305 / 355
愛があるれる世界
304:譲れないこと
しおりを挟む次に目を覚ますと
私は『大聖樹の宮』のベットで寝ていた。
ベットは天蓋が付いて、
ベット横にはサイドテーブルや
飾り棚などが壁になるように置いてあり、
一応は、目隠し?にはなっている。
とてつもなく広いワンルームにソファーや
ベットがあり、それらを棚などの家具で
仕切っているとでも言えばいいのだろうか。
私が起きたことはおそらくは
同じ部屋にいれば気が付くだろうけれど、
間に棚があるので視線が合うことはない。
ついでに言うと、
寝起きの顔を見られることもない。
とはいっても、
この部屋にいるのは金聖騎士団の皆しかいないので
私が起きた気配はすぐに伝わると思う。
案の定、すぐにカーティスがやってきて
「おはよう、ユウ」と声を掛けてくれた。
「おはよう、ごめんね。寝ちゃった」
「よっぽど疲れてたんだね」
カーティスが言いながら
私をベットから抱き上げる。
「一応、夕食はどうするのかと
声は掛けたんだけどね」
全く気が付かなかった。
「ユウちゃん! おはよう」
私が抱っこのままソファーの方へ移動すると
エルヴィンが大きな声で言う。
「おはよう、ごめんね。
昨日はせっかく食事を取りに行ってくれたのに」
「いいって。
それよりも、元気になったか?」
気さくに聞いてくるエルヴィンに
私は笑って頷く。
周囲を見ると、部屋にはカーティスと
エルヴィンだけだ。
エルヴィンがそんな私に気が付き、
ケインは私が目を覚ました時に飲めるように
新鮮な果汁を準備しに行っていること。
そしてヴァレリアンとスタンリーは
騎士たちとの会合に出ていると教えてくれた。
「ほんとは私が出ないとダメなんだけど
ユウのそばにいたくて
スタンリーに任せたんだ」
とカーティスが笑って言うので、
私はそれでいいのか?と思ってしまう。
「あれ、じゃあ、バーナードは?」
「ユウが会いたがると思って、
婚約者を呼びに行ってるよ」
カーティスの言葉に私は歓びを隠せない。
バーナードの婚約者。
ジュリさんはとっても素敵な人で
私のぬいぐるみのクマちゃんの製作者でもある。
逃亡生活(?)でも間接的だけどお世話になった。
会えるのは嬉しい。
そしてバーナードとの結婚式も
間もなくだということを知り、
私は二人の結婚式に参列できることがわかった。
嬉しい!
でもあまり長い間この国にいたら
パパ先生やディラン、マイクは
心配してしまうかも?
一度戻ってから、また来ようかな。
そんなことを考えていると、
カーティスが私の頬に触れた。
「ユウはこの国で、私のそばにいるのは嫌かい?」
とっても答え難い質問だ。
「最善とは、なんだろうね」
カーティスの言葉に私は首を傾げる。
「最善だよ。
私たちやユウ。そして……不本意だが
隣国にいるユウを愛する者たちのこと
すべてのことを考えて、
最善とは何なのか。
私はそれを考えているんだよ」
最善。
それは誰にとって最善なのだろう。
カーティスの言葉に私も考える。
全ての人が納得するような
最善というのは存在するのだろうか。
考えているうちに、ケインが
オレンジの果汁を持って来てくれた。
氷で冷やしてくれていたので、
グラスに入れたものを飲ませてもらう。
飲みながらも、カーティスが
蒸したタオルで私の顔を拭いてくれて、
エルヴィンが私の朝食を作ると言って
ケインと一緒にキッチンへと移動した。
カーティスと二人っきりになってから
私はカーティスに着替えさせてもらう。
シャツのボタンをはめながら
カーティスは私の頬や首筋に
唇を軽く押しあてる。
あまりにもさりげなく、
流れるような仕草なので
拒否するつもりはないけれど、
もし拒否するとしても
いつ否定すれば良いのかわからないぐらいだ。
私の着替えが終わると、
エルヴィンが朝食だと言ってサンドイッチを
出してくれて、それを食べていると
ヴァレリアンとスタンリーが戻ってくる。
皆と一緒にサンドイッチを食べていると
今度はバーナードがジュリさんと一緒にやってきた。
急ににぎやかになり、
私は懐かしさのあまり、はしゃいでしまう。
マイクやディランと会う前は
こうやって、ここで皆とずっと一緒に
楽しく過ごすつもりだった。
でも、運命は変わったんだ。
人間の意志や感情が絡み合い、
運命は作られる。
それは本当だと思う。
金聖騎士団の皆を巻き込みたくない私と、
子どもと国を大事に思う国王陛下と
王弟閣下の意志が、あの時
私と皆の運命を変えたのだ。
もう、元には戻らない。
楽しいし、ずっと皆と一緒にいれたら
嬉しいと思う。
嫌いになったわけでは無いし、
逆に、皆のことは大好きだ。
祝福を制御できるようになり、
なし崩しにカーティスたちに
抱かれることはもうないだろうけど、
でももし、また抱きたいと言われたら
拒否は……できないかもしれない。
でも、でも。
私の行動で誰かが傷付くのはダメだ。
私の力を利用する人がいるのであれば
それは拒絶しないといけない。
私がこの国にいることで
誰かが傷つけられるようなことは
絶対にあってはならないんだ。
それだけは、言える。
だから私はこの国を去ろうと思う。
それが最善かどうかはわからない。
でも、少なくとも、
マイクとその家族はそれで守ることはできる。
そのことは私にとって
とても重要なことであり、
そのことで金聖騎士団の皆と
離れ離れになっても仕方がないと
思えるほど大事なことだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!
ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。
らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。
なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる