【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね

との

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24.ちょっと気分転換のお酒談義

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 アーロンの所で最終の確認を終わらせたルーシーは男爵家に帰って来た。

 着替えを済ませアリスが持って来てくれたお茶を飲んでほっと一息ついていると、執事が手紙を持ってきた。

 手紙はマルフォー伯爵家のミセス・ブラックリーからだった。




 食堂に行くとヒューゴがなんだか元気がない。書類を手にしているが読んでいるようには見えなかった。


「マルフォーが謝ってきたぞ。離婚は取りやめるから物を返せだそうだ」

「えっ? 諦めるの早くない? まだはじまったばかりなのに」


「辞めたきゃ止めてもいいが?」

「やめないよ? リチャードったら、今更何言ってんだか呆れちゃう。頭悪すぎだわ」

「ボロカスだな」

 エールを飲みながら横目でルーシーの様子を伺うヒューゴ。


「どうせ犯罪者になるのが分かって慌てたんでしょう? こっちを犯罪者にしようとした癖に。
父さんまで巻き込んでおいて、許せるわけないわ」

「・・円満離婚の手もあるぞ。その方がお前の傷は浅く済む」


「心配してくれてたのね。元気がないから吃驚しちゃった。父さんはどうしたいの?」

「うーん、取り敢えずやる事はやったしお前が帰って来れるならそれで良いかも・・と思わなくもない」


 ルーシーが左腕を腰に当て右手の人差し指をヒューゴに突き付けた。


「父さんは、やりはじめたら最後まで責任取れっていつも言ってる癖に。
『途中で辞めるくらいなら初めから手を出すな』でしょ?
それにね、此処でやめた方が後悔すると思うから私は続けるわ。
ちゃんとケジメをつけたいの」

「・・絶対に後悔しないと誓えるのか?」

「うん、誓える。だから最後までやらせて」

「よし、なら俺も遠慮せずやるぞ。ブランデー飲むか?」

「ブランデー? 珍しいわね、私はミード蜂蜜酒にしようかな」


 グレイソンが其々のお酒とグラスを運んできた。

 気付け薬として珍重されていたブランデーは品質の落ちたワインを醸造したのがはじまり。以前は焼いたワインとも呼ばれていた。

「ブランデーは『命の水』だぞ」

「こっちは『飲み物の元祖』だからいいの」

「熊のおかげで出来た飲み物だろ?」

「ケルト神話にも出てくるお酒なんだから」


 その後二人の酒盛りは深夜まで続き、翌日の朝仲良く二日酔いになったとか。





「今日は紅茶だけで良いわ。何も食べられなさそう」

「落ち着かれたらビスケットを少し召し上がると楽になりますよ」

「ほんと? ありがとう、試してみるわね」


 ヒューゴが食堂に現れた。

「コーヒーだけで良い」


「昨日言い忘れたんだけど、リチャードのご両親が帰ってくるみたい。また一波乱ある筈だから宜しく」

「あのくそば・・おばさんか、酔い覚ましに丁度いい」


(・・父さん、そう言えばお義母様の事大嫌いだった)



「こっちの準備は出来てる。
奴らの後ろにいそうな貴族は調べ上げて潰しといた。
其方はどうだ?」

「私も準備出来た。帳簿や請求書関連は全部アーロンのとこに揃ってる。
私は例の書類を持って裁判に向かうだけ」




「奴はあの書類の存在忘れてるんだろうなぁ。俺だったらあんな書類絶対にサインしないがな」

「サインと印章の両方がある書類だから効果抜群の筈。私の最終の武器よ」



 玄関辺りから怒鳴り合うような大声が聞こえて来た。グレイソンが頑張っている声が聞こえてきた。

 ルーシーに注意を促しているのだろう。


「お待ちください! 今主人に確認をとって参りますので、暫く「煩いわね、使用人風情がそこをお退き!」」


「はぁ。ほら、さっさと部屋に行け。お前がいたら話が長引く、ばあさんに物を壊される前に俺は応接室に行くから」





 マルフォー前伯爵夫人登場。

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