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第22話
しおりを挟む【勇者アサヒ視点】
エクスファックにクラスメートがやられ、僕は全力で逃げた。
他のパーティーも僕を追うように逃げだす。
死にたくない!死にたくない!死にたくない!
何だあいつは!
僕の必殺技を3つ使っても倒せなかった。
遠くまで逃げると4人固まって休む。
危なかった。
ヒメは死んだか?
死んだかもしれない。
だが、僕の命が何より大事だ。
今日はなにも良い事が無い。
ヒメに逃げられ、ハヤトの所に逃げ込んだ。
バトルモードで戦ってすぐにやられた。
大勢の前でだ!
その後王が消えて化け物が現れて僕の特別な最高の必殺技を全部使った。
でも倒せなかった。
ハヤトは僕の身代わりになって死んでいるだろう。
ヒメの身代わりに死んでほしい。
周りを見ると3人が僕を睨む。
「お前のせいでひどい目に会った」
「何人もやられた。どうすんだよ!」
「お前、間違ってばかりだな」
こいつら!自分で決めもせず責任だけ押し付けてくる!
こいつらは不良グループだ。
レアスキルを持っていたから一緒にいただけだ。
早く僕にふさわしいパーティーを見つけよう。
アサヒは失敗している事実に気づかない。
不良グループの人間性でこうなる事を予想できなかった。
自分なら操作できると自信満々で決めつけ失敗したのだ。
「あなたたち、こんな所にいたのね」
クラスの女たちだ。
最近はいつも集団で行動している。
「や、やあ、どうしたんだい?」
「どうしたんだい?じゃないわよ。貴方の指示で前に出た男子がやられたのよ。その後逃げ出したあなたたち不良グループは生き延びたわね」
「俺達はアサヒの指示に従って撤退しただけだ!」
「そうだ!アサヒのせいだ!」
一緒に逃げて来たみんなが責任を僕に押し付ける。
皆が僕をさげすむ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!僕は不良グループじゃない!」
「一緒じゃないの!」
おかしい!おかしいおかしい!
尊敬されるはずの僕がこいつらと同じグループにいる?
僕の指示のせいになっている?
僕はどう説得すればいい?
ハヤトのせいに出来ないか?
「はあ~。もういいわ。最期に、あなたが馬鹿にしていたハヤトがエクスファックを倒したわ」
「何、だって!」
「じゃあね」
「待つんだ!何かの間違いだ!そ、そうだ!僕が倒しかけていた!そうに違いない!」
「アサヒ、あんたよりハヤトの方が強いわよ。私達は今日それを知ったわ」
「なんで決めつける!そうか、僕が油断してスキルを使わずにたまたま負けたからか!」
「違うわ。ハヤトの能力値は全部100だそうよ。レベルは1でも、能力値アップのスキルを持っているようね」
そう言って女たちは去って行った。
相手のステータスを見るスキルが存在する。
誰かがハヤトの能力を見て、女グループ全員に広まっている!?
いや、闘技場にいた多くの者が知っている!?
僕はスキルを使えば余裕で勝つことが出来た!
僕よりハヤトが強い事になっている!?
僕が能力値を晒して負けた噛ませ犬になっている!?
まずい!まずいまずいまずい!
「俺達も帰ろうぜ」
「そうだな」
「アサヒ、お前はのせいだからな!」
パーティーのメンバーも僕を置いて去って行った。
考えろ!考えるんだ!
僕のレベルは30。
ハヤトのステータスが全部100。
ハヤトは何かしらの方法でスキルを上げる方法を手に入れている。
恐らく基本スキルの投てきも持っていた。
能力値アップのスキルを1LV取れば10ポイントの能力アップだ。
レベルアップ時の能力値上昇も10ポイント。
瞬時に答えを導く。
ハヤトの能力値はレベル60と同じ!
能力値は僕より上なのか!
落ち着け。
だが奴は闇魔導士だ。
ハヤトのジョブスキルは癖があり使い物にならない。
現に奴は魔法スキルを使わず、短剣をちまちま投げて僕に勝った気でいる!
ハヤトは僕のように強いジョブスキルを取得できない。
ハヤトの紋章装備も貧弱だ。
レベルを上げられないなら装備も限られる。
ハヤトの成長は頭打ちだ。
すべての能力値アップのスキルをセットすればスキル枠を6枠消費する。
残り4枠のスキルしかセットできずレベルも上げられないなら強くなることは出来ない。
アサヒはスキル統合の事を知らない。
ハヤトはスキル統合により、スキル枠を1枠消費だけで全能力値を100アップさせることが出来る。
!!そうか!
僕は情報戦に負けた。
強さで優位な僕はハンデを与えすぎて負けた。
アーツスキルの威力は通常攻撃の10倍、いや、僕のブレイブアーツはさらにそれを凌駕する。
相手の能力を知らなかったからだが、今はもう知った。
次は僕の圧倒的な勝利が決まっている。
ハヤトのレベルは1のままらしい。
スキルだけでは行き詰るのは目に見えている。
だがそれでも問題もある。
今この状況。
僕の指示でクラスメートが死に、僕が倒しかけたエクスファックをハヤトが倒し、ハヤトの手柄になっている。
そうか!魅力値だ!
僕の方が魅力は圧倒的に上。
だが、根暗のハヤトでも魅力を100に上げれば僕より魅力が高くなる!
魅力値の差!
魅力のあるように見えるハヤトがたまたま運よく、死にかけたエクスファックに止めを刺した。
するとどうだろう?
魅力の値が高いハヤトは凄い事をしたように映ってしまう。
印象は大事だ。
悪い顔をして良い事をしても善人には見られない。
何もせずニコニコして「大変だね」と言っている方が善人に見える。
魅力によるカリスマの強化は必要だ。
実際は僕の素晴らしすぎる必殺技が勝利の決め手になっているが、魅力の高いハヤトがたまたま倒して運よく凄い人間に見えている。
魅力値のせいでやった事が更によく見えている。
対して僕は運の無さと魅力の値を上げなかった事が重なってみんなにさげすんだ目で見られている!
魅力を上げよう。
レベルアップが必要だ。
ダンジョンの上に行く必要がある。
だが、上の階はトラップの魔法陣が多い。
やはり罠感知をステータスにセットする必要がある。
100万魔石あれば僕のスキルを入れ替え出来る。
100万魔石を貯めればすべてが解決する。
待っていろ!ハヤト!
次は倒す。
皆のいる前で無様な姿を晒してあげるよ。
勇者アサヒは執念深い。
そして強くなる為進むが、たまに間違えた判断をする。
魅力より行動を見直すべきだが、それをしない。
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