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第三章 明日へ
75. 訃報
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王室より王太子の御子――ユイール様が亡くなったとの訃報がもたらされたのは夏の節の事だった。国王陛下は、すぐに国民に喪に服すように命じられ、また、喪が明けるまでは王室行事も停止された。王都の大聖堂で葬儀が行われる事となり、僕とレヴィルが列席する事になった。
まだ3歳になったばかりの幼子が、突然、その生涯を閉じられたのだ。あまりにも悲しい事実に胸が張り裂けそうになる。
葬儀には王侯貴族を始めとして、大勢の参列者が訪れていた。もちろんユイール様の血縁上の父であるオーウェン公爵や、王太子の元夫であるユリウス夫妻も参列していた。皆、一様に沈痛な面持ちを浮かべている。特に母である王太子のカミーユ殿下の顔色は蒼白だ。無理もない、子を亡くしたのだから……もし自身がシリルを失ったらと考えると、その悲しみは想像を絶した。
カミーユ殿下は表情が抜け落ちた真っ白な顔で棺を見つめていた。まるで魂が抜けたかの様に虚ろな瞳をしていて、その姿からは生気が感じられない。今にも倒れてしまうのではないかと思うほど頼りない様子だった。
成人式の時、謁見した穏やかな表情で話す彼の姿とはかけ離れたその変わりように、胸が痛んだ。
やがて、棺の上に花が手向けられる。僕とレヴィルは白い花を手に取り、そっとユイール様の上に捧げた。
「……棺……小さいな……」
隣にいたレヴィルがぽつりと小さく呟いた。僕は何と言っていいかわからず、ただ黙って見守るしかできない。
葬儀の後、弔砲が放たれていく。打ち上げられた大砲の音と共に、ユイール様の死を悼む声が上がる。それは王城だけではなく、街からも聞こえてきている様だった。
「ユイール様は風邪が悪化して、そのまま亡くなったそうだ」
「そう……」
葬儀を終えてタウンハウスに戻ると、レヴィルが教えてくれた。ユイール様は元々身体が弱い方だったので、肺炎を起こして、回復ができなかったそうだ。3歳の小さい身体ではきっととても苦しかったに違いない。そう思うとやりきれない気持ちになった。
「シリルは……もう寝ているかな」
「……ああ、多分な」
無性に我が子の顔が見たくなって、子供部屋に向かう。扉を開け、ベッドの方を見ると、いつものようにシリルはそこに眠っていた。起こさない様にそっと近づき、眠る彼をじっと見つめる。穏やかに眠っている姿を見ているだけで安心できた。―――愛しい僕の天使。どうかこのままずっと一緒にいて欲しい。君の成長を見守りたい。
そんな想いを込めて優しく頭を撫でると、それだけで穏やかな気分になる。そばにいたレヴィルがそっと僕の肩を撫でた。
「……シリルを守りたいよ、レヴィル」
「……ああ、そうだな」
おそらく僕たちの気持ちは同じだろう。
暫くの間、僕はシリルの柔らかな髪を撫で続けていた。
まだ3歳になったばかりの幼子が、突然、その生涯を閉じられたのだ。あまりにも悲しい事実に胸が張り裂けそうになる。
葬儀には王侯貴族を始めとして、大勢の参列者が訪れていた。もちろんユイール様の血縁上の父であるオーウェン公爵や、王太子の元夫であるユリウス夫妻も参列していた。皆、一様に沈痛な面持ちを浮かべている。特に母である王太子のカミーユ殿下の顔色は蒼白だ。無理もない、子を亡くしたのだから……もし自身がシリルを失ったらと考えると、その悲しみは想像を絶した。
カミーユ殿下は表情が抜け落ちた真っ白な顔で棺を見つめていた。まるで魂が抜けたかの様に虚ろな瞳をしていて、その姿からは生気が感じられない。今にも倒れてしまうのではないかと思うほど頼りない様子だった。
成人式の時、謁見した穏やかな表情で話す彼の姿とはかけ離れたその変わりように、胸が痛んだ。
やがて、棺の上に花が手向けられる。僕とレヴィルは白い花を手に取り、そっとユイール様の上に捧げた。
「……棺……小さいな……」
隣にいたレヴィルがぽつりと小さく呟いた。僕は何と言っていいかわからず、ただ黙って見守るしかできない。
葬儀の後、弔砲が放たれていく。打ち上げられた大砲の音と共に、ユイール様の死を悼む声が上がる。それは王城だけではなく、街からも聞こえてきている様だった。
「ユイール様は風邪が悪化して、そのまま亡くなったそうだ」
「そう……」
葬儀を終えてタウンハウスに戻ると、レヴィルが教えてくれた。ユイール様は元々身体が弱い方だったので、肺炎を起こして、回復ができなかったそうだ。3歳の小さい身体ではきっととても苦しかったに違いない。そう思うとやりきれない気持ちになった。
「シリルは……もう寝ているかな」
「……ああ、多分な」
無性に我が子の顔が見たくなって、子供部屋に向かう。扉を開け、ベッドの方を見ると、いつものようにシリルはそこに眠っていた。起こさない様にそっと近づき、眠る彼をじっと見つめる。穏やかに眠っている姿を見ているだけで安心できた。―――愛しい僕の天使。どうかこのままずっと一緒にいて欲しい。君の成長を見守りたい。
そんな想いを込めて優しく頭を撫でると、それだけで穏やかな気分になる。そばにいたレヴィルがそっと僕の肩を撫でた。
「……シリルを守りたいよ、レヴィル」
「……ああ、そうだな」
おそらく僕たちの気持ちは同じだろう。
暫くの間、僕はシリルの柔らかな髪を撫で続けていた。
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