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姫様

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「やる」

 王子が私にプレゼントをしたがります。
 今日は王子の瞳と同じ色の大きな石のついたネックレスです。
 周りにいる王妃様とバネッサ様は微笑ましげに見ている。

「………いりません」
「なぜだ!」
「………興味がありません」
「女なのにか?」
「煩いですよ」

 私が、殴ろうが蹴ろうが王子が文句を言わなくなったのは私が遠慮が無いからだろうか?

「こんにちは」

 定番のように現れたのは、ブラウド様だ。

「叔父上もお茶会に?」
「いや、今日は時間が無くてね。カーディナル嬢にこれだけ渡したくてね」

 ブラウド様が見せたのは乾燥した草。

「今の時期には手に入らないレア物です。たまたま売人が持ってきたのでカーディナル嬢に」

 ブラウド様の手渡してきた草は私のテンションをかなり上げた。

「いいんですか!嬉しいです!大事に使わせていただきますわ!!」

 私は草を受けとりピョンピョン跳び跳ねた。

「おい!俺がやった宝石より、叔父上がやった草を喜ぶなんてどういう了見だ!」
「宝石には興味がありませんが、魔法草には興味がありますから。ブラウド様、ありがとうございます」

 王子がふて腐れて、部屋の隅っこで体育座りしはじめた。
 アホ王子、可愛くないから。

「では、自分は仕事があるので」
「あとでお菓子をお持ちしても宜しいですか?」
「それは楽しみです。待っていますね」

 ブラウド様、レアアイテムをありがとうございます!
 家に一旦帰ればクッキーとマドレーヌが大量にあるので持っていこう。
 いい人。
 ブラウド様いい人!
 お礼はちゃんとしないと!
 私はニコニコ笑顔で紅茶を飲み始めた。

「カーディナル……悪いのだけれど、ジェイスを慰めて来てくれるかしら?ウザいのよ」
「あ、解ります!」
「カーディナルちゃん、お願い」

 王妃様とバネッサ様に頼まれて私は、しぶしぶ王子の元へ向かった。

「王子、王妃様がウザいって」

 私は王子の背中を軽く蹴りながらそう言った。

「お前は俺に対して扱いがザツすぎる!」

 私は王子の隣に座ると首をかしげて言った。

「こんなに気を使わないで喋れる人って他に居ないから楽しかったのに………駄目なの?」
「だ、………駄目じゃ……無い」

 チョロいぜ王子!
 アゲハさん直伝の『首をかしげる』は、威力があるらしい。

「じゃあ、お茶にしましょ」
「うん。………カーディナルは叔父上が好きなのか?」
「好きと言うより尊敬しています」
「恋愛感情じゃ無いんだな?」
「はい。………なんなんですか?」
「なら、良い」

 なんなんだアホ王子。

「尊敬できない人とは結婚したくないんじゃない?」

 バネッサ様がクスクス笑いながら言った。

「そうですね。尊敬って大事です」

 すると王子に肩を捕まれた。

「カーディナルはやっぱり叔父上が好きなのか?」
「王子とブラウド様どちらがって聞かれましたら、躊躇うことなくブラウド様の方が好きですが何か?」
「………」

 王子がまた部屋の隅っこで体育座りを始めた。
 私は深いため息を吐くと言った。

「王子がそんなだから、ブラウド様に負けてしまうんでしょ?私が王子と結婚したいと思ってしまうぐらいに尊敬に値する男になろうとは思わないんですか?だからアホ王子って言われるんですよ」

 王子が恨めそうに私の方を見た。

「ちなみにお兄様レベルになれたら尊敬してあげますよ」
「………解った。カーディナルを俺に惚れさせてみせる!!」

 王子はそう叫ぶと部屋を出ていった。
 たぶんお兄様の所に行ったのだろう。

「カーディナルちゃんは凄いわ!」
「あの子本当に馬鹿ね。それが最近可愛く思えるのはカーディナルのお陰だと思うわ」

 バネッサ様と王妃様がしみじみと言った。
 王子、既に馬鹿扱いだったんだね。
 私は聞こえないふりで紅茶を飲みはじめた。





 お菓子を持って、ブラウド様の所に行こうとするとヤードも一緒に来ると言うのでヤードと手を繋いでブラウド様の元へ向かった。

「いやー、よく来てくれたね!お願いだからこっちに来てくれないかい?」

 出迎えてくれたブラウド様の顔色が悪い。
 何が何だか解らないまま案内された部屋の中を見ると、そこには綺麗な青い瞳とキラキラな金髪を縦ロールにした私達と同い年ぐらいの女の子がいた。

「叔父様!何処へ行っていたの!私を待たせるなんて許さないんだから」

 私はブラウド様が先に部屋に入るのを確認してからドアをしめた。

「姉様、さっきのはココル様です」
「ココル様?」
「アホ王子様の妹君です」

 ああ、ヤードまで王子の事をアホ呼ばわり………

「カーディナル嬢!助けて下さい」

 ドアを開けて出てきたブラウド様は小声で助けを求めてきた。
 そんなキャラの濃い子嫌だな~………

「貴女だれ?」

 ココル姫に気がつかれました。

「私はカーディナルともうします。こちらは弟のヤードラルでございます」
「貴女、お兄様をアホ呼ばわりした馬鹿女?」

 私はニッコリ微笑むとココル姫の頬っぺたを両方引っ張ってやりながら言った。

「姫様、私は貴女のお兄様にアホ呼ばわりしても罪にとわれなかった者ですわ!礼儀のなってないアホには言ってやっても良いと言う許可を王妃様からもらってますの」

 もらってません………王妃様ごめんなさい。

「アホ王子の妹もアホとは王妃様も国王も可哀想で泣いてしまいそうですわ」
「いしゃいでふわ!止めへ」

 私は手を離しながら言った。

「我が儘が可愛いのなんてチビッ子の時だけですのよ!今、この時より良い女になる努力をなさい!王族の傲慢女なんて最悪の人生しか待ってませんからね」

 姫様は目を見開きフリーズ。
 壊れてしまったでしょうか?

「た、例えば?………どんな人生よ」

 漸く口を開いた姫の言葉は震えていた。

「簡単な物をあげますと、まず、国民の怒りにふれて首をはねられます。もしくは国外追放、他国との和平の駒としてチビデブハゲの浮気男の元へ嫁がされたりですかね?」

 姫様が真っ青な顔でプルプル震えだしました。

「嫌よ!そんなの!!」

 私は姫様の頭を撫で撫でして言った。

「ならば、今から良い女になりましょう。私も手をかします」
「ほ、本当?」
「はい。私が思う素敵な女性になりましょう」
「は、はい!お姉様!!」

 姫様は私に抱きついてそう言った。
 そこにヤードがムッとしたように言った。

「姉様は僕の姉様です!」
「お兄様と結婚すれば私のお姉様にもなります!」

 ヤードと姫様がバチバチのにらみ合いを始めました。

「二人ともお茶にしましょう。私のお手製クッキーは美味しいですわよ」
「はい!姉様!」

 ヤードは蕩けそうな笑顔で頷いた。

「さすがカーディナル嬢です。あのココル姫を一瞬で手なずけるなんて………神業です」
「ブラウド様、誉め言葉ととらえてよろしかったでしょうか?」
「勿論です。尊敬します」

 ブラウド様に、尊敬されても嬉しくないところで尊敬されてしまいました。
 ココル姫は私にしがみついたまま、ヤードは私の腕を掴んだままブラウド様を睨んでいる。
 この子達良いコンビになるかも………

「明日王妃様に姫様のお友達になったと言わないと!」
「友達?」
「そうですよ」
「お姉様じゃ無くて?」

 姫様がキラキラの瞳で見つめています。

「ココル姫、姉様が貴女のお兄様と結婚したらお兄様に姉様をとられてしまいますよ」
「へ?」
「今日だって、王子におよばれして僕と絵本を読む時間が無くなってしまいました」
「………」
「お友達なら、僕もココル姫のお友達になります!三人で一緒にお勉強をするのはどうですか?」

 ヤード、なんて良い子なの天使だわ!

「うん!私!お姉様とヤードラルと友達になる!!」

 私とヤードはこうして姫様のお友達になった。





 帰りの馬車の中ヤードはニコッと笑うと言った。

「これで、姉様と長く一緒に居られます」
「へ?」
「僕は姉様とずっと一緒に居たいんです。それなのに王宮に行く時は粗相があってはいけないからってお留守番でした。でも、ココル姫の友達なら一緒に行っても良いですもんね!!姉様、大好きです」

 お、弟よ。
 君はちょっと動機が不純ではないだろうか?

「姉様?」
「………姫様と仲良くなりましょうね」
「まあ、はい」

 もしかしたら、私の天使のような弟は腹黒?
 私はニコニコと笑う弟の頭を撫でながら乾いた笑いを浮かべるのだった。
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