トラウマを抱えたDKがトイレに入れない話

こじらせた処女

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第七章

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「…のだ、しのだぁっ…」
苦しそうに喘ぐ声でハッと我に帰る。
「わりい、ぼんやりしてた…」
「きょう、なんか、いたいぃ…ぬいてぇ…」
今日はペニスの滑りが悪い。射精を諦めて、勃起しているうちにソレを引き抜く。
「っはっは…きょうは、おわりにしよ」
「…うん」

「何か考え事?」
セックスができないならもうすることはない。身支度を整えてさっさと帰ろうとした時のことだった。
「…別に」
「ふーん。あ、今日汗の匂いしなかった。それと関係ある?」
「…ない」
「部活が忙しいならそっち優先して。大会も近いんでしょ?」
「うるっせえな!お前まで!部外者は黙ってろ!!…あ…」
「…ごめん…」
 何してるんだ俺は。ねっとりと気持ち悪い頭の中。振り切れない。振り切れなくて、人に当たってしまう。驚いたような、そして涙目でこちらを伺う顔をみていられなくて、そっぽを向く。
「ね、ねえ!今週の日曜日って暇?」
口角を無理やり上げて、聞いてくる。日曜日、は、部活の試合だ。でも…
「…空いてる」
もう辞めるんだし、関係ない。
「じゃあさ、2人でどっか行かない?」
「…いいけどお前…大丈夫なのかよ」
「え、ああ…行きたくなったら帰る、から…短い時間になっちゃう…けど…」
申し訳なさそうに俯いて、表情が見えなくなる。ああ、そうか。ずっと家だったもんな。どこかに出かけたくなるのが当たり前だ。
「良いよ、行こうぜ。どこ行きたい?」
「いいの!?」
「何回も言わせんな」
「まって、調べるから!」
 ぱあぁ、と湧き上がる笑顔を見せて、バタバタとどこかに行ってしまった。喜んでもらえて何より。俺もいつまでもトイレの中にいる理由はないので、カバンの置いてあるリビングへと足を向ける。
(いつ、渡そう)
 ファイルの中にひっそりと存在する退部届。さっさと渡してしまえばいいのだ、そう思うのに、なかなか出す勇気が出ない。
(本当はやめたくないんだろ?)
 頭の中に無意識に浮かぶ自問自答。だめだ、だめだ。必死でその甘えを消す。
 俺は、バスケよりも、時田を選んだ。セックスを選んだ。自分の弱さを、選んだ。

「ねえねえしのだ!俺、ここ行きたい!」
子供のようにはしゃぎながら、スマホの画面を見せてくる。
「えー、俺服興味ねえし」
「俺もないっ」
「じゃあなんで選んだんだよ」
「えへへ…」
そう、これで良い。これでよかった。

 これしか方法がなかった。
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