【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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愛があるれる世界

314:自信

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 話し合いが終わってすぐに、
部屋の扉を叩く音がした。

すぐにマイクが立ち上がり
扉を開けると、よく顔を見かける
侍従さんが立っている。

どうやらディランを呼びに来たらしい。

ディランは行きたくなさそうだったけれど、
呼んでいるのがパパ先生だと知り、
仕方なくソファーから立ち上がった。

私はしぶしぶといった様子のディランに
声を掛けた。

「パパ先生に、マイクの家に
ディランの部屋も作ることを
伝えておいて。

あと、パパ先生の話は
隣国との交渉の話だと思うから、
ディランが必要だと思うことは
パパ先生に伝えてくれたらいいと思う」

「それって、
ユウを嫁にするって話を
してもいいってことか?」

「え?……それは、ちょっと……」

まだ早い、かな?

それもまだ話し合いの最中なわけで。

「貴様、どさくさまぎれに
妙なことを言うな」

マイクが私をかばってくれる。

「妙じゃないだろ、
さっきそんな話になったじゃないか。
あ。
そうか、プロポーズが先だな」

「そ、そんなのも
後でいいから、先にパパ先生の
ところに行って、ね、早く」

私はディランの背中を押す。

「わかった、じゃあ、
この話はあとでな」

ディランは仕方がないと
そんな顔をして、素早く私の頬に
唇を押し当てた。

「行ってくる」

私とマイクが何かを言う前に、
ディランは部屋を出た。

扉が閉まり、私とマイクは
何も言えないまま、立っていた。

「ユウさま。
消毒しますか?」

真顔で何を言うんだか。

「しなくていいよ」

私は笑って、
喋り過ぎてマイクに喉が渇いちゃった、と
呟いた。

「すぐにお茶をお淹れ致します」

マイクはそう言って私をソファーに座らせた。

「ごめんね、一人で勝手に動いて」

私はティーポットを持って来たマイクに
素直に謝った。

「でも、マイクに出された王命だけは
なんとかしたくって」

「とても……嬉しく思います。
ユウさまが私の為だけに動いてくださるなんて」

マイクはポットが乗ったトレーを
テーブルの上に置き、頭を下げた。

「とても……とても、嬉しいです」

いつもの丁寧な言葉や
恭しい仕草ではなく、
素直な心の声だと私は思った。

だからこそ、じわじわと
嬉しさが沸き起こる。

「うん。私もマイクが喜んでくれて
とっても嬉しい」

マイクが家族と切り離されていると感じて
私は誰かと生きていくのであれば、
マイクと一緒に生きていきたいと
思っていた。

でも、マイクは家族と訣別したとはいえ
家族の情が無くなったわけでもない。

ただ女神ちゃんへの信仰と、
私への想いがあったから、
そんな状態になっていただけなのだ。

ただ愛されたくて、
愛されることで満足していた私は
ずっとそのことに気が付かなかった。

でも、パパ先生と話をしていくうちに
私は自分の甘えや傲慢さにも気が付いた。

そして思ったのだ。

マイクの『自由』を私が奪ってはいけない、と。

マイクは私にすべてを捧げると言ってくれたけれど、
家族と会う機会すらも私はマイクから奪ってしまう。

それだけは避けたかった。

私が家族が欲しいと思っていたからこそ、
拘ってしまったのかもしれない。

先走って、一人で隣国まで行って。
先にマイクに相談すれば良かったと思いつつ
マイクだったら、私に「問題ない」としか
言わないこともわかっていた。

だから、私は一人で行ったのだ。

そういった私の気持ちも、
きっとマイクは理解している。

だから私の行動を受け入れ、
嬉しい、と言ってくれたのだ。

穏やかな空気が流れ、
マイクは思い出したように
ポットからティーカップにお茶を注ぐ。

「どうぞ、ユウさま」

「ありがと。マイクも隣に座って」

そう言うと、マイクは素直に私の隣に座る。

さっきよりは、距離がある。

ディランがいなくなって、
私とマイクの間は、拳1つ分ぐらいの
隙間が空いていた。

私はお茶を飲み、カップを置くタイミングで
体を少しずらした。

マイクの足に、私の太ももが触れる。

「ユウさま?」

マイクが身じろぎした。

「マイクとひっつきたくて」

マイクとの距離が
何故か寂しいと思っただけだったけれど。

私がそう言うと、
マイクは嬉しそうに笑った。

そしてすぐに笑顔を消し、
私の顔を見つめてくる。

「……ユウさまは、
私と婚姻することに
違和感はないのでしょうか」

「違和感?」

マイクの真剣な声に
私は首を傾げる。

「はい。
カーティス殿下はもちろん、
ヴァレリアン殿も王族です。
スタンリー殿も侯爵家。

あやつは……あんなのですが、
この国の王子……とても、
不本意ですが」

マイクは顔を歪めていう。

ディランの名前だけは言わずに
あやつ、という言い方をして
不本意だと言うマイクは、
ディランに心を許しているのだと思った。

いつも喧嘩しているような印象だけれど、
本当にディランのことを
王族だとして距離を置いているのであれば
そんな態度を取ったりはしないだろう。

マイクは王族と言う肩書のない、
ディランという存在を
認めているのだと、そう思った。

たぶん、旅の仲間として。

私がそんなことを考えている間も、
マイクはさらに言葉を続ける。

「私は、ただの神官です。
貴族であっても、王族が相手では
何もできないほどの、
小さき存在です」

話をするマイクの表情が苦しそうなのは
身分制度があるからだろうか。

私にはこの身分制度というのが
よくわからない。

そもそも、私が住んでいた世界では、
少なくとも私が住んでいた国では
身分と言う習慣がなかった。

だからこの世界に来た時に
最初に出会ったのが金聖騎士団の皆で、
その団長や副団長が王族だったから
あまり身分を気にせずに過ごすことができた。

だって、私は女神の愛し子だから
きっと、王様よりも偉い?
と思うし。

そして金聖騎士団の皆も、
王族であるヴァレリアンやカーティスに対して
上司として敬う仕草はしていたけれど
王族として接していたとは思えない。

新米ヒヨコのエルヴィンとケインでさえ
そうだったのだ。

そんな状況にいた私が
身分がどうとか、わかるはずがない。

でも、きっとマイクは違うんだ。

どうしよう。

まだ皆と結婚するとも決めていないのに。

マイクとも結婚しよう、なんて
話もしていないのに、
私は急に不安になった。

もしかしてマイクとはもう一緒にいられない?



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