【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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新しい世界

124:胃が痛い

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 びしょ濡れになった私は
慌てて傍に来てくれたマイクに抱き上げられた。

レオは甘えるような仕草で私を見たけど、
私が大丈夫、と頭を撫でると
安心したように『聖樹』の上にある
天井の穴から飛び去って行った。

しかし、寒い。

『大聖樹』の前で力を使った時も
水の膜に覆われたけれど、
その時はこんなに寒くはなかった、と思う。

マイクの後ろからディランが走ってきて、
その後ろを、ケインとエルヴィンが付いてきた。

「大丈夫か? ユウ」

「うん。ちょっと寒いけど」

ケインに笑顔を作って見せると
「俺、湯に入れるように指示してくる」
と、エルヴィンは走って行ってくれた。

おかげですぐに湯に浸かれることになり、
私はマイクに服を脱がされ、
そのまま、ドボン、と浴槽に浸かった。

あー、あったまるー。

その間に、ケインが着替えを準備してくれて
エルヴィンは走ってヴァレリアンたちに
報告に行ってくれた。

マイクは温かいお茶の準備をしてくれるようで
私のそばにはディランがいる。

ディランに話を聞いていると、
すぐ帰るね、なんて言った私は
3日も水の中に浸かっていたらしい。

『聖樹』の水だったので
誰も手出しはできないし、
私がなかなか目覚めないので
かなり心配を掛けてしまったようだった。

いやぁ、こんなことばかりで申し訳ない。

おかげで私はぬくもった後は
ディランにタオルで体を拭かれ
抱っこされる。

浴室を出たらすぐに私が寝ていた客室で
そこでマイクに服を着せてもらい、
あたたかいお茶を飲ませてもらった。

そこへ、ばたばたと走る音がして、
ノックもそこそこに
ヴァレリアン、カーティス、スタンリーが
部屋に入ってくる。

後ろからバーナードとケイン、エルヴィンが
姿を現した。

「良かった、目覚めたか」

ヴァレリアンがソファーに座っている私を
抱きしめた。

その後、カーティスが私を抱き上げて
ぎゅーっとしたと思うと、
横からスタンリーが私の身体を持ち上げ、
そのまま私を膝に乗せる形で
ソファーに座る。

「ユウ、寒くはないか?
あたたかい飲み物を飲んでいたのか。
食欲があるなら、何か準備させよう」

スタンリーが顔を覗き込むように言う。

いつもは真面目で、
厳しい顔のスタンリーが
こんなに甘い言葉をみんなの前で言うなんて。

よほど心配してくれたのだと思う。

「大丈夫、ありがとう」

「おい、甘えるのは俺にだろう、ユウ」

ヴァレリアンが隣に座って来た。

「違うよね?
ユウは私に甘えたいんだよね?」
と、カーティスが逆隣に座ろうとする。

心配を掛けたのはわかるけど、
マイクがディランがいるのに、
これはちょっと…と思って、
私はバーナードを見た。

こんなホゴシャーズを止めることができるのは
最年長のバーナードだけだ。

私の視線を受けたバーナードは
仕方がない、というように笑った。

「はいはい、団長たちも落ち着いて。
ユウは目覚めたばかりだし、
まだ状況の説明もできていないでしょう?」

バーナードの声に、3人の動きが止まる。

「俺はともかく、団長たちは
この二人のことをユウからは
紹介してもらっていませんよね」

バーナードはディランとマイクを見た。

確かに、この二人のことを
紹介する暇はなかったな、うん。

私はスタンリーに言って
膝から下してもらう。

そしてマイクとディランの前に立った。

「あのね、みんな。
マイクとディラン。
ずっと私の傍にいて、私を守ってくれたの。
ここまでこれたのは
2人のおかげなんだよ」

と、言ったのだけど。

空気は物凄く…悪くなった。

え?
私、笑顔で伝えたよね?

なんでそんなに殺気…いや、
不機嫌な顔で、不穏な目で見るかな。

「まぁ、ゆっくり話を聞こう。
俺は金聖騎士団団長をしている
ヴァレリアン・ロペス・フューチャーだ」

「私が副団長のカーティス・クラーク・フューチャー。
可愛いユウの一番の理解者だからね」

と、カーティスが笑顔なのに冷たい目で言う。

隣でそんなカーティスに
スタンリーがため息をついた。

「スタンリー・グリフィン・ ライトだ。
参謀をしている」

「俺は…今更だな、盾役のバーナード・ペレスだ」

「俺はエルヴィン ・クロフォード。
斥候役、かな。足が早いのが自慢なんだ」

「ケイン・リードだ。不本意だが、
エルヴィンの相棒をしている」

ケインがそう言うと、エルヴィンが
なんで不本意なんだよー、なんてわめく。

いつものじゃれ合いだ。

この二人を見ると、
金聖騎士団に
感じてしまう。

「俺はディランだ。
まだ…それ以上は名乗れない」

ディランがひっかかるような言い方をした。

ヴァレリアンも眉をひそめたが
それ以上は追及しなかった。

マイクは…何も言わない。

「お前は…大聖樹の宮で見た神官だな」

マイクは深々と頭を下げる。

「覚えていただいており、光栄です」

「俺やカーティスの身分を知り、
遠慮してるってことか?」

「発言をお赦しいただけるでしょうか」

マイクの声に、いいだろう、とヴァレリアンが言う。

王弟の息子と第三王子とどっちが偉いのかはわからないけど
この場で一番偉いのはヴァレリアンになっているようだ。

「私はだたの神官ですが、
この命も、心も、すべて愛し子である
ユウさまに捧げております。

今後、どのようなことが起きようが、
何を命じられようが、私はユウさまのお傍を
離れることなく、ユウさまに生涯を
捧げる所存でございます」

あーって思った。
今ここでそんなことを言わなくてもいいじゃん、て
思ったけれど。

避けて通れないので、
最初に伝えてくれたのは良かった…のか?

空気が物凄く重くなった。
けれど、やっぱり空気を読まないディランが
それをぶち破ってくれる。

「なら、俺もだな。
俺もユウに惚れてるし、
命を懸けて護るって決めてる。

ついでに、あんたたちが
どれだけ権力があって、偉いのかは
わかんないけど、俺には関係ないから」

「どういう意味だ?」

カーティスがディランを咎める視線で見る。

「だって俺。
この国の人間じゃないからな」

その言葉に、金聖騎士団の皆は
そろって息を飲んだ。

そうだ。
ディランは他国に人間なんだ。

この国にとっては、
初めての異国の人間…。

どうする?
どう説明する?

あー、もう、胃が痛いー。










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