【完結】ピアニストは笑わない(作品250925)

菊池昭仁

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第10話

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 オペラ座にやって来た。オペラ座はパリの音楽芸術の象徴である。
 ガストン・ルルーの小説、『オペラ座の怪人』は映画やドラマ、ミュージカルにもなった。
 舞台はここガルニエ宮にある巨大な奈落。

 オペラ座に棲む怪人(ファントム)とクリスティーヌの悲恋。

 オペラ座の歌姫、クリスティーヌはオペラ座のマネージャーの退職の日の夜に行なわれたガラ・コンサートで歌い、喝采を浴びる。
 この頃、オペラ座にはファントムが棲みついているという噂があり、ファントムは月2万フランと5番のボックス席を常にファントムのために空けておくようにと支配人と契約をしていた。
 そして手紙や行動により自分の存在をマネージャーに知らせていたという。ファントムは優れた音楽的才能と、トリックや投げ縄の達人でもあった。
 クリスティーヌに恋をするファントムは、オペラ『ファウスト』のプリマドンナにクリスティーヌではなく、カルロッタを起用したことに激昂する。

 カルロッタは上演中に声が出せなくなり、巨大シャンデリアが客席に落下してしまう事故が起きる。
 ファントムはクリスティーヌをさらい、オペラ座の奈落にクリスティーヌを幽閉してしまう。
 そこで仮面を着けたファントムは自分のことをエリックと名乗る。
 クリスティーヌが好きなエリックは彼女に求愛するが受け入れてはもらえない。
 そしてクリスティーヌに仮面を剥ぎ取られ、醜い自分の壊死した顔を見られてしまう。

 そして2週間後、クリスティーヌは地上へ戻して欲しいとエリックに懇願し、エリックは自分の指輪を彼女にはめて自分を決して裏切らないと約束させ、地下から解放する。
 
 クリスティーヌは自分の楽屋の壁の向こうから聞こえる「天使の声」に歌の指導を受け、歌手としての名声を得てゆく。
 だがそれに嫉妬した彼女の幼馴染の子爵、ラウルはその天使の正体を暴こうとする。
  
 オペラ座の屋根の上でクリスティーヌは自分がエリックに幽閉されていたことをラウルに伝えると、ラウルはそのエリックがオペラ座の地下水路に棲み着いたファントムであることを突き止める。

 「僕が君をファントムから守るよ」

 そうクリスティーヌに宣言するが、彼女はエリックのために歌うまではここを出ないという。
 それを盗み聞きしていたエリックは翌日の『ファウスト』のコンサートでクリスティーヌを再び誘拐し、地下に引き籠もって結婚を迫る。
 もし結婚を拒否すれば地下に仕掛けた爆弾でオペラ座を破壊すると脅されるがクリスティーヌはそれを拒否する。
 ラウルは元ペルシャの国家警察長官タロガとクリスティーヌの救出のために地下へと向かう。
 だがそれにエリックは罠を仕掛けていた。
 エリックはラウルとタロガを拷問部屋へと誘導し、合せ鏡の迷路へと誘き寄せ、内部を高熱にしてしまう。
 クリスティーヌは結婚を承諾する代わりにふたりを助けて欲しいとエリックに懇願する。
 
 クリスティーヌは何故か次第にエリックに母性を感じ、エリックの腐った顔で自分にキスをすることを許してしまう。
 監禁していたラウルもタロガも解放し、そしてエリックはクリスティーヌを諦め自分の屋敷から解放する。
 そして別れ際、クリスティーヌは自らエリックにキスをする。
 泣き崩れるエリック。
 エリックはクリスティーヌに自分が死んだら遺体に彼女に贈った指輪をはめて自分を埋葬して欲しいと頼む。
 
 しばらくするとエリックは死んでしまう。
 タロガに頼んで新聞広告に自らの訃報を掲載して。


 
 私はそんな物語の舞台になったこのオペラ座でショパンを弾きたいと思った。
 俺がエリックでクリスティーヌが陽子。

   
     前奏曲第4番 ホ短調 作品28-4

 



 来月の陽子のベルリンのスケジュールに合わせるようにと、俺は旅に出た。
 TGVに乗ってパリからフランクフルトまでは約4時間。
 ベルギー、オランダを経由してドイツへ向かった。

 フランクフルトからベルリンまでは約100km。
 俺はドイツをふらつくことにした。 
 ヨーロッパに冬が駆け足で迫っていた。


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