号泣する主人公。そんな彼女を混乱の中から助け出してくれたのは
☆---誰ぁれ?----★ そして 主人公を翻弄したCoolな同棲相手の
予想外に波乱万丈なその後は? *☆*――*☆*――*☆*――*☆*
☆.。.:*Have Fun!.。.:*☆
先生の秘密はワインレッド
伊咲 汐恩
恋愛
大学4年生のみのりは高校の同窓会に参加した。目的は、想いを寄せていた担任の久保田先生に会う為。当時はフラれてしまったが、恋心は未だにあの時のまま。だが、ふとしたきっかけで先生の想いを知ってしまい…。
教師と生徒のドラマチックラブストーリー。
執筆開始 2025/5/28
完結 2025/5/30
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―
コハラ
ライト文芸
余命半年の夫と記憶喪失の妻のラブストーリー!
愛妻の推しと同じ病にかかった夫は余命半年を告げられる。妻を悲しませたくなく病気を打ち明けられなかったが、病気のことが妻にバレ、妻は家を飛び出す。そして妻は駅の階段から転落し、病院で目覚めると、夫のことを全て忘れていた。妻に悲しい思いをさせたくない夫は妻との離婚を決意し、妻が入院している間に、自分の痕跡を消し出て行くのだった。一ヶ月後、千葉県の海辺の町で生活を始めた夫は妻と遭遇する。なぜか妻はカフェ店員になっていた。はたして二人の運命は?
――――――――
※第8回ほっこりじんわり大賞奨励賞ありがとうございました!
巡りくる季節の途中で
佐々森りろ
ライト文芸
小さい頃に出会ったあの子は、あたしのヒーローだった。
『きみ、つよいね。リクは、よわい子だから』
春の満開の桜も、夏の蝉時雨の暑さも、秋の木漏れ日の落ち葉も、冬の積雪の冷たさも、全部ぜんぶ通り過ぎても、もう、あの子に会えることは、なかった。
巡りくる季節の途中、また会えたと思ったのに、あたしのことは覚えていなかった。
相変わらず人気者のヒーローは、やっぱり時々、寂しそうな目をしていた。
本当は──
『ぼくは、つよくなんてない』
小さい頃から体が弱くて、心まで弱くなってしまった梨紅と、いつもみんなの中心にいる憧れの存在、一葉。
十年後に再び再会した二人は、お互いの弱さと強さを認め合っていく……
表紙:自作
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。
源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。
長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。
そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。
明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。
〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる