婚約破棄された男爵令嬢は隠れ聖女だった。

克全

文字の大きさ
6 / 9
1章

5話クレア男爵令嬢視点

しおりを挟む
 カルロの手際は見事でした。
 父上が築いた人脈とカルロ個人の繋がりを使って、アンソニー王弟殿下とエイデン辺境伯閣下の支援を引き出し、エミリー王女殿下が陰謀を企めないように手配したのです。

 ガルシア男爵家の当主が誰になるかは別にして、父上が築き上げた商会の当主はカルロこそ相応しいのかもしれません。
 しかし問題は今回の借りです。
 アンソニー王弟殿下は、聖騎士で大将軍でもあります。
 その殿下が、カルロの腕を見込んでいるのです。

 殿下はカルロを配下に加えたいとお考えなのです。
 以前に百騎長で迎えたいと誘われたと聞いています。
 しかしカルロは、私を護る役目があるとお断りしたそうです。
 父上も遺恨が残らずに断れるように、根回しされたそうです。
 ですが今回の借りです。

 エイデン辺境伯閣下も同じです。
 閣下は殿下と同じ武闘派に所属され、肩を並べて戦った戦友でもあられます。
 カルロを配下に加えたいとお考えなのです。
 近衛騎士団に所属させるか、国境騎士団に所属させるかで、考えの違いはありますが、武闘派に加えたいと言う考えは同じです。

 私個人は、エイデン辺境伯閣下の騎士団に所属してもらいたいです。
 そうすれば、私と閣下の接点が少しでも多くなります。
 一目でもお顔を見る機会があるかもしれません。
 もしかしたら、お声をかけて頂けるかもしれません。
 はしたない考えですが、婚約破棄された身です。
 それくらいの願いは許されるかもしれません。

 決闘の方は簡単に終わりました。
 アクセルにカルロと戦う力量などありません。
 アクセルが弱いとは言いません。
 王家騎士団の中では傑出した実力なのでしょう。
 それでもカルロの足許にも及ばないのです。

 闘技場で行われる決闘は、賭けが許されています。
 決闘を見世物として民の娯楽にした上に、臨時の収入源としているのです。
 王家が同元となり、貴族から民にまで、大々的に賭けさせるのです。
 普段の剣闘士の戦いと違い、命を賭けた決闘なので、見る者が熱狂するのです。

 ですが今回はそれほど盛り上がりませんでした。
 一瞬で勝負が決まり、カルロの腕が際立っただけです。
 多くの貴族士族はアクセルに賭けました。
 騎士団での闘技大会で、常に上位に位置していたからです。

 だから掛け率も、圧倒的にアクセル優位でした。
 十対一という圧倒的な掛け率でした。
 だから私たちは、カルロに大金を賭けました。
 絶対に勝てると分かっている賭けを見逃す事はありません。

 カルロやレイラに助けられた士族たちも、余裕のある範囲でカルロの勝利に賭けました。
 カルロがアクセルを真っ二つに両断して勝利しました。
 一瞬の事でした。

 王女殿下は大恥をかきました。
 カルロが勝利したので、直ぐに闘技場から王宮に帰られましたが、その時の眼が蛇のようでした。
 必ずまた何か仕掛けてきます。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

嘘吐きは悪役聖女のはじまり ~婚約破棄された私はざまぁで人生逆転します~

上下左右
恋愛
「クラリスよ。貴様のような嘘吐き聖女と結婚することはできない。婚約は破棄させてもらうぞ!」 男爵令嬢マリアの嘘により、第二王子ハラルドとの婚約を破棄された私! 正直者の聖女として生きてきたのに、こんな目に遭うなんて……嘘の恐ろしさを私は知るのでした。 絶望して涙を流す私の前に姿を現したのは第一王子ケインでした。彼は嘘吐き王子として悪名高い男でしたが、なぜだか私のことを溺愛していました。 そんな彼が私の婚約破棄を許せるはずもなく、ハラルドへの復讐を提案します。 「僕はいつだって君の味方だ。さぁ、嘘の力で復讐しよう!」 正直者は救われない。現実を知った聖女の進むべき道とは…… 本作は前編・後編の二部構成の小説になります。サクッと読み終わりたい方は是非読んでみてください!!

大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?

サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」

私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?

みおな
ファンタジー
 私の妹は、聖女と呼ばれている。  妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。  聖女は一世代にひとりしか現れない。  だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。 「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」  あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら? それに妹フロラリアはシスコンですわよ?  この国、滅びないとよろしいわね?  

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました

天宮有
恋愛
国を守る聖女として城に住んでいた私フィーレは、元平民ということもあり蔑まれていた。 伝統だから城に置いているだけだと、国が平和になったことで国王や王子は私の存在が不愉快らしい。 無能だと何度も言われ続けて……私は本当に不必要なのではないかと思い始める。 そうだ――自らを封印することで、数年ぐらい眠ろう。 無能と蔑まれ、不必要と言われた私は私を封印すると、国に異変が起きようとしていた。

クビになったけど、その後のことは私には関係ありませんので。 〜気まぐれ世界樹と人間嫌いな錬金術師〜

lemuria
恋愛
「お前はクビだ」 王立錬金研究所で働く錬金術師カトリーナは、ある日突然、濡れ衣を着せられて職を追われた。 理由は“世界樹の葉”の横領。 カトリーナの話なんて聞く耳持たない。 だが、彼女のそばには一匹の毛玉、世界樹の精霊シルがいた。 見えるのはカトリーナだけ。気まぐれで暴走する、困った相棒だ。 そんな人間嫌いの錬金術師と気まぐれな世界樹をめぐる、愛と毒とざまぁの話。

聖女に厳しく接して心を折ることが国の発展に繋がるとは思えませんが?

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるエリ―ナは、新たに聖女となった平民の少女のことを心配していた。 王族や貴族の中には、平民が権力を持つことを快く思わない者がいる。それをエリーナはよく知っていたのだ。 特に王子と王女の苛烈さは、エリーナさえも毒牙にかかるくらいだった。 平民の聖女が、その二人に飲み込まれかねない。そう思ったエリーナは聖女補佐として聖女を守ることにした。 エリーナは同じく聖女の補佐となった侯爵令息セフィールとディオラスとともに、平民の聖女を守っていた。 しかしそれでも、王子と王女は牙を向いてきた。二人は平民の聖女の心を折るべく、行動していたのだ。 しかし王家の兄妹は、自らの行動が周囲からどう思われているか理解していなかった。 二人の積もりに積もった悪行は、社交界から王家が反感を買うことに繋がっていたのだ。

冤罪で処刑されることになりましたが、聖女の力で逆に断罪してあげます

霜月琥珀
恋愛
一話で完結します。

処理中です...