【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

文字の大きさ
7 / 355
新しい出会い

7:そろそろ出発?

しおりを挟む








マイクの教会の裏には、
たぶん、『聖樹』が植えてある。

たぶん、なのは
私がその『聖樹』がある場所に
近づいたことが無いから
本物かどうかわからないのだ。


ただ、マイクが『聖樹』の種を
裏庭に植えたというような
話をさらりと私に伝えてくれていたのだ。


本当ならこの教会に来てすぐに
見に行っても良かったのだけど。


私の中にある【器】には
<愛>があまり溜まっていなかったし、
無理に引き出したら、
また、倒れてしまう可能性もある。


知らない人たちばかりの中で
あまり心配をかけてはいけないと思い
私は自分の中に<愛>が溜まるのを
ゆっくり待った。


マイクは何も言わなかった。

私が金聖騎士団の皆と
離れてしまったことで
不安になっている気持ちを
知っているからかもしれないし、

無理に願ってもうまくいかないことを
『大聖樹』を見て理解しているからかもしれない。


なんにせよ、急かされずに、
自分の気持ちを
落ち着かせる時間を
貰えたことは、嬉しかった。


マイクやディランとの日常や
村の人たちと、のんびり過ごす日々は
ゆっくりだけど、私の中に
<愛>をもたらしてくれた。


たぶん、身体を重ねたりした方が
【器】に<愛>は溜まりやすいのだろうけど。

そうじゃなくてもいいって、
私はもうわかっている。


金聖騎士団の皆とは、
本当に……本当に濃厚な時間だった。

今だから思うけど、
あの時期、私は常に
誰かに抱かれていた気がする。


事件があって、
誰かが傷を負って。

そのたびに抱かれる…いや
そんなことが無くても
抱きつぶされていた。


激しく愛されることに慣れ、
麻痺していたけれど。


常に誰かに
愛されて、抱かれるって
すごいことなんじゃないだろうか。

いや、元の世界の感覚でいえば、
めちゃくちゃ恐ろしい話だ。

そう思うと、今は平和だ。


ディランは私を幼い子どもだと
思っているので、遊んでくれたり、
かまってくれたりするけれど。

それもじつは…嬉しい。


幸せだな、って思う。


この世界に来て、沢山の
愛を貰って、いろんな幸せを
味わうことができている。

これは…女神ちゃんに感謝だ。


この村は貧しいけれど、
畑もあるし、近くに川もあった。

森に行けば薪も拾えるし、
狩りもできる。

ディランは村で働き手として
重宝されていたが、
村に住んでいる老人たちも
病気のような人はいなかったし、
どの人も元気そうだった。

ディランがいるから
狩りの手伝いや、
畑の手伝いを頼んでいるが、
それまでは自分たちでやっていたのだ。

私たちがいなくなっても
大丈夫だろう。


私がここにきて、
かなりの日が経った。

私も皆と会えない寂しさにも慣れ、
随分と落ち着いてきた。

気候もそろそろ温かくなってきたし、
旅に出ることも考えた方が良いかもしれない。

今までは寒いと旅は辛い、という
ディランの話もあって
この村にお世話になっていたけれど、

私の【器】も満たされてきたし、
本気で『聖樹』を見に行き、
次の場所に行かないと、
と、私は思うようになっていた。


そんな私は、今、
ぬいぐるみ…の名前を
クマちゃんと命名した。

最初からくまちゃんって呼んでだけど。


とにかく私はクマちゃんを抱っこして
朝ご飯の支度をするマイクと
ディランを椅子に座って見ていた。


クマちゃんは、私の寂しさを
埋めてくれる大事なアイテムになっている。

「ほんと、ユウはそのぬいぐるみが好きだな」
ってディランが私の前に
ミルクの入ったカップを置いた。

「いいでしょ、可愛いんだから」

口をとがらせて言い返すと、
「本当に、可愛らしい」とマイクが
微笑みながら私の前にパンを置いてくれる。


可愛い、はクマちゃんだよね?


私を見つめながら言われると、
勘違いしてしまうぞ。


「ほら、早く座れ!」

ディランが忌々しそうに
マイクの肩を押して椅子に座らせた。


ほら、勘違いされた。
ディランはマイクが幼児趣味で
私を見ていると思っているらしい。

3人でパンとミルクを食べる。
この村ではあまり新鮮な食料は
手に入らないから、いつも食べるのは
パンと、ミルクと、畑の野菜。

あと、たまに狩りで獲れるお肉だ。

今は寒いのであまり狩りをしても
収穫はないらしいけど、
温かくなったら、もう少し
お肉を食べれるようになるらしい。

そんな理由で、いつも朝は
質素になる。

ミルクは、村に3頭だけいる
乳牛から分けてもらっている。

子どもはミルクが必要だと、
飼い主のおじいさんが
分けてくれるようになったのだ。

朝食を食べ終わり、
私は、よし、っと覚悟を決めて
マイクを見た。

「この村にある『聖樹』。
見てみたいんだけど……いい?」

「え?
ほんとにあるのか?
この村に?!」

ってディランが大声を出したけど
今は、無視だ。


マイクは驚いた顔をして私を見た。


「あれだろ?
街で噂になってる『聖樹』だろ?

この村に突然、生まれたってやつ。
本当にあったのか?

でも村中見たけど、どこにも
樹なんてなかったぞ?」

ディランがマイクに詰め寄るように言う。

噂?

街で噂になってるの?

っていうか、もしかして
ディランってそれを見るために
この村に来たとか…?

え?
じつは、物凄くミーハーなの?


私が冷めた目で見ていたせいか、
ディランは、私の視線に気が付くと、
いやいや、と手を振った。


「何かしようとか思ってるわけじゃないぞ?
ただ『聖樹』が生まれた、って噂を聞いてさ。

『聖樹』なんてそんな簡単に
生まれるわけないだろう?

なのにそんな噂が出るってことは
何かあるんじゃないかと思って…な」


好奇心でこの村に来たけど
何にもなかったし。

ま、ユウを拾えたから
来てよかったけどな。

なんてディランは笑った。

私も拾ってもらえたから良かったけどね。


「ユウさまは『聖樹』を見て
どうなさるおつもりですか?」

軽い口調のディランを無視して、
マイクは私を見つめる。


「どうするかは…わかんない。
見てから決めようと思う」


私はまた、ぎゅっとクマちゃんを抱いた。


「そうですか」

マイクは何か言いたそうにしたが、
結局何も言わず、
では、あとでご案内しますね、と
寂しそうに笑った。


どうしたんだろう?

気になる…けど。


ディランがいるのに
詳しいことは聞けないよね?


私は食器を洗って、
朝の礼拝を終えたらご案内します、って
言ってくれたマイクにお礼をって
部屋に戻った。

と言っても、
本当はマイクの部屋なんだけど。


そこで私はディランが
買ってくれたカバンに、クマちゃんと
ナイフ、着替えを詰め込んだ。

全部ディランが買ってくれたものだ。

いつか、返せたら良いのだけど。


「家出の準備か?」

「ひゃ!」


急に声を掛けられて、
私は変な声を出してしまった。

「ディラン、びっくりした」

振り返ると、扉の前に
ディランが立ってこちらを見ている。

なんでわかったんだろう。

そう思ってディランを見ると
さっき、様子がおかしかった、と
言いながら私のそばまで来た。

「本気か?
子どもが一人で旅なんて
できると思ってんのか?」

咎めるように言われ、
「子どもじゃないし」
って子どものような返事をしてしまった。

いかん。
子ども扱いに慣れてしまって、
子どもに戻ってしまっている。

そんな私の言葉を
ディランは笑って受け止めた。

嫌味な笑いではなく、
優しい…余裕のある大人の微笑だ。

「小さい時はなんだって
一人でできる気になることもある。

だが、大人に頼ることも大事だ」

ディランはしゃがんで、
私と目線を合わせてくれる。

「そして今、お前が頼れる大人は
俺と…あの神父だ。

言ってみろ。

できることは、やってやる」

「……できないことは?」

「できないから、諦めてくれ」

潔く言うディランに、
吹き出してしまった。

あははは、って笑って、

「じゃあ、きっとディランには
できないことだから、いいよ」

って返事をした。

「俺ができないってことは
あの神父もできないってことだぞ?」

「そうだね。
でもいいの。私が一人で
しないとダメなことだから」

笑って言ったのに、
ディランは納得できないような顔をした。

そこへ、ノックの音がして
マイクが私を呼びに来た。

「お待たせしました、ユウさま」

どうぞ、って言われて、
私はマイクの後を付いていく。

その後ろをディランもついてきた。

『聖樹』は村の秘密じゃないのかな?
ディランも一緒でいいのかな?

そんなことを思ったけれど、
マイクは何も言わなかった。



教会の裏口を出ると、
日当たりのよい庭…といえば
聞こえはいいけれど、
何もない空き地がある。

そこに雑草と言う名の草花が生えていて、
その一角に…村の人たちが集まっていた。

……集まっていた?

ん?

どういうこと?




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

処理中です...