転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

文字の大きさ
127 / 486
第七章 教会編

第187話 異端審問官⑧

しおりを挟む
 異端審問官長ドミニカは、教会だけではなく自分まで侮辱された事に激昂する。

「えっ、普通逆じゃないですか? 私だけではなく侮辱するかぁぁぁぁ! の間違いですよね? まさか本当に自分が侮辱された事に対して激昂している訳がないですよね? 俺、教会の事は(そんなに)侮辱していませんし……。」

 俺の発言により、ドミニカは失言に気付いた様だ。
 自分の口を塞ぎ、「違う、これは違うんだ。」と喚いている。

 王国民の白い視線がドミニカへと突き刺さる。
 しかし、ドミニカの心は強かった。

 自分が侮辱された事に対して、一時は激昂し、喚いてしまったものの今は落ち着きを取り戻し、自分のさっきの発言は何のその「静粛に!」と声を上げた。

「静粛に。聖モンテ教会の異端審問官長である私、ドミニカがユートピア商会の会頭主である佐藤悠斗を異端信仰者であると判断したのだ。私が異端信仰者として判断した事に反証する等、言語道断。異端信仰者はこれだから困る。皆の者、常に正統側に立っているのは聖モンテ教会の門徒である我々だ。異端信仰者の言う事に惑わされてはならない。異端信仰者を正統側へと導くのが我ら異端審問官の使命でもある。自らの罪を認めぬ異端信仰者、佐藤悠斗よ。罪を認めぬ異端信仰者に罪の自白を促す措置を取る。」

 すると、ドミニカは片手を上げて俺に視線を向けてきた。

「これより行うのは異端信仰者の拠点の破却。私がこの手を振り下ろした時、異端信仰者の溜まり場を破却する為、神の鉄槌が商会を破却する。異端信仰者、佐藤悠斗よ。自らの罪を認め罰を受け入れなさい。さすれば神も矛を収め、罪に対する罰を与えた後に正統側へと導く手助けをして下さる事だろう。」

 異端信仰者の拠点の破却?
 正直、ドミニカが何を考えているのかよく分からない。
 もしかして、ユートピア商会を破壊しようとでも考えているのだろうか?
 しかし、どうやって?
 ユートピア商会の外壁はすべて迷宮壁から出来ている。そのため普通の爆弾で破壊する事は出来ない。まさか魔法で壊す気か!?

 取りあえず、事の推移を見守り黙っていると、ドミニカは「やれやれ」と首を振る。

「罪を認めぬか。残念だ。自らの判断を悔やむがいい。」

 ニヤリと笑うドミニカが手を振り下ろすと、ユートピア商会の方から『ドオォォォォン!』と爆発音が響き渡る。
 あまりの轟音に、心配になった俺が後ろを振り向くも、ユートピア商会が爆破された形跡はない。
 ただ、見慣れぬ煙突が7つユートピア商会の外壁に沿うように作られているのが見える。

「えっ? 何あれ?」

 あんな煙突あっただろうか?
 造った覚えがまるでない。

 暫く茫然としていると、『ドシャアッ!』と音を立てて、7人の人間が空から落ちてきた。
 全員黒焦げで、何人かは苦悶の声を上げている。

「ド、ドミニカ様……。」

「…………。」

「……た、助けて下さい。ドミニカ様……あ、足がっ……。」

「も、申し訳ございません……。」

「……失敗しました。」

「…………。」

「……う、ううっ。」

 どうやら全員、ドミニカの関係者のようだ。
 教会関係者だろうか? それにしてもなぜ全員が黒焦げに?

 ドミニカも信じられないとでも言わんばかりに目を見開き、彼らの事をガン見している。

「お、お前たち……な、なぜっ……ば、爆発物の設置はどうした! 何故こんな事に?」

 どうやらドミニカにとって計算違いの何かが起こった様だ。
 そして、さっきからドミニカの失言が止まらない。
 どこまで自分と教会を貶めれば気が済むのだろうか?

 公衆の面前で聖モンテ教会の異端審問官がユートピア商会に爆発物を設置した事を認めてしまった。
 ユートピア商会の中には、まだ多くのお客さんがお買い物を楽しんでいるというのに……。

「もしかして、ユートピア商会にいるお客さんごと爆破しようとしていたんですか? お客さんは関係ないのに?」

 俺の言葉を聞いた王国民がザワザワと騒ぎ出す。

「ち、違う! 爆発物の設置など知らん。私は知らんぞ! こいつらの事も知らん。やめろ、なんでそんな目でこっちを見るんだ。違うと言っているではないか! おい! 私に近寄るな! なぜ石を持つ。それをどうするつもりだ。痛っ! やめっ! 痛い! やめてくれっ!」

 王国民たちは怒りの声を上げ、各々に石やユートピア商会で購入したであろう根野菜を取り出すと、ドミニカに対して投げ出した。石や根野菜が次々と異端審問官へと降り注ぐ。

 途中から慌てた様子で兵士がやって来た。
 恐らく、いまの爆発音を聞きやってきたのだろう。

「皆、止めろ! 止めるんだっ! そいつらには事情聴取をしなければならない。この状況を見れば何があったかは明らかではあるが……誰か、何があったのか教えてくれないか!」

 兵士が必死に止めに入るも、王国民は止まらない。
 ある意味当然の事だ。なにせ目の前に爆弾魔がいる。

 その爆弾魔は、あろうことか聖モンテ教会の異端審問官を名乗り、まだ商会内にお客さんがいるにも拘らず爆弾を起動させたのだ。しかもその爆弾魔は、爆発物の設置はどうしたと、仲間と思われる黒焦げ7人衆に問いかけている。

 もし万が一、ユートピア商会内に居たら自分まで被害を受けていたかもしれない。
 まあユートピア商会は迷宮壁で造られている為、全くの無傷。彼等にそれを知る由はないんだけど……。

 とはいえ、このままでは兵士さんが可哀そうだ。
 王国民の方々も職務妨害でしょっぴきされかねない。

 俺は慌ててドミニカの元へと駆け寄った。
しおりを挟む
感想 3,253

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。