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 池から落ちて1週間後、漸くベッドを出ることを許可された。
 朝御飯を食べるために部屋を出るとドアの前に弟が立っていた。

「ヤードラル?どうしたの?」
「ね、姉様………」

 すでに涙をいっぱいにした大きな瞳は恐怖に染まって見えた。

「………ごめんなさい」

 消えそうな声が聞こえたのと弟の大きな瞳から涙がこぼれ落ちたのは同時だった。

「ヤード、大丈夫ですわ。私は怒ってないです。私の方こそカエルが可愛くてヤードに見せたかっただけなの。驚かせちゃってごめんなさい」

 私の言葉に弟はボロボロと涙を流した。
 私が泣かせたみたいに見えるから止めてほしいぞ弟よ。

「姉様は僕の事好き?」

 付き合ってる女が面倒臭いと言っていた昔の同僚の顔が浮かんだが私は笑顔で弟を抱き締めた。

「当たり前ですわ」

 私の言葉に弟はギュッと私にしがみついた。
 可愛いじゃないか弟よ!
 お姉ちゃんはメロメロだ!
 ぎゅうぎゅうと抱き締めあっている私達をクスクス笑いながら見ていたのはお兄様だった。

「仲良しになったみたいだね。お兄様もまぜてくれるかい?」
「兄様!姉様は本当に美人で優しい素敵な人でした!兄様の言う通りでした」

 何?変なハードルが高跳びのバーレベルに上がっている気がしますよ。
 そんなもの、私は飛べません。

「私、お腹が空いてしまいましたの。朝御飯を食べに行きましょう?」
「はい!姉様!姉様、今日は姉様と一緒に居ても良いですか?」

 何?私の弟マジ天使なんですけど!

「勿論です。ヤードと一緒に読んでみたい本があったのよ!姉様が読んであげますね」
「はい!姉様!」

 私と弟の溝は浅かったようだ!
 良かった!
 弟マジ天使!
 微笑ましげに私達を見ているお兄様も勿論美しいですよ!
 この二人に断罪なんてされたら私死ねるってマジで!
 私はお兄様と弟に信じてもらえる人間になりたい。
 最後の日まで………



 私と弟にお兄様は朝御飯を食べ終わると屋敷の図書室に行って本を読みはじめた。
 私は絵本を沢山読んで弟の好感度を上げる作戦にでた!
 絵本を10冊ほど読み終わったころ隣の弟は眠ってしまっていた。

「ヤードはカーナが優しくておおはしゃぎだね」
「私がヤードを大好きだってヤードは解ってくれたでしょうか?」
「勿論だよ。カーナ!」

 お兄様は優しく私の頭を撫でてくれた。
 私はお兄様に笑顔をむけると自分の膝にかけていた膝掛けを弟にかけた。




 この図書室はでかい。
 私は弟が眠ってしまったので読みたい本を探しにあるきだした。
 私の前世の仕事は医療会社の研究員。
 植物の本を探そう。
 この世界で薬を作ることが出来たなら、私は食べ物に困ることはないと思う。
 頑張らないと。
 たぶん物語が始まるのは私が16~7の頃だろう?
 後十年そこそこで私は何でもできなきゃならない。
 大丈夫だ。私の前世は40越え………頭脳は大人だ。
 私は植物の本を熱心に見つめた。
 良かった!地球にある植物も沢山ある!
 魔法を持ってる植物もあるみたいでちょっと楽しい。

「難しい本を見ているんだね」
「お兄様。私、お薬を作れる人になりたいです」
「薬を?」
「薬を作ることができたら国のためになるでしょ?」
「国の?」

 私の言葉に兄は驚いている。
 偽善的なセリフで好感度を上げたかったか、胡散臭かったか?

「カーナ、薬なら王弟殿下が素晴らしい知識を持っているんだよ」
「王弟殿下?」
「先王様が王座を退いてから出来たお子様で、今は16歳だよ」
「16歳で薬の知識がおありなんですか?」
「うん。黒髪黒目のせいで王位継承権がないらしくて、国のために自分が出来ることをするって頑張っているみたいだよ」

 何その人格好いい。

「黒髪黒目は王位継承権がなくなってしまうんですか?」
「本当は関係ないみたいなんだけどね。代々王様は金髪碧眼だったから黒髪黒目の王弟様は回りがゆるさないみたいだね」

 王族大変。

「王族って面倒臭いですわね」
「そうだね。僕は王子に会う会議が沢山あるけど、面倒だって思うよ」

 兄は王子の補佐をするように今から王子の側につけられているのだ。
 定番の王子が生徒会長、宰相の息子が副会長って流れですね!

「薬を作ることができたらお兄様の役にもたてますわね。頑張ります!」

 兄は蕩けそうな笑顔を作ってくれた。
 掴みはOKだろう。
 私はニコニコと笑いながらそんなことを思った。
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