【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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獣人の国

201:ディランんち

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 井戸の中は当たり前だけど暗かった。
けれど、ディランは大丈夫だと言って
私の手を取る。

暗闇で歩くのは、
道を繋げた時に経験したから
行けるといえば行けるけど
やっぱりちょっと怖い。

そう思っていたら、
マイクが魔法で手元を照らしてくれた。

「ありがとう」

「いいえ。本来であれば
ユウさまを抱き上げてお運びしたいのですが
何があるかわかりませんので、
お許しください」

「ううん、ありがとう」

何かあった場合……つまり、
何か不慮の事故が起こった場合、
私を助けたり庇ったりするために
両手を開けておきたいと
いうことなんだろうと思う。

マイクを犠牲になんかしたくないけど
守らなくてもいい、なんて言うと
マイクがまた不安になると思って
私は素直にお礼を言う。

もし私が守らなくてもいい、なんて言うと
マイクはきっと、自分のことは必要ないとか
悪い方向に考えてしまいそうだから。

井戸の中は普通の、と言えばいいのだろうか。
レンガ造りになっていて、
井戸の横に、抜け穴があった。

抜け穴はレンガ造りだったので
土砂が崩れ落ちてくる心配はなかったけれど
しばらく歩いて行くと、
レンガの壁は無くなり、
自然にできた地下通路のような
感じになった。

洞窟、とでも言えばいいのだろうか。

もともと、地下水とかで出来た空洞を
利用して作ったのかもしれない。

井戸も地下水をくみ上げて作っていたのだろうしね。

そんなことを考えながら
どれぐらいあるいただろう。

地下水で濡れた岩の中を
すべらないように気を付けて歩いて行ると
途中で迷路のように
分かれ道が出て来た。

けれどディランは迷わずに
「こっちだ」という。

道を進んで行くと、何度か
同じような分岐点が出て来た。

別の方向に行くと
罠でも仕掛けられているのか
違う場所に出るのかはわからない。

けれど、迷うことなく進む姿を見て
少なくともディランはこの地下通路を
何度も使用していることはわかった。

「よし、着いた」

私がかなり疲れを感じていて、
休みたい、と思い始めたあたりで
ディランが足を止めた。

「上るぞ」

と言われ、また縄はしごかと思ったけれど。

ディランが壁に隠してあった小さな
ボタンのようなものを押した途端、
狭いけれど、小さな階段が出て来た。

「おぉ!隠し階段っ」

まさしく冒険モノだ。

とちょっとだけテンションが上がってしまった。


階段は狭いので、
さすがにディランと手を繋いだまま
登ることはできそうにない。

私はマイクに背中を支えてもらいながら
ディランの後を追い、
階段を上った。

階段の先は蓋のような扉があって
ディランがそれを開けて先にでる。

蓋が開いた瞬間、あまりのまぶしさに
私は目を閉じてしまった。

けれど、そんな私を
ディランはぐい、っと抱き上げた。

すぐ後ろからマイクが出てくる気配がする。

私はすぐに光が目に入らないように
足もとに視線を向けてから
そっと目を開けた。

……土が、目に入る。

ゆっくりと顔を上げると、
庭だろうか。

庭と言うよりは、庭園のような
広く豪華な、そして綺麗な花が
調えられて咲いている場所に出て来た。

そしてこの場所は、
その庭園の庭師が使う道具などが
置いてある倉庫のような場所だった。

ディランは出て来た蓋を閉めて
上から土をかぶせて出入口が
わからないようにする。

「ここは?」

と聞くと、
「言っただろ、俺んちだって」

「この庭園が?」

とてもじゃないけど、
個人で所有している庭には見えない。

「庭を家だと勘違いしているのでは?」

私のすぐ後に言ったマイクの言葉が
何気に酷い。

「あのなぁ、おまえら……」

とディランが声を出した時、
不意にマイクが私を背にかばった。

なに?
と思ったら、いきなり騎士……だと思う。

剣を持った人たちに囲まれた。

「誰だ!
どうやってここまで入って来た?!」

たぶん、一番偉いであろう騎士さんが
物凄く怖い顔で聞いてきた。

がっしりとした体つきで、
30代ぐらいだと思うけれど、
あまりの迫力に心臓が止まるかと思った。

ディランに抱っこされていなければ
震えていただろう。

私は大人の人の怒鳴り声が怖いし、
威圧も怖い。

それが男の人だったら
余計に怖い。

ぎゅっとディランにしがみついたら、
ディランは大丈夫だと
私を抱きしめ返してくれた。

「俺の客人だ、控えろ」

ディランが偉そうに言う。

うん?
偉そうに?

なんで?

マイクも驚いたように
ディランを振り返った。

騎士さんたちも驚いた顔をして、
ディランを見る。

そして一斉に跪いた。

え?
なんで?

「ディラン、
もしかして、偉い人だったの?」

咄嗟に聞いてしまった。

「いや、俺は偉くないけど
身内に偉い人はいるな」

気まずそうにディランが答える。

「とにかく、客を連れて来た。
すぐに部屋を用意するように
伝えてくれ」

ディランは私を抱きなおし、
騎士さんたちに言う。

騎士さんたちは敬礼をして
ディランから離れると、
さっきの怖い顔の騎士さんが
あちこちに指示を出して、
一気にいなくなった。

「貴様、何者だ?」

マイクが警戒するように言う。

「そんな目をするなよ。
俺はユウを傷つけない。
そうだろ?」

その言葉に、私もマイクも力を抜いた。

ディランが誰であれ、
私を傷つけるようなことはしない。

それだけは、信じられる。
きっとマイクも同じなのだろう。

「よし、じゃあ、こっちだ」

ディランは私を抱っこしたまま歩き出す。

「入口はこっちにあるんだ」

マイクは険しい顔をしたままだけど
ディランの後に続いた。

なんだかまた、ヤヤコシイことに
巻き込まれているような気がする。

私は嫌な予感を感じながら
そっと息を吐いた。








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