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原因不明の病  ブラウド殿下目線

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 自分は多くの人に疎ましく思われている。
 現国王が国王になって暫くして産まれた王族。
 現国王の妃の侍女をしていた黒髪黒目の母と先王の間に産まれた自分は王族とは名ばかりの黒髪黒目だった。
 王族は皆、金髪碧眼で輝くオーラをまとう。
 昔からそうだったせいで、自分は呪われていると言われて育ったのだ。
 王族なんてものはどうでも良い。
 父親も母親も、今の国王も王妃も自分を可愛がってくれている。
 それ以外は呪いを信じているのか近寄ってすら来ない。
 むしろ自分を見ると逃げ出すしまつだ。
 それでも良い。
 自分を解ってくれる人のためになることがしたい。
 そう、だから薬の研究を始めた。
 薬は人の命を救う。
 国は人が居ないと成り立たない。
 だから始めたのだ。
 兄の、国王の力になりたかったのだ。



 彼女を初めて見たのは甥の婚約式。
 彼女は10歳とは思えないほどしっかりした考えを持っていて自分には眩しく感じられた。
 真っ赤な髪の毛は燃えるような赤で、深い緑色の瞳は意志の強さをあらわしているようだった。
 きちんと家の事を考え、自分の発言を個人の責任にしてからの暴言は国の事しか考えていない。
 彼女のことを本当に美しいと思った。

「あの子を捕まえるぞ」
「は?」

 父は自分に人の悪い笑顔を向ける。
 この人は彼女を気に入ったみたいだ。



 彼女に話しかける父の後ろから彼女を見ると、本当に小さな少女だ。
 さっきまでの強い意志のようなオーラは見えない。
 だが、彼女は俺に近寄って来た。
 呪われていると言われる俺に。
 彼女は自分が名を名のると、自分の噂を聞いていると言う。
 自分の噂なんてろくなものがない。
 それなのに彼女は瞳を輝かせて自分の手をつかむと振り始めた。
 テンションの高い少女は自分で薬を作っていると言う。
 薬はひとつ間違えば人を殺してしまう。
 こんな小さな少女が作って良いとは言えない。
 自分は少しの使命感のようなものを抱きながら彼女が嫌でなければ作っているところを見せて欲しいと頼んだ。
 彼女は本当に嬉しそうに喜んだ。



 後日、彼女の家に足を運ぶと待っていたと歓迎された。
 宰相と息子二人も屋敷内にはいるが、別室に居るらしい。
 二人きりでおもに薬作りの話を彼女だけが興味深く聞いてくる。
 本当に薬を作るのが好きみたいだ。
 環境、設備、調合にいたるまで彼女の動きは完璧で驚かずにはいられなかった。

「私の今の夢は、媚薬やチャームの魔法を無効化するアイテムを作ることです」
「無効化ですか?」
「私の兄と弟はいずれこの国の力になる人間です。二人には本当に愛した人と一緒になって欲しい。ですが、眉目秀麗で地位のある男性を狙う雌豹は沢山居るでしょう。どんな手を使っても!って思う女性は沢山居るはずなんです‼子供が出来てしまってからでは遅いので、今のうちに無効化できる物を作りたいのです」
「媚薬は作った事が数回ありますが………たまに魔力のある植物を調合すると、魔石ができます。それなら、求める効果を生み出すかも知れないですね………」

 彼女が考える事は全て、他者に対してのようで驚いた。
 出されたクッキーを食べながらお茶をいただくとどちらも口にしたことがないほど美味しかった。

「これは、どこのお茶とお菓子でしょうか?」
「両方私の手作りですわ!!お茶はカモミールと秘伝の紅茶のブレンドに少しのミントを入れています。クッキーにも秘伝の紅茶を練り込んでいるんですよ!!」
「買って帰ろうと思ったが無理か」

 少し残念に思いながらお茶をすすった。




 帰りに彼女はお茶とクッキーを沢山包んでくれた。

「沢山作りすぎてしまったのでお土産にどうぞ」
「こんなに沢山。良いんですか?」
「はい!あ、その代わり、今度は私がブラウド様の薬作りを見学に行ってもよろしいですか?」
「………」
「迷惑でしょうか?」

 彼女は自分が気持ち悪くないのだろうか?

「構いませんが………嫌では無いですか?」
「何故ですか?憧れの人と研究の話が出来るなんて幸せに決まってますわよね?」
「そ、そうですか?では、お待ちしています………では、失礼」

 帰り道、彼女の言葉が頭の中をグルグル回った。

「ブラウド?どうした?顔が真っ赤だそ?」

 家に着くと父に指摘され驚いた。
 自分はどうしてしまったのだろう。

「動悸と息切れで苦しいのですが………風邪かな?」
「………医者が投げ出す病か」
「それは、どう言った病気ですか?」
「………兎に角休め」
「そうします」

 この日から自分は理由の解らない動悸と息切れに悩まされるようになったのだった。
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