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第10話 神崎の決断
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私はある決断をした。
私は井岡会長にそれを報告するために、会長室のドアをノックした。
「神崎です。お話しがあります」
「入れ」
井岡は私をギロリと一瞥すると、
「嫌な話なら聞きたくねえぞ」
「ボルツを嫁にすることにしました。
そういうことですので、ボルツは今日限りで『エデンの園』を辞めさせます」
井岡は深々と椅子に座り直すと笑って言った。
「はっはっはっ、おめえの連れて来た女だ、好きにしろ」
「ありがとうございます」
「でも俺は賛成しねえけどなあ。
神崎、おめえのカラダのことはボルツに話したのか?」
「話していません」
「ボルツは旦那をガンで亡くしたんだったよな?
そして今度はお前。
その悲しみにボルツが耐えられると俺には思えねえ」
「耐えさせます。
私の余命が短いからこそ、一緒になろうと思いました」
「なぜそう思う?」
「惚れたからです」
井岡は大きな声で笑った。
「あーはっはっはっ おめえ、本気なんだな?
俺とお前は似ている。いや、寧ろお前の方が実務には優れているかもしれねえ。
だがな神崎、俺にあってお前にはないものがある。
それが「非情」だ。
俺はどんなに可愛がっている自分の子分でも、俺の為に「死ね」と言える男だ。
お前にそれが言えるか?
無理だわな? 所詮、甘ちゃんのおめえには。
そのお前の中途半端な優しさが、逆に相手を傷つけてしまう。それを忘れるな。
「俺のために死ね」と言われた方が喜ぶ女もいる。
俺はボルツはそんな女だとは思うがな?」
すると井岡は隣の部屋に行き、戻ってくると私の前に100万円の札束を投げた。
「結婚祝だ,取っておけ」
「ありがとうございます」
「神崎、いよいよ死ぬわけにはいかなくなったな?」
井岡は私を見て満足そうに微笑んだ。
まるで父親のように。
ボルツが派遣先から帰って来た。
「ボルツ、これからちょっと『カリブ』に寄って飲んで帰るか?」
「あら、うれしい! いいんですか?」
「後はコイツらに頼んでバイバイだ。いいよな? 香織、後は頼んだぞ」
「ハイハイ、どうぞどうぞ、ごゆっくり。
ボルツさん、部長からちゃんとお金貰いなさいよ」
「私が払わなくっちゃいけませんよ」
香織とボルツは笑った。
「キャプテン、シャンパンはありますか?」
「あまりいい物はありませんが、ブリュット・ナチュレでもよろしいですか?」
「それをお願いします。グラスは3つで」
「あら部長、今日は何かおめでたいことでもあったんですか?」
「それはこれからのお前の返事次第だ」
「んっ? それはどういうことですか?」
「友理子、お前は今日限りでクビだ」
「えっ、そんなの困ります! 私、何か部長の気に障るようなこと、しましたか?」
「お前は仕事を辞めて、俺の女房になれ。
どうだ? ダメか?」
「えっ・・・」
「結婚しよう、友理子」
友理子の目から大粒の涙が幾つもカウンターに零れた。
「泣くほどイヤか?」
友理子は両手で顔を覆い、声をあげて泣いた。
「うれしい、幸せです、私・・・」
私は友理子を抱き締めた。
「今までご苦労さん」
私たちの前に苺がざく切りにされたシャンパングラスが置かれ、キャプテンはそこへシャンパンを注いだ。
「神崎さん、友理子さん、今日は私の奢りです。それではよろしいですか? 神崎さんと友理子さんのこれからの幸せな航海を祝して、乾杯!」
「キャプテン、ありがとうございます」
「今日は貸し切りです、夜が明けるまで飲み明かしましょう」
キャプテンは店の看板の灯りを消した。
ささやかな祝宴が始まった。
私は井岡会長にそれを報告するために、会長室のドアをノックした。
「神崎です。お話しがあります」
「入れ」
井岡は私をギロリと一瞥すると、
「嫌な話なら聞きたくねえぞ」
「ボルツを嫁にすることにしました。
そういうことですので、ボルツは今日限りで『エデンの園』を辞めさせます」
井岡は深々と椅子に座り直すと笑って言った。
「はっはっはっ、おめえの連れて来た女だ、好きにしろ」
「ありがとうございます」
「でも俺は賛成しねえけどなあ。
神崎、おめえのカラダのことはボルツに話したのか?」
「話していません」
「ボルツは旦那をガンで亡くしたんだったよな?
そして今度はお前。
その悲しみにボルツが耐えられると俺には思えねえ」
「耐えさせます。
私の余命が短いからこそ、一緒になろうと思いました」
「なぜそう思う?」
「惚れたからです」
井岡は大きな声で笑った。
「あーはっはっはっ おめえ、本気なんだな?
俺とお前は似ている。いや、寧ろお前の方が実務には優れているかもしれねえ。
だがな神崎、俺にあってお前にはないものがある。
それが「非情」だ。
俺はどんなに可愛がっている自分の子分でも、俺の為に「死ね」と言える男だ。
お前にそれが言えるか?
無理だわな? 所詮、甘ちゃんのおめえには。
そのお前の中途半端な優しさが、逆に相手を傷つけてしまう。それを忘れるな。
「俺のために死ね」と言われた方が喜ぶ女もいる。
俺はボルツはそんな女だとは思うがな?」
すると井岡は隣の部屋に行き、戻ってくると私の前に100万円の札束を投げた。
「結婚祝だ,取っておけ」
「ありがとうございます」
「神崎、いよいよ死ぬわけにはいかなくなったな?」
井岡は私を見て満足そうに微笑んだ。
まるで父親のように。
ボルツが派遣先から帰って来た。
「ボルツ、これからちょっと『カリブ』に寄って飲んで帰るか?」
「あら、うれしい! いいんですか?」
「後はコイツらに頼んでバイバイだ。いいよな? 香織、後は頼んだぞ」
「ハイハイ、どうぞどうぞ、ごゆっくり。
ボルツさん、部長からちゃんとお金貰いなさいよ」
「私が払わなくっちゃいけませんよ」
香織とボルツは笑った。
「キャプテン、シャンパンはありますか?」
「あまりいい物はありませんが、ブリュット・ナチュレでもよろしいですか?」
「それをお願いします。グラスは3つで」
「あら部長、今日は何かおめでたいことでもあったんですか?」
「それはこれからのお前の返事次第だ」
「んっ? それはどういうことですか?」
「友理子、お前は今日限りでクビだ」
「えっ、そんなの困ります! 私、何か部長の気に障るようなこと、しましたか?」
「お前は仕事を辞めて、俺の女房になれ。
どうだ? ダメか?」
「えっ・・・」
「結婚しよう、友理子」
友理子の目から大粒の涙が幾つもカウンターに零れた。
「泣くほどイヤか?」
友理子は両手で顔を覆い、声をあげて泣いた。
「うれしい、幸せです、私・・・」
私は友理子を抱き締めた。
「今までご苦労さん」
私たちの前に苺がざく切りにされたシャンパングラスが置かれ、キャプテンはそこへシャンパンを注いだ。
「神崎さん、友理子さん、今日は私の奢りです。それではよろしいですか? 神崎さんと友理子さんのこれからの幸せな航海を祝して、乾杯!」
「キャプテン、ありがとうございます」
「今日は貸し切りです、夜が明けるまで飲み明かしましょう」
キャプテンは店の看板の灯りを消した。
ささやかな祝宴が始まった。
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