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第61話 四人でお祝い会 2
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「記念撮影をしよう! 」
トモがそう言ったのは外が暗くなってきた時だった。
熟年夫婦はもう帰宅する時間。
トモがいるとはいえ夜道を二人で帰るのはちょっと危険だ。
いやトモがいたら危険度は上昇するか?
トモを男性と判断できない人の方が多いかもしれないしな。
「撮るのは良いけど固定するものがないぞ? 」
「こんなこともあろうかと……」
トモはそう言いながらゴソゴソと自分の鞄を探る。
するとトモは自撮り棒を取り出した。
「……いつも持ち歩いているのか? 」
「もちろん。いつ、なんの記念日になるかわからないからね」
「よく先生に取り上げられなかったな」
「成績上位者の特権を舐めてもらったら困るな」
「見つかったことあるのかよ」
さも当然かのように言うトモに溜息をついた。
しかしトモが特権を使うとは珍しい。特別扱いは好きではないはずだ。
それほどまでに遠藤さんとの毎日を楽しく過ごしているのだろうと考えると、羨ましさよりも安堵がきた。
これからも二人仲良く過ごしてほしい。
「じゃぁこっちに来て」
トモが声をかけ俺達が席を立つ。
ソファーの前に集まると、トモが自撮り棒を渡してきた。
受け取り伸ばしているとトモが言う。
「レン君は合図をするのが苦手みたいだから僕が数えるね」
さっきやらかしたところなので反論できない。
ギロリと軽く睨むとトモがおどけた様子で過剰に反応する。
はぁと溜息をつき自撮り棒にトモのスマホをセット。
「じゃぁ行くね。三、二………………」
「一はまだか?! 」
「おっーとを忘れる所だった」
「忘れるはずがないだろうが」
「男は一だけ覚えておけばいいのさ」
「今さっき忘れてたって言ってたよな? 」
「そんなことも忘れたよ」
いつもに増してふざけたがるトモに片手でチョップ。
頭をさすりながら俺を見上げてきた。
「酷いなぁ」
「ならふざけずにやれ」
「え~。面白くない」
「お祝いで面白さを求めるな」
「お祝いだからこを面白くなくては」
「それはお祝い中に、だろ? 真面目にやる所は真面目にやれ。ほら」
「わかったよぉ」
トモは渋々と言った感じでコホンと軽く咳払いをする。
そして数を数えて、俺はパシャリとボタンを押した。
きちんと撮れているかまずは確認。
それを終えたらトモのスマホを自撮り棒から外してトモに渡す。
「じゃぁこれ全員に送るね。あ、僕重原さんの連絡先知らない」
「なら私が送りましょう」
「気が利くぅ! 」
「……今日は本当にテンションが高いですね。とも君は」
遠藤さんが珍しく笑みを浮かべながら自分のスマホを手に持った。
「あ、来た」
愛莉が写真を受け取ったようだ。遠藤さんは仕事が早い。
そんなことを考えていると俺のスマホもベルを鳴らす。
確認するとトモから写真が送られてきている。
「後はツーショットだね」
「「?! 」」
「一先ず僕達の写真を撮ってもらおう」
そう言いながらトモが再度スマホを渡してくる。
俺が撮るのは良いんだが……。
「おいトモ。まさかとは思うが俺と愛莉も撮るのか? 」
「あれれ~。勘違いしちゃったかな。僕と冴香ちゃんはもちろんだけど、僕とレン君を撮ってもらうんだよ? 」
「そ、そうか……」
「……あからさまにがっかりされると僕も傷つくんだけど。まぁその「がっかり」が答えだよ」
「どういうことだ? 」
俺が聞くとトモが顔を近づけて小声で話す。
「好意を隠しきれてないよ。レン君」
「! 」
「レン君にとっては初めての事で隠し方もわからないのかもしれないけどバレバレ」
「そ、そんなことは……」
「ないとは言い切れないよね」
こ、こいつ。
にやにやするトモに俺は顔を引き攣らせる。
待て。隠しきれていないということは――。
「まさかとは思うが愛莉もわかって……」
「どうかな。二人を見ている感じ重原さんも鈍感そうだし」
まぁ任せてよ、と言うトモにかなりの不安を感じながらも、トモが放った言葉のニュアンスがおかしい事に気が付いて首を傾げる。
「も」ってどういうことだ? それに「鈍感」?
それを考えているとトモが声をかけて来た。
顔を上げるとすでに位置を確保したトモと遠藤さんが目に映る。
トモは遠藤さんの肩に腕を回し遠藤さんはトモにもたれるように体を預けていた。
「頼んだよ」
なにも感じていないようにトモが言う。
スマホを構えようとすると愛莉がタタタと近寄ってくる。
「見ているこっちが恥ずかしくなるね」
「全くだ」
「コールはボクがしようか? 」
「……頼む」
愛莉のコールの元、俺はスマホをタップした。
あと何回か位置を変えたりして写真を撮っていく。
結果五枚撮った後、二人のいちゃラブタイムは終わった。
「じゃぁレン君と重原さん、やってみよーーー! 」
「手本は行いましたのであとは真似てください」
その言葉を受けて一気に顔が熱くなる。
は、謀りやがったな。
あの恥ずかしい場面を再現しろと?!
チラリと赤くなっているだろう俺の顔を愛莉に向ける。
愛莉も恥ずかしいようで顔を赤くして少しあわあわとしていた。
可愛いな、ちくしょぉ!
「なぁトモ」
「なに? 」
「俺がやると普通にセクハラじゃないだろうか」
「ふむ……。重原さん。写真撮りたくない? 」
「と、撮りたい」
「さっきの僕達のような写真になるけど大丈夫? 」
「が、頑張る」
「いや普通の写真を撮ればいいだろ? 」
「なら決定だね。さ、体を寄せ合って」
促すトモをどう切り崩そうかと考えていると愛莉が近寄りくっついた。
愛莉からきたことに狼狽していると愛莉が潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
彼女も恥ずかしいのか頬を赤く染めている。
その表情に吸い込まれ愛莉を引き剥がすことができずにいると、トモから声がかかった。
「ほらレン君腕を回して」
トモから催促がきた。
愛莉から来てくれた。
その現実にこれまでの葛藤が吹き飛び愛莉に腕を回す。
ぎゅっと肩に手をやると巻き込まれるように愛莉との密着度が増した。
引き寄せられた体は陸上をしていたとは思えない程に細く柔らかい。愛莉からは花のような香りが鼻腔をくすぐる。
愛莉はぼーっと俺を見上げたままで俺も彼女の丸く可愛らしい瞳を見つめていた。
パシャリ。
シャッター音で現実に戻される。
これまで感じたことのない程に体が熱くなる。愛莉から瞳を逸らして腕を外そうとしたがトモからストップがかかった。
「次の写真を撮るから外さない! 」
結局の所バカップルの真似事をやらされ五枚写真を撮った。
……現像できるだろうか。
トモがそう言ったのは外が暗くなってきた時だった。
熟年夫婦はもう帰宅する時間。
トモがいるとはいえ夜道を二人で帰るのはちょっと危険だ。
いやトモがいたら危険度は上昇するか?
トモを男性と判断できない人の方が多いかもしれないしな。
「撮るのは良いけど固定するものがないぞ? 」
「こんなこともあろうかと……」
トモはそう言いながらゴソゴソと自分の鞄を探る。
するとトモは自撮り棒を取り出した。
「……いつも持ち歩いているのか? 」
「もちろん。いつ、なんの記念日になるかわからないからね」
「よく先生に取り上げられなかったな」
「成績上位者の特権を舐めてもらったら困るな」
「見つかったことあるのかよ」
さも当然かのように言うトモに溜息をついた。
しかしトモが特権を使うとは珍しい。特別扱いは好きではないはずだ。
それほどまでに遠藤さんとの毎日を楽しく過ごしているのだろうと考えると、羨ましさよりも安堵がきた。
これからも二人仲良く過ごしてほしい。
「じゃぁこっちに来て」
トモが声をかけ俺達が席を立つ。
ソファーの前に集まると、トモが自撮り棒を渡してきた。
受け取り伸ばしているとトモが言う。
「レン君は合図をするのが苦手みたいだから僕が数えるね」
さっきやらかしたところなので反論できない。
ギロリと軽く睨むとトモがおどけた様子で過剰に反応する。
はぁと溜息をつき自撮り棒にトモのスマホをセット。
「じゃぁ行くね。三、二………………」
「一はまだか?! 」
「おっーとを忘れる所だった」
「忘れるはずがないだろうが」
「男は一だけ覚えておけばいいのさ」
「今さっき忘れてたって言ってたよな? 」
「そんなことも忘れたよ」
いつもに増してふざけたがるトモに片手でチョップ。
頭をさすりながら俺を見上げてきた。
「酷いなぁ」
「ならふざけずにやれ」
「え~。面白くない」
「お祝いで面白さを求めるな」
「お祝いだからこを面白くなくては」
「それはお祝い中に、だろ? 真面目にやる所は真面目にやれ。ほら」
「わかったよぉ」
トモは渋々と言った感じでコホンと軽く咳払いをする。
そして数を数えて、俺はパシャリとボタンを押した。
きちんと撮れているかまずは確認。
それを終えたらトモのスマホを自撮り棒から外してトモに渡す。
「じゃぁこれ全員に送るね。あ、僕重原さんの連絡先知らない」
「なら私が送りましょう」
「気が利くぅ! 」
「……今日は本当にテンションが高いですね。とも君は」
遠藤さんが珍しく笑みを浮かべながら自分のスマホを手に持った。
「あ、来た」
愛莉が写真を受け取ったようだ。遠藤さんは仕事が早い。
そんなことを考えていると俺のスマホもベルを鳴らす。
確認するとトモから写真が送られてきている。
「後はツーショットだね」
「「?! 」」
「一先ず僕達の写真を撮ってもらおう」
そう言いながらトモが再度スマホを渡してくる。
俺が撮るのは良いんだが……。
「おいトモ。まさかとは思うが俺と愛莉も撮るのか? 」
「あれれ~。勘違いしちゃったかな。僕と冴香ちゃんはもちろんだけど、僕とレン君を撮ってもらうんだよ? 」
「そ、そうか……」
「……あからさまにがっかりされると僕も傷つくんだけど。まぁその「がっかり」が答えだよ」
「どういうことだ? 」
俺が聞くとトモが顔を近づけて小声で話す。
「好意を隠しきれてないよ。レン君」
「! 」
「レン君にとっては初めての事で隠し方もわからないのかもしれないけどバレバレ」
「そ、そんなことは……」
「ないとは言い切れないよね」
こ、こいつ。
にやにやするトモに俺は顔を引き攣らせる。
待て。隠しきれていないということは――。
「まさかとは思うが愛莉もわかって……」
「どうかな。二人を見ている感じ重原さんも鈍感そうだし」
まぁ任せてよ、と言うトモにかなりの不安を感じながらも、トモが放った言葉のニュアンスがおかしい事に気が付いて首を傾げる。
「も」ってどういうことだ? それに「鈍感」?
それを考えているとトモが声をかけて来た。
顔を上げるとすでに位置を確保したトモと遠藤さんが目に映る。
トモは遠藤さんの肩に腕を回し遠藤さんはトモにもたれるように体を預けていた。
「頼んだよ」
なにも感じていないようにトモが言う。
スマホを構えようとすると愛莉がタタタと近寄ってくる。
「見ているこっちが恥ずかしくなるね」
「全くだ」
「コールはボクがしようか? 」
「……頼む」
愛莉のコールの元、俺はスマホをタップした。
あと何回か位置を変えたりして写真を撮っていく。
結果五枚撮った後、二人のいちゃラブタイムは終わった。
「じゃぁレン君と重原さん、やってみよーーー! 」
「手本は行いましたのであとは真似てください」
その言葉を受けて一気に顔が熱くなる。
は、謀りやがったな。
あの恥ずかしい場面を再現しろと?!
チラリと赤くなっているだろう俺の顔を愛莉に向ける。
愛莉も恥ずかしいようで顔を赤くして少しあわあわとしていた。
可愛いな、ちくしょぉ!
「なぁトモ」
「なに? 」
「俺がやると普通にセクハラじゃないだろうか」
「ふむ……。重原さん。写真撮りたくない? 」
「と、撮りたい」
「さっきの僕達のような写真になるけど大丈夫? 」
「が、頑張る」
「いや普通の写真を撮ればいいだろ? 」
「なら決定だね。さ、体を寄せ合って」
促すトモをどう切り崩そうかと考えていると愛莉が近寄りくっついた。
愛莉からきたことに狼狽していると愛莉が潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
彼女も恥ずかしいのか頬を赤く染めている。
その表情に吸い込まれ愛莉を引き剥がすことができずにいると、トモから声がかかった。
「ほらレン君腕を回して」
トモから催促がきた。
愛莉から来てくれた。
その現実にこれまでの葛藤が吹き飛び愛莉に腕を回す。
ぎゅっと肩に手をやると巻き込まれるように愛莉との密着度が増した。
引き寄せられた体は陸上をしていたとは思えない程に細く柔らかい。愛莉からは花のような香りが鼻腔をくすぐる。
愛莉はぼーっと俺を見上げたままで俺も彼女の丸く可愛らしい瞳を見つめていた。
パシャリ。
シャッター音で現実に戻される。
これまで感じたことのない程に体が熱くなる。愛莉から瞳を逸らして腕を外そうとしたがトモからストップがかかった。
「次の写真を撮るから外さない! 」
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