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7歳の夏
ちょっとだけ大人になる
しおりを挟む―――目が覚めたらパープルスライムが居なかった。
………のは、毎朝のことなので気にしない。
ニールはくっつきそうになる瞼をくしくしと手で擦りながら、まだ眠っているクリスとカイル、そしてヘルギを起こさないようにそっとシグルドから降りた。
「おはよう、シグルド。」
その時にシグルドが降りやすいように形を変えてくれたのでどうやら起きているらしい。
ニールは小声で朝の挨拶をすると、シグルドのボディにそっとキスをした。
おはようとおやすみ、そしてごめんなさいのキスはウィルが教えてくれたこと。
そしてウィルにそうするように教えてくれたのは、シェルニーニャだったそうだ。
ほんの些細なルーチンではあったけれど、そうする度にシェルニーニャが傍に居てくれるようで、ニールはいつも胸がいっぱいな気持ちになる。
優しい気持ち。
以前の自分は知らなかった、誰も教えてくれなかったことだ。
「んー………目ヤニ、とれたかな?」
冷たい水にヒヤッとなりながら頑張って顔を洗い、タオルで優しく水気を取る。
ゴシゴシ拭いたらいけないと、教えてくれたのはシグルドだった。
ウィルは大雑把だし、ニールはゴシゴシしないと目ヤニが取れなさそうで不安だったけれど、ちゃんとしないとシグルドが怒るので二人共(今のところは)言いつけを守っている。
そのうち守らなくなるかもしれないが。
鏡を見るために乗っていた踏み台からそろそろと降りて、リビングへと向かう。
先程からいい匂いが漂ってきている。
もしかしたらマチルダが起き出して朝ご飯を作ってくれてるのかもしれない。
おはようの挨拶をして、それからありがとうとお礼を言わなくては。
「お、おはようございます!」
「おはよう、ニール。早いのね。」
「おはよう、ニール。偉いなー。うちのおチビ達はまだ夢の中なのに。」
リビングに入ると、マチルダとリースがにこやかに迎えてくれた。
きょろきょろと見渡すも、セドリックの姿は見えない。
眠っているのだろうか?
そう思うと少しだけ、がっかりとした気分になってしまう。
「………セディお兄ちゃんは?」
「セドリックならウィルと一緒にパープルスライムにご飯やりに行ったぞ。どうした?」
「ううん。いないんだなぁっておもって………」
「あら?あらあら?」
ちょっぴりしょんぼりとした気持ちでニールが呟いた言葉に、リースは驚いたように目を丸めマチルダは楽しそうに笑った。
真逆にも思える反応に、ニールはきょとんと首を傾げる。
「お兄ちゃん、寂しがるかもね。」
「お父さんが?なんで?」
「んー………そうねー。」
とてとてと寄って来たニールを、リースはひょいと抱き上げる。
マチルダが料理をしていて危ないというのもあったが、単純にリースが抱き上げたかったというのもある。
やんちゃな男の子ばかりなので、大人しく抱っこされる子供というのは新鮮だったのだ。
ただ、リースはウィルに比べて細身(標準体型ともいう)のため、ニールとしては心細く感じてしまうのであまり好きではなかったりするのだが。
そんな妙に噛み合わない二人を微笑ましく思いながら笑った。
「子供が大人になると、大人は寂しいものなのよ。」
………のは、毎朝のことなので気にしない。
ニールはくっつきそうになる瞼をくしくしと手で擦りながら、まだ眠っているクリスとカイル、そしてヘルギを起こさないようにそっとシグルドから降りた。
「おはよう、シグルド。」
その時にシグルドが降りやすいように形を変えてくれたのでどうやら起きているらしい。
ニールは小声で朝の挨拶をすると、シグルドのボディにそっとキスをした。
おはようとおやすみ、そしてごめんなさいのキスはウィルが教えてくれたこと。
そしてウィルにそうするように教えてくれたのは、シェルニーニャだったそうだ。
ほんの些細なルーチンではあったけれど、そうする度にシェルニーニャが傍に居てくれるようで、ニールはいつも胸がいっぱいな気持ちになる。
優しい気持ち。
以前の自分は知らなかった、誰も教えてくれなかったことだ。
「んー………目ヤニ、とれたかな?」
冷たい水にヒヤッとなりながら頑張って顔を洗い、タオルで優しく水気を取る。
ゴシゴシ拭いたらいけないと、教えてくれたのはシグルドだった。
ウィルは大雑把だし、ニールはゴシゴシしないと目ヤニが取れなさそうで不安だったけれど、ちゃんとしないとシグルドが怒るので二人共(今のところは)言いつけを守っている。
そのうち守らなくなるかもしれないが。
鏡を見るために乗っていた踏み台からそろそろと降りて、リビングへと向かう。
先程からいい匂いが漂ってきている。
もしかしたらマチルダが起き出して朝ご飯を作ってくれてるのかもしれない。
おはようの挨拶をして、それからありがとうとお礼を言わなくては。
「お、おはようございます!」
「おはよう、ニール。早いのね。」
「おはよう、ニール。偉いなー。うちのおチビ達はまだ夢の中なのに。」
リビングに入ると、マチルダとリースがにこやかに迎えてくれた。
きょろきょろと見渡すも、セドリックの姿は見えない。
眠っているのだろうか?
そう思うと少しだけ、がっかりとした気分になってしまう。
「………セディお兄ちゃんは?」
「セドリックならウィルと一緒にパープルスライムにご飯やりに行ったぞ。どうした?」
「ううん。いないんだなぁっておもって………」
「あら?あらあら?」
ちょっぴりしょんぼりとした気持ちでニールが呟いた言葉に、リースは驚いたように目を丸めマチルダは楽しそうに笑った。
真逆にも思える反応に、ニールはきょとんと首を傾げる。
「お兄ちゃん、寂しがるかもね。」
「お父さんが?なんで?」
「んー………そうねー。」
とてとてと寄って来たニールを、リースはひょいと抱き上げる。
マチルダが料理をしていて危ないというのもあったが、単純にリースが抱き上げたかったというのもある。
やんちゃな男の子ばかりなので、大人しく抱っこされる子供というのは新鮮だったのだ。
ただ、リースはウィルに比べて細身(標準体型ともいう)のため、ニールとしては心細く感じてしまうのであまり好きではなかったりするのだが。
そんな妙に噛み合わない二人を微笑ましく思いながら笑った。
「子供が大人になると、大人は寂しいものなのよ。」
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