141 / 310
第七章『愛宕百韻』と光秀謀反の句の謎
28 『ホトトギス』
しおりを挟む
○引き続き光秀の読んだ句を中心に、どんどん解釈していきます!
25 泊瀬路やおもはぬ方にいざなわれ 心前
――この句は、拙者の推察では――
『万葉集』の柿本人麿の一首、
隠口こもりくの泊瀬はつせの山の山の際まに
いさよふ雲は妹いもにかもあらむ
《訳》
隠り国の泊瀬の山のあたりに漂っている雲は、あの妹であろうか。
――という「泊瀬」という地名を詠んだ古典の句からの引用だと感じます。連歌は上級者のテクニックとして、古典からの引用がよくありますので。
そうすると、この句の「雲」とは、
亡くなった妹を“火葬した煙”、それを雲と例えている歌なので――
つまり、25の句は――
「火葬した煙は思わぬ方へ誘われた」となる。
26 深く尋ぬる山ほととぎす 光秀
――この句、ホトトギスと聴くと歴史好きには、
鳴かぬなら 殺してしまおう ホトトギス 信長
鳴かぬなら 鳴かしてみせよう ホトトギス 秀吉
鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス 家康
という戦国三英傑の三人を比較する、この句を思い出しますね。
この場合、ホトトギスは「天」とか、「天下」と捉えると理解しやすいです。
天が余の望みを叶えんなら、そんな天は滅ぼしやる!
――by信長
天が儂の望みを叶えんなら、叶える天に変えてやろう!
――by秀吉
天が儂の望みを叶えんなら、叶えてくれるまで生きて待つのみじゃ!
――by家康
見たいな感じですね。
もし、この天下人の句に、“三日天下”と言われる光秀もいれるとしたら――
鳴かぬなら 尋ねてみよう ホトトギス 光秀
こんな感じでしょうか。なんだか、本能寺の変の後――
天下は取ったが、そのあと何をしていいのか右往左往している印象にも感じます。
それにしても、光秀は山ホトトギスに、何事を深く尋ねたのでしょうか?
――もちろん、“事の成否”だと拙者は解釈しますが。
また25の上の句と26の下の句を合わせると――
泊瀬路やおもはぬ方にいざなわれ
深く尋ぬる山ほととぎす
となり、
本能寺が炎上した煙、つまりそう織田信長が犠牲になることで、戦乱の今では予想できない《平和な世》へ誘われる。
――その為に、私(光秀)は、上手くやれるだろうか?
と、ホトトギス=“天”に尋ねてみた。
となる。
32 うらめづらしき衣手の月 行祐
「衣手」は、衣類の袖の意。
ただこの句は歌枕としてよく使われる「衣手の森」という地名ととると真意が解ります。
そう今、拙者がリアルタイム研究・執筆していて驚いたのですが――
この『衣手の森』の歌枕の使用例として、かの有名歌人・藤原定家が詠んだ歌があるのです。
読者様も次の歌を読んだら、びっくりすると思います。
ほととぎす声あらわるる
ころもでのもり(衣手の森)の雫を涙にやかる
これは藤原定家の私撰集『拾遺愚草』にのる和歌なのですが、
現在のところ訳文が見つからないので、浅学の拙者ですが挑戦してみます。
ホトトギスの鳴き声が聴こえる衣手の森、その葉に落ちる雨や朝露の雫を涙とみてしまう。
多分、こんな感じの訳になると思いますが――
「鳴き声=泣き声」と「涙」という悲しい言葉が二回出てくるので、この和歌は「悲しみの歌」「悲しい心情を吐露した歌」であると感じます。
また「衣手」「衣手の森」という言葉は、和歌によく使われるのに、何故32の句が、藤原定家のこの歌を引用したと推察できるのか?というと――
定家の歌に「ほととぎす」という言葉があるからです。
そうこの連歌興行で主賓である明智光秀が前に、
そう26句で『山ほととぎす』と詠んでいるのに応えて――
またその句を詠んだ光秀の心情をも汲み取って――
連歌会の主催者である行祐が詠み上げた句だからです。
そう連歌は場の流れも大切にしますし、また主賓の句をピックアップしているので、主賓の光秀を立てているのを感じます。
――ということで、32の句は、
『うらめづらしき衣手の月』ですので――
「月」を満月=成功とすると、
信長様が自らを犠牲にするという、特異な行為をなされる。
もちろん成功を祈っておりますが、月を見上げると――
それが信長様との今生の別れかと思い……
悲しみの涙で袖を濡らしてしまう。
となる。
――ということで、《信長公認》の連歌会なので、その出席者も『親信長派』として詠まれた句を推察してみると、新しい発見がどんどん出てきます。
……ということで、次回
まだまだ連歌解釈続きます!
25 泊瀬路やおもはぬ方にいざなわれ 心前
――この句は、拙者の推察では――
『万葉集』の柿本人麿の一首、
隠口こもりくの泊瀬はつせの山の山の際まに
いさよふ雲は妹いもにかもあらむ
《訳》
隠り国の泊瀬の山のあたりに漂っている雲は、あの妹であろうか。
――という「泊瀬」という地名を詠んだ古典の句からの引用だと感じます。連歌は上級者のテクニックとして、古典からの引用がよくありますので。
そうすると、この句の「雲」とは、
亡くなった妹を“火葬した煙”、それを雲と例えている歌なので――
つまり、25の句は――
「火葬した煙は思わぬ方へ誘われた」となる。
26 深く尋ぬる山ほととぎす 光秀
――この句、ホトトギスと聴くと歴史好きには、
鳴かぬなら 殺してしまおう ホトトギス 信長
鳴かぬなら 鳴かしてみせよう ホトトギス 秀吉
鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス 家康
という戦国三英傑の三人を比較する、この句を思い出しますね。
この場合、ホトトギスは「天」とか、「天下」と捉えると理解しやすいです。
天が余の望みを叶えんなら、そんな天は滅ぼしやる!
――by信長
天が儂の望みを叶えんなら、叶える天に変えてやろう!
――by秀吉
天が儂の望みを叶えんなら、叶えてくれるまで生きて待つのみじゃ!
――by家康
見たいな感じですね。
もし、この天下人の句に、“三日天下”と言われる光秀もいれるとしたら――
鳴かぬなら 尋ねてみよう ホトトギス 光秀
こんな感じでしょうか。なんだか、本能寺の変の後――
天下は取ったが、そのあと何をしていいのか右往左往している印象にも感じます。
それにしても、光秀は山ホトトギスに、何事を深く尋ねたのでしょうか?
――もちろん、“事の成否”だと拙者は解釈しますが。
また25の上の句と26の下の句を合わせると――
泊瀬路やおもはぬ方にいざなわれ
深く尋ぬる山ほととぎす
となり、
本能寺が炎上した煙、つまりそう織田信長が犠牲になることで、戦乱の今では予想できない《平和な世》へ誘われる。
――その為に、私(光秀)は、上手くやれるだろうか?
と、ホトトギス=“天”に尋ねてみた。
となる。
32 うらめづらしき衣手の月 行祐
「衣手」は、衣類の袖の意。
ただこの句は歌枕としてよく使われる「衣手の森」という地名ととると真意が解ります。
そう今、拙者がリアルタイム研究・執筆していて驚いたのですが――
この『衣手の森』の歌枕の使用例として、かの有名歌人・藤原定家が詠んだ歌があるのです。
読者様も次の歌を読んだら、びっくりすると思います。
ほととぎす声あらわるる
ころもでのもり(衣手の森)の雫を涙にやかる
これは藤原定家の私撰集『拾遺愚草』にのる和歌なのですが、
現在のところ訳文が見つからないので、浅学の拙者ですが挑戦してみます。
ホトトギスの鳴き声が聴こえる衣手の森、その葉に落ちる雨や朝露の雫を涙とみてしまう。
多分、こんな感じの訳になると思いますが――
「鳴き声=泣き声」と「涙」という悲しい言葉が二回出てくるので、この和歌は「悲しみの歌」「悲しい心情を吐露した歌」であると感じます。
また「衣手」「衣手の森」という言葉は、和歌によく使われるのに、何故32の句が、藤原定家のこの歌を引用したと推察できるのか?というと――
定家の歌に「ほととぎす」という言葉があるからです。
そうこの連歌興行で主賓である明智光秀が前に、
そう26句で『山ほととぎす』と詠んでいるのに応えて――
またその句を詠んだ光秀の心情をも汲み取って――
連歌会の主催者である行祐が詠み上げた句だからです。
そう連歌は場の流れも大切にしますし、また主賓の句をピックアップしているので、主賓の光秀を立てているのを感じます。
――ということで、32の句は、
『うらめづらしき衣手の月』ですので――
「月」を満月=成功とすると、
信長様が自らを犠牲にするという、特異な行為をなされる。
もちろん成功を祈っておりますが、月を見上げると――
それが信長様との今生の別れかと思い……
悲しみの涙で袖を濡らしてしまう。
となる。
――ということで、《信長公認》の連歌会なので、その出席者も『親信長派』として詠まれた句を推察してみると、新しい発見がどんどん出てきます。
……ということで、次回
まだまだ連歌解釈続きます!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる