セイジ第二部~異世界召喚されたおじさんが役立たずと蔑まれている少年の秘められた力を解放する為の旅をする~

月城 亜希人

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2‐1 無人島脱出(前編)

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 翌日、ポチの修理が済んでから拠点を後にした俺とメリッサは、この無人島にほど近い大陸へと渡る為に海に向かって二人乗りのバギーで移動していた。

 運転しているのはゴーグルを装着したメリッサ。ピンクのガム風船を膨らまし上機嫌。ポチは俺が装着中で、傍らには外部出力状態の妖精型エレスが浮いている。

「便利なもんだよな。車って」
「へへー、アタシのこと連れてきてよかったっしょ?」
「ああ、メリッサがいなかったら大変だった」
「だろー? そのまま嫁にしてくれたっていいんだよー?」
「そのままってなんだよ。流れるように嫁ごうとするなよ」

 くだらない話をしながら小一時間。時刻は既に昼近い。
 空は雲一つなく陽射しが眩しい。過ごしやすかった昨日と違って今日は気温も高めで、バギーに乗っていないときは暑かった。まだ残暑が終わってないのかもな。

 そういう訳で、俺たちはツナギの上半分を脱いで袖を腰に巻いている。上半身はインナーの黒いタンクトップ姿だ。風が肌を撫でていくので涼しい。

 ポチのいる背中は暑いがな。冷却機能つけてもらいたいなこれ。

 時速は三十キロ程度。オフロードな上に悪路だから凸凹が激しくて尻が跳ねる跳ねる。メリッサの機嫌が良いのはこれが理由だ。ものすごく楽しんでいる。

「ひゃっほー!」
【うふふ、爽快ですねマスター】
「エレスもかよ」

 女子はこういうのが好きなのかもしれない。ジェットコースターとかな。
 俺は股間が気になってしょうがない。潰したら事だからな。

 それはそうとして、バギーの動力には魔力バッテリーを使用している。
 俺たち召喚された日本人はスキルとして魔法を使うことはできるが、この世界の住人たちのように自在に魔力を操ることはできない。つまり、充填できないのだ。

 ストレージにバギーを入れて持ってきていたとしても、メリッサがいなければバッテリーに魔力を充填できず、あっという間に粗大ゴミに変わっていただろう。

 皆の説得を聞いてメリッサを連れてきてよかった。
 一人旅なんかしてたら無人島生活だけで相当時間取られてたわ。

 この無人島も思った以上に広いしな。
 というか三十キロ走っても海に着かないってどういうことだよ。

 ホログラムカードでマップを確認するが表示されない。それもそのはず、スキル〈踏破マッピング〉は神器が踏破した場所しか地図として記録されないからだ。
 なので事前に得た情報だけを頼りに走っているのだが……。

 道は合ってるんだよな?

 メリッサに声をかけようとしたとき、ホログラムカードの縁が赤く染まり、ピピピピッと細かく連続した電子音を鳴らした。戦闘状態に移行した警報だ。

【マスター、後ろです】

 エレスに言われて振り返ると、赤毛の野犬の群れが追い掛けてきていた。十頭はいる。まだ遠いからか、バギーの走行音で吠えているのが聞こえなかったようだ。

【アナリシスの使用を進言します】
「やってくれ。ついでにレクタスの近似種も教えてくれ」
【かしこまりました。データによれば、ストレーダーグと呼ばれる犬が近似種と思われます。噛みつかれると『魔犬病』に罹患します。病気を持っているようです】

 エレスが言うや否や、不意にメリッサがさっと後ろを確認した。危ねぇよ!

「んー、ありゃ多分、ブラッディハウンドだよ」
「知ってるのか?」
「傭兵なら皆知ってるよー。負け戦なんかでさ、森に逃げ込んだら連中の餌食にされるんだって。行きは出てきやしないらしいんだけどねー」
「なるほど。ブラッディってことは血の匂いに敏感ってことか」
「へへへー。ごめん、多分アタシだ。今朝アレになっちゃってさー」

 後頭部に手を当てて苦笑された。そんなことカミングアウトするなよ。
 戦闘中に気まずくなるとか意味分からんぞ。咳払いで流しとこう。
 
 
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