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愛があるれる世界
351:一妻多夫のマイク
しおりを挟むパパ先生が二つの国を
【空間】を使って行き来するようになって
半年が過ぎた。
当初の忙しさが嘘のように
パパ先生とも落ち着いて話ができるようになった。
今では二つの国に国交を繋ぐための
機関や部署が設立されて
道を作ったり、両国の国交に
適応する法案を作ったりと、
パパ先生の手を離れて
様々なことが行われるようになった。
『大聖樹の宮』には私の部屋の隣に
パパ先生の部屋が出来て、
【空間】と繋がる食器棚は
パパ先生の部屋に移動している。
私はパパ先生と一緒の部屋で
寝起きしてもよかったのだけれど、
ヴァレリアンたちが嫌がったのだ。
構ってもらえないと拗ねていた私同様、
皆も私とイチャイチャできないと
不満に思っていたようで。
パパ先生がいると遠慮して
私に触れることができなかったんだって。
慣れてくるとパパ先生は
一人で【空間】を使って移動するようになり、
私は私で、のんびり気ままに過ごすようになった。
パパ先生の家の両隣には
マイクとディランの家を建てて、
もちろん、二つの家には私の部屋がある。
……大きな寝室も。
『大聖樹の宮』の部屋は相変わらずだけど
お泊りするときは、ヴァレリアンや
カーティス、スタンリーが入れ替わりで
私に会いに来てくれる。
今では、ヴァレリアンたちの国に行くと
すぐに結婚の話になるのだけれど。
私の中では今でも十分、
通い婚のようだと思っていた。
ヴァレリアンたちはヴァレリアンたちで。
ディランはディランで結婚式の話を
私にしてくるのだけれど、
正直、結婚式はどちらでもいいと思っている。
ただし、結婚式をするのであれば
パパ先生にこの世界での名前を付けて
この世界にパパ先生も
組み込まれてからにしたい。
そんな私の話を、マイクは
優しく聞いてくれる。
マイクも結婚式にはこだわりがないみたい。
「私はユウさまのおそばにいることが
できれば、それで幸せなのです」と
いつもそう言って微笑ってくれる。
そう、結局は。
ヴァレリアンたちは金聖騎士団として、
また国同士の取り決めなどを
実際に行う役目を担って動いているし、
ディランも獣人の国の代表として
デビアンさんと一緒に新しくできた
部署に所属して頑張っている。
この忙しさが終わらなければ
結婚式などまだまだ先だろう。
つまり暇なのは私と、賢者の弟子という
称号を持ったマイクだけなのだ。
まぁ、マイクはパパ先生の書類を作る
手伝いをしたりもしているけれど、
私は正直、暇だ。
元の世界ではひたすら働いていたので
こんなにのんびりした日々が続くと
どことなく不安になる。
この世界に来て、
様々な変化があったけれど、
一番の変化は私が【愛される】存在に
なったことだろう。
この世界を救うために
私はこの女神ちゃんの世界に来たけれど。
救われたのは、私の方だと思う。
最初は女神ちゃんの『祝福』があって、
皆に抱かれたり愛されたりすることに
全く抵抗がなかった。
でもその『祝福』に流されずに
コントロールできるようになってからも、
私は皆から愛されることを受け入れた。
誰か一人と愛し合うのではなく、
みんなと愛し合うことを選んだのだ。
こんな選択は、元の世界にいた私には
絶対にできなかった。
そう言った意味でも、
この世界に来て私は変わったと思う。
「ユウさま」
窓の外をぼんやりと見ていた私は
マイクに声を掛けられて振り返る。
「いかがされましたか?
ご気分でも……」
「ううん、大丈夫。
ここまで来るのに色々あったな、って思って」
ここは私が建てたマイクの家だ。
マイクの好みを聞いて、
私が想像して建てた家。
家具も内装も全部私好みになったけれど
マイクはにこにこして、
「ユウさまのお望みのままに」というので
勝手に決めさせてもらったのだ。
マイクは冷たい果実水を
私に差し出した。
「どうぞ、そろそろ気温も
上がってくる頃ですので」
「ありがとう」
昨夜はここに泊って
マイクと一緒に過ごした。
この家は居心地が良くて
私はついつい、居座ってしまう。
「マイクのそばは心地よいから
またディランがヤキモチ焼いて
乗り込んでくるかも」
私は笑って、近くのソファーに座る。
「私は……嬉しいですが」
と最近ではマイクも素直な気持ちを
私に伝えてくれるようになった。
これも嬉しい変化だ。
「マイク、一緒にいてくれてありがとね」
そう言うと、いきなりの言葉だったからか
マイクは驚いたような顔をして、
微笑った。
「私がそれを望んだのです」
いつも言うユウさまの望むままではなく
自分が望んだのだと、マイクは言った。
それが、嬉しい。
「ユウさま、もしこのまま
私を伴侶としていただけるのなら……
いいえ、そうでなくても。
ずっとおそばにおいてください」
マイクは私のそばに跪いて
私の手を取る。
私はその手を掴んで
倒れるように力を抜いて
マイクの胸にもたれた。
「うん。ごめんね。
皆で一緒に結婚することになったら
マイクの負担になるかもしれないのに」
身分とかそういう話になったら
マイクはきっと立場が弱くなる。
「でも、マイクにはそばにいて欲しいから」
手放せない。
「大丈夫です、ユウさま。
この国にいる限り、
私はカーティス殿下たちとの
関わり合いはありませんし」
マイクは私を抱きしめた。
「ユウさまと共にいることが
できるのなら、すべては些細なことです」
「うん」
ありがとう、と私はマイクの胸に
顔を摺り寄せた。
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