【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

文字の大きさ
254 / 355
獣人の国

253:女神の提案

しおりを挟む



 私は散々愚痴ったあと、
異世界に行ってからの話もした。

この時には、だいぶ冷静になっていて、
目の前のお茶を飲む余裕もあった。

私は喉を潤しながら、
金聖騎士団の皆と出会った時の話から
順番に話をする。

女神ちゃんのミスを言いつけるみたいで
躊躇したけれど、女神は全部話すように
強く言ったので私は口を開いた。

女神ちゃんは諦めたような顔をしている。

まずは男性しかいない世界で、
『幼女で聖女』の設定が残っていることを伝えた。。

おかげで聖女の試練というトラップが
あちこちで発動したし、
現段階でも残っているかもしれないことも
あわせて伝えた。

だってまだ残ってたら
危険だし、女神ちゃんは
どんなトラップをいくつ作って、
いくつ回収したのかも覚えてないんだもの。

これは素直に「助けて!」って言って
良い案件だと思うのよね。

次は見切り発車で『獣人の国』が生まれて
対応に困っていることだ。

『幼女で聖女』設定で国を創ったのに、
途中で獣人設定をがぶちこまれたので
ディランの国は大混乱だ。

人口多寡で、一応私が『聖樹』を
増やすことで解決しそうだけれど、
それは根本的な解決にはならないと思う。

それに今、あの世界にある
二つの国を繋ぐとしても
地図が無いので道を繋ぐことができないし、
獣人の国の周囲にあると言う
闇の魔素を消さないと道が作れないなら
その魔素を生み出している元を
取り除かないとダメだと思う。

そんなことを私は次々に言葉にした。

途中辛らつな言葉になったけど
許して欲しい。

そして最後に私の『力』のことを伝えた。

ことで『力』を
生み出していたけれど、
このままずっと誰かに抱かれる人生なのかとか。

私の体は死んだ勇くんのものだから
成長できるのだろうかとか。

ずっと愛されたかったから、
愛されるのは嬉しいけれど、
何故か満足できないことや、

「愛されたい」から
「愛してみたい」という気持ちになったけど、
私は多くの人に愛されて、
多くの人に愛を返す存在だから
誰かの特別になれても、
私の特別は、作ることができないことに
気が付いたことも。

そんなの最初からわかってたはずなのに、
ようやく私は『多くの人に愛される』という
意味に気が付いたのだ。

私には
持つことができないということに。

私は息を吐く。
大丈夫、ちゃんと冷静に言えてる。

感情的にならないように、
私は一旦、お茶を飲み、
それから女神ちゃんの視線を感じて、
口を開いた。

言わずにいようと思ったけれど、
最後まで、伝えよう。

私が勇くんの結婚式のホログラムを見て、
何故悲しくなったのかを。

私が最愛の人を作ってしまうと、
女神ちゃんの世界を救えない。

だから私は恋人や伴侶と言う存在を
諦めたのに、勇くんの結婚式の姿を見て。

私の体が、顔が、ずっと夢見ていた
ウエディングドレスを着て、
愛されて、幸せそうに笑っている姿を見て、
私は……嫉妬したのだ。

羨ましくて。
物凄く羨ましくて。

……もう元には戻れないのに、
女神ちゃんの世界に行ったことを
私は、一瞬だけど後悔した。

そこまで話すと、
女神ちゃんの顔は真っ青で
涙を浮かべて私を見ている。

ーーー言ってしまった。

女神ちゃんを傷つけた。

でも一人で抱えるには辛くて、
言わずにはいられなかった。

勇くんの幸せを壊す気なんてない。
後悔はしたけれど、
勇くんが幸せそうで
嬉しいと言う気持ちもある。

それに女神ちゃんとの出会いも、
異世界での出会いも、
嬉しいことだし、
愛されて満たされる感覚を
知ることができて喜ばしいことでもあった。

だから、異世界で生きることは
決して嫌ではない。

でも心の中に矛盾した思いが渦巻いて
苦しくて仕方がない。

そんな私を、女神は立ちあがり、
抱きしめてくれた。

『辛かったわね』

腕が背中に回され、
優しく撫でられる。

『もう大丈夫。私がいるわ』

その言葉に、ぽろり、と涙が落ちる。

それは今までの怒りや悲しみの
涙ではなくて。

ずっと言ってもらいたかった
『大丈夫、守ってあげる』の言葉への
喜びから流れたものだった。

女神の腕の中はあたたかかった。
ディランにもマイクにも。
金聖騎士団の皆にも抱きしめられたけど
こんなに安心して、
穏やかな気持ちになったのは
初めてだった。

お母さんってこんな感じなのかな、って
ふと思った。

そう思うと、私の頬には
女神のふくよかな胸のふくらみが当たっていて
女性に抱きしめられたのは
これが初めてだと気が付いた。

少し気恥ずかしくなったけれど、
甘えたい気持ちもあって、
私は素直に女神に子どものようにあやされた。

どれぐらい時間が経っただろう。

私の気分が落ち着いてきたころ、
女神は私から体を離して、
お茶を飲むように勧めてきた。

私は素直にお茶を飲み、
女神に言われるまま、手付かずだった
チョコレートケーキを食べる。

その隣で、女神ちゃんが
ものすごーく女神に叱られていた。

女神ちゃんは、しょんぼりしていて
もういいよ、と言いたくなるぐらい
辛そうな顔をしている。

助けてあげたいけれど、
優しかった筈の女神の顔は、物凄く怖くて
凄い迫力もあって、
とてもじゃないけど口を挟むなど
できそうにない。

だから私はじっと、女神の怒りが
収まるのを待った。

チョコレートケーキを食べ終えて、
お茶のお代わりをして、
ようやく女神が私を見た。

『ユウちゃんだったわね?』

……ちゃん?

「はい」

『状況は理解したわ。
この子の世界は、私がテコ入れします。
このまま私とこの子のを助けてくれるかしら?』

「もちろんです」

拒否するつもりは最初からない。

『そう、よかったわ。
この子はどうしても一度決めたことを
記録することが苦手で、
自分が決めたことを忘れて、
すぐに世界の理を変えちゃうのよね』

それって神としては致命傷だと思います。

言えないけど、心の中で言っておく。

でも女神だから、私の心の声だって
聞こえていたのかもしれない。

だって綺麗な顔が一瞬、歪んで
苦しそうな顔になったもの。

『ユウちゃん、あなたにこれを』

女神は1冊のノートを渡してくれた。

『これから私はこの子の世界の理を
ここに書き示していきます。

私が書いたことは、このノートに示されるので
あなたはそれを見て行動してくれればいいわ。

それにあなたが私に言いたいこと、
聞きたいことがあれば、このノートに
書いてくれればすぐに返事をしてあげる』

すごい。
女神との交換日記だ!

教会に行かないと女神ちゃんと話せないとか
いろんな制約がなくなって
もの凄く便利になった気がする。

『ただし、このノートの存在は
秘密にしておいてね。

あぁ、賢者にだけは見せてもいいわ。

それからノートに書く文字は日本語にしてね』

「日本語に?」

『えぇ、それならこの子の世界の人間には
読めない筈だから』

確かに。
異世界に行った当初は
言葉も文字も通じなくて困ったもんね。

『この子が与えたあなたの力や
祝福のことも、ちゃんと把握して
整理したいのだけど、
この子はあなたに何を与えたかも
覚えていないみたいだから、
時間がかかると思うの』

でしょうねー。
物凄くいい加減にもらったもんね。

『だからまずは、獣人の国の
問題解決と、隣国と道を繋げることを
最優先事項として動きましょう』

おぉ!
なんだか頼もしい。

今までとは違う
明るい未来が見えてきたような気がする。

『ユウちゃん。一緒に頑張りましょう」

「はい!」
私はいまだにしょんぼりしている女神ちゃんを
横目に、元気よく返事をした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...