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第2章 丹梅国グルメ戦記・四象の虎
第107話 いきなりの……
しおりを挟む乾いた風が吹く荒野にて、私たち四人は卓を囲んでいた。
〝じゃら、じゃら、じゃら……〟
ただ岩から削り出した割には、音も感触もいい麻雀牌が卓上で踊る。
今まさにこんな場面を誰かに見られたら、なんて思われるのだろうか。
「この牌は偽物だけど――」
不意に百爪が口を開いた。
「牌をこうやって、皆でかき混ぜる音ってさ、なんか心地いいよね」
それにしても、このユルさは一体何なんだ。
こうしていると、試練だということを忘れてしまいそうになる。
そのせいか、誰も彼の言葉に相づちを打とうとしない。
なら、ここは私が同調しておいたほうがいいのだろうか?
紅月は無視してるし、フェニ子も楽しそうに混ぜてるし。
「そ、そうだね……」
「一説によると、昔の人たちって神前で麻雀を遊ぶことで、神様を楽しませていたみたいだよ」
「へえ、そうなんだ」
「うん、今考えた」
「は?」
「目で見て、音でも楽しませる。こんな娯楽、滅多にないよね」
そうか、なるほど。これはたしかに紅月が正しい。
私は適当に相づちを打つと、牌をかき混ぜる行為に注力した。
やがて私は百爪と紅月の真似をしながら、手牌を並べていくと、それを見ていたフェニ子も、きっちり13枚、自身の前に並べていった。
親はホストである百爪から。
形式は半荘戦という、二巡したら終わりというルールらしい。
百爪は牌が積まれている場所から一枚引くと、ふっと口元を緩めた。
「悪いね、天和だ。16000オール」
「はあ!?」
「なっ!?」
「てんほお……とはなんじゃ?」
「……親が最初に引いた牌でアガることよ」
「あんなやつが妾の親であるはずがなかろう」
「ゲームの話よ。鳥だってあとで親になるんだから」
「妾が親に? ……まだ早いのではないか?」
「……そして、子がアガった場合が地和ね」
紅月は面倒くさくなったのか、私に向けて解説し始めた。
つぎに百爪が指で牌をチョンと押すと、パタパタと倒れていく。
いち……にい……さん、いち……にい……さん……。
たしかにアガっている。
「でも、ちょっと、これ……!」
麻雀をあまり知らない初心者の私でも、天和くらいは知っている。
何局か打っていて出るならまだわからなくはないが、まさか最初からだなんて。
いくらなんでも出来過ぎている。
私が席から立ち上がると、紅月が手で制してきた。
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