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婚約?

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 私が前世の記憶を取り戻してから、4年。
 私は10歳になった。

 その日、宰相様であるお父様が深刻な顔をして帰ってきた。

「お父様!お帰りな………大丈夫ですか?」
「………執務室に来てくれないかな?私の天使」
「僕らも行って良いですか?」
「………ああ、来なさい」

 お兄様が心配してヤードと一緒についてきてくれる事になった。



「カーディナルの婚約が決まった」

 その場の空気が凍りついたのが解った。
 とうとう最初の展開が来た。

「カーナはまだ10歳ですよ!なに考えているんですか!!」
「俺も国王に殺すぞって言ったんだがな………」

 お父様は頭を抱えた。
 お、お父様、国王に殺すぞは駄目ですよ!

「何故国王なのですか父上?」
「カーディナルの相手が王子だからだ」
「王子………殺しましょう」
「同意見だ!!」

 兄と父がヤバイ話をし始めました。

「お父様、お兄様。私は大丈夫ですよ」
「カーナ!」
「王子様と結婚できれば、我が領土と同じように国をより良い環境に出来ます。政略結婚は貴族女性の義務ですわ」

 私は味方を作るためにこの4年間、領土の改善を始めていた。
 我が領土は人口が少ない農村地帯だ。
 前世の記憶はとても役にたった。
 何せ大学は農大で専攻は米だった私だ。
 それが何故、医療会社の研究員にってただ単に品種改良の技術をかわれて部署の配属がそうなっただけだ。
 話を戻して、領土内の人達に私を悪く言う人間は居ない。
 薬を作って無料で分けているのも理由の一つだ。
 兎に角、私は偽善者と貴族の家柄を振りかざして味方を増やしていた。
 我が領民は私がピンチになったら、かくまってくれるだろう。

「カーディナル、いや、私の天使。嫌なら嫌で私がなんとかするよ」
「大丈夫です。王子様とだなんて名誉なことです」

 お兄様の方を見ると悔しそうな顔をしている。

「あんなやつにカーナを………」

 あんなやつ?
 王子ってどんな人なんだろ?
 定番の俺様?
 それとも、虫も殺さないおっとり系?
 私はそんな疑問を持ちながら次の日王宮で婚約式をする事になった。





「バーテミックの妹だと聞いていたが、美しい兄とは似ても似つかないではないか!こんなブスと僕は婚約なんて嫌だ!!」

 こいつ殺そう。
 お父様とお兄様!同意見です!
 国王様も王妃様も顔色が悪いです。
 お父様とお兄様の顔がひきつり、ヤードは今にも泣きそうです。
 回りには国の重要な役職についている方々が息子を連れて来ています。
 皆さん唖然です。

「どうしても僕と婚約したいならその血に染まったみたいな気持ち悪い髪の毛を兄のような色に染め直してから出直して来い!」

 私は我慢の限界だった。
 私はお父様とお兄様に笑顔を向けるとゆっくりと右手を高々と上げた。

「国王陛下、今から私が口にする言葉は全て私の意思によるもので家族は一切介入していない事を考慮した上で発言することをお許しください」
「………解った」

 国王からの許可をえると、私は笑顔で王子に近寄り言った。

「貴方様にも言っておきます。私の発言は私の意思によるもので家族には一切関係の無い話です」
「それがどうした!!」
「貴方様のようなアホ王子こちらから願い下げですわ!」

 私は語尾にハートマークが付きそうな勢いで言った。
 会場中がポカーンっとしているのは明白である。

「政略結婚の意味すら理解できないようなアホが、これからの国を担うのかと思うとゾッとします!!貴方は王族なのでしょう?それなのに自分の好みで婚約者を決めるのですか?アホ過ぎて殴り倒したいですわ!貴方は国を、国民を守る義務があると言うのに何も解っていない!解ろうともしていない。アホすぎて話になりませんわ。こんな相手との政略結婚は意味をなしませんのでこちらから願い下げです。以上」

 さらに会場はポカーンである。
 そして、お父様とお兄様が肩をプルプルさせながら笑いをこらえているのと、ヤードが私と二人を交互に見てオロオロしているのが解った。

「ぶ、無礼者!その者を捕まえて首をはねよ!」

 漸く私が何を言ったのか理解したように王子が顔を真っ赤にして叫んだ。
 まあ、それぐらいの無礼な事を言った自覚もあるし仕方がないか?
 そんなことを思った瞬間、私の目の前に黒い服を全身に見にまとった人物が立ちはだかった。
 顔まで黒い布に覆われているが、たぶんカゲロウさんだ。

「我らの姫に手を出すのなら先に貴様の首の骨を折る」

 おいおい、怖いよ!!
 私はカゲロウさんの背中にしがみつくと言った。

「必要ない。一人でも逃げられる」
「………」

 カゲロウさんは私を無言で見下ろすとシュッと姿を消した。
 ヤレヤレだ、折角家族は関係ないと言ったのに意味が無くなってしまうところだった。
 しかも物凄い殺気を振りまいて行ったせいで武術をやっている人達は顔色が悪いし、騎士団長の息子は倒れてしまっているよ。
 私を捕らえようとした騎士さん達の足元にはクナイが刺さっている。
 あの、忍者が持ってるちっちゃい剣みたいなやつ………諜報部員ってやっぱり忍者だろ。

「い、今のは………」
「おきになさらず」
「無理を言うな!」

 無理か~アホのくせに見逃せよ‼

「ジェイス、お前が悪い」
「父上!」
「カーディナル嬢、我が愚息が失礼をした。この婚約は延期にしても良いだろうか?」

 え、延期。
 無しじゃないの?

「無かった事にすることを要求する!!」

 お父様も同意見だ。
 お兄様も頷いている。

「そう言うな。我はカーディナル嬢が気に入った。国母に相応しいと思っている」
「私もです」

 国王と王妃様に何故か気に入られてしまったようです。
 お父様とお兄様が苦々しいかおをしています。

「解りました。王子殿下が国を重んじる方になれるまで、延期と言うことで」
「カーディナル、無理をしなくて良い」

 お兄様にそう言われ私はお兄様に笑顔を向けた。

「延期ですわ!次に気に入らなければ永遠に延期ですので心配なさらないで」
「………」

 お父様が満足そうに笑顔を作ってくれたよ!




 とりあえず、この日の婚約は流れた。
 良かった良かった。

「宰相!」

 お父様の元にたどりつくと、後ろからお父様が声をかけられた。

「先王。なんでしょうか」

 嫌そうな顔をお父様が作った。
 先王って事は今の国王のお父さん。
 王子のお爺ちゃんだ。

「そう、嫌そうな顔をするなよ~」
「貴方が俺に何の用ですか?」
「お前には用は無いよ。こんにちはお嬢ちゃん」

 わ、私ですか?

「こんにちは………いえ、あの、私に何か………」
「お前の娘にしては出来た娘じゃないか」
「煩い」

 お父様、口のききかた考えて~。

「ワシはガルドだ。宜しくな!」
「は、はい。ガルド様、よろしくお願いします」

 え~と何を宜しく?

「こっちは、ワシの息子のブラウドだ」

 ガルド様の後ろに黒髪黒目のイケメンがいた。
 少し日本人よりの顔をしていて親しみやすい。

「ブラウドと言います」

 頭を下げたブラウド様に私は近寄った。
 私が近寄った事に回りが何故か驚いていた。

「私はカーディナルともうします。かねがねおうわさは伺っています!ブラウド様とは会ってお話をしてみたいと思っていました」
「うわさですか………話をしてみたいとは?」
「薬学に秀でた方だと伺っていたので是非お話をお聞きしたかったのです!」

 私はテンションマックスでブラウド様の手を掴むとブンブンと音がしそうなほどふった。

「すまないね。娘は薬を作るのが趣味なんだ。君の書いた論文も全て読んでいるんだよ。だからって勝手に触っては駄目だよ私の天使」
「お父様、お外で天使は恥ずかしいのでやめてください」

 私が拗ねて口を尖らせるとお父様にふわりと抱き上げられた。

「ついついだよ」
「気を付けてくださいね!お父様」
「はいはい」

 私はお父様の首にしがみついた。

「お前は誰だ!!」
「黙れ」

 お父様………先王様ですよ。

「あの、薬を作るのが趣味とは………」
「大丈夫です。分量から室温まで全てを正確に調合しています」

 心配そうなブラウド様の言いたいことは解る。

「娘のために無菌室まで作ったんだ」

 お父様、親バカ全開ですね。

「どのような薬を作っているのですか?」
「簡単な風邪薬とか湿布薬とかです」

 ブラウド様は暫く黙るとゆっくりと言った。

「もし、嫌じゃなければ一度薬を作る所を見せていただけませんか?」

 この人は王族なのに何故こんな子供に敬語を使うのだろう?

「是非お願いします!!聞きたいことをメモしてあるので答えてもらえますか?」
「それは、勿論」

 いい人だ。
 ブラウド様、いい人!
 こうして私はブラウド様との約束を取り付けたのだった。
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