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可愛い妹  バーテミックお兄様目線

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 僕の妹は天使だ。
 僕と父、そして弟の意見は一緒だ。
 二年間全寮制の学校で僕がどんなに寂しくて心配な気持ちでいたかなんて妹は知らない。
 勿論、連休があれば直ぐに家に帰っていたから一切妹に会えなかったわけではないんだけどさ。
 そんな妹は凄い知識と運動神経を持っている。
 たぶん、妹と戦えば僕なんて数分で倒されてしまうだろう。
 それなのに、『お兄様と戦うなんて私には無理ですわ!私、負けず嫌いなので絶対にしないですわ。』って可愛すぎる。
 僕が大事にしている妹を狙う男どもは沢山居る。
 なにせ、天使だから。




「姫」
「なんですの?」

 妹と妹の友人と居なくて良い王子と一緒にお昼ご飯を食べ終えたころ、妹につかえている諜報部員のテントウの声がふってきた。

「姫様が王弟様と共同開発していた魔石が完成したと報告がありました」
「なんですって!直ぐに向かいます」

 妹は慌てて身仕度を整えると窓に向かって歩き出した。
 僕はそんな妹を見送った。
 妹はさも当然のように窓から飛び降りた。
 それを見ていたご令嬢の悲鳴が食堂に響いた。

「バート!」
「ああ、急いでいるからって窓から出るのは行儀が悪いな」

 王子が少し青い顔をしていたが、僕は気にせずにお茶をすすった。

「旦那。良いんですかい?」

 その時、突然真後ろに立ったのは全身黒ずくめで僕の諜報部員として働いているヤンマだった。
 王子がギョッとしているが無視だ。

「?」
「姫様が王弟様と共同開発してんのって、媚薬とか魅了の魔法がきかなくなる魔石でしたよね?」
「………」
「姫様は自分で効力を試さなければ気がすまないたちですぜ?姫様の魅力に王弟様が理性ぶっ飛ばしちゃったりなんかして………」

 僕が目を見開くとヤンマがクスクス笑いながら言った。

「くわれる前に行った方が良くないっすか?」
「気がついてたなら止めろ!」
「いやだって俺は今、旦那の専属ですし」
「なら、止めに行け!」
「諜報部の中でもしたっぱの俺が姫様に追い付けるわけないでしょうが?」

 俺はヤンマの首を掴むと言った。

「死ぬ気で走れ」
「は、ハーイ!」

 ヤンマは僕にしか聞こえない声で呟いた。

「………旦那、媚薬を飲む前ならセーフ?それとも王弟様が入れる前ならセーフ?」
「今死にたいか?」
「行ってきまーす」

 ヤンマは一瞬で姿を消した。
 僕は急いで自分の身仕度を整え席を立った。

「おい、バート!」
「ブラウド様の所に行ってくる」
「俺も行く」
「お前は、役に立たないから来なくて良い」
「おい!」

 王子とかいらん。
 僕は急いでカーディナルの後を追った。





 馬に乗りブラウド様の所につくと急いでブラウド様の研究室にのり込んだ。

「カーナ!」

 勢いよくドアを開けると真っ赤な薔薇の形をした石を抱えた妹とぐったりと机に突っ伏したブラウド様の姿があった。

「お兄様!!完成しました。直ぐに量産してプレゼントしますね」
「あ、ああ」

 何故、ブラウド様はぐったりしているんだ。

「ブラウド様、ありがとうございます!こちらはブラウド様がお持ちください!」

 ブラウド様は勢いよく顔を上げると必死に叫んだ。

「待って下さい!!今は、薬が完全に切れるまでは貴女が持っていて下さい!!お願いします!!」

 な、何があったんだ。

「そうですか?でも………嬉しいです。これで、お兄様とヤードにプレゼント出来ます」

 嬉しそうに微笑む妹は本当に可愛かった。
 どうやら、妹がこの石を作ったのは僕らのためだったらしい。
 やっぱり僕の妹は天使だ。
 僕はそんなことを考えながら妹の頭を撫でるのだった。
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