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殿下、ちょっと待って!!
17 か、髪がぁーー!!
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「ん……朝?」
目を覚めると、ちょうど太陽が昇り始める頃で、カーテンの隙間から朝日がうっすらと入り込んでいた。
……もう朝か。レオナルド殿下はまだ寝てるな。昨日は俺達よりずっと早起きして、ラペツァの領主様と話していたみたいだし、帰ってきたら帰ってきたで夜遅くまで戻ってこなかったもんな。色々と今回の処理をしてくれたんだろうな。
俺はじっと端正な顔立ちの、頼れる自分の夫を見つめる。
でも、不意につい昨日まで俺とレオナルド殿下の間にあった、もう一つの小さな温もりを思い出し、寂しく思う。
……フェニ、大丈夫かな?
そう思うと、引っ込んだはずの涙がじわじわと溢れ出てきちゃう。
……昨日も泣いたのにっ。レオナルド殿下が起きる前に、涙を引っ込めなきゃ。
俺は目をごしごしと拭いて涙を誤魔化す。でも胸に宿った寂しさは消えてくれなくて、涙がじんわりと溢れ出てくる。
……うぅーーっ、泣きたくないのにぃ。
そう思っても涙は流れて、そうしている内にレオナルド殿下が目を覚ました。
「ん? セス」
「あ、ごめんなさい。起こしちゃった?」
「いや……泣いているのか?」
レオナルド殿下は眠気眼でうっすらと瞳を開けて俺を見た。
「気にしないで。ちょっと悲しくなっちゃっただけだから」
俺は顔を隠して言ったけれど、そんな俺をレオナルド殿下は手を伸ばし、ぎゅっと自分の元に引き寄せた。
「我慢しなくていい、セス。泣きたい時は泣いたらいいんだ。私が傍にいるから」
温かな声と温かな体温に包まれ、レオナルド殿下の優しさに俺はもっと泣きそうになった。
「はい……レオ」
俺はレオナルド殿下にぎゅっと抱き着いて、逞しい胸に顔を押し付けた。でもそうしたら、涙はすっと止まって。
……ああ、レオナルド殿下はすごいな。俺の気持ちを言葉ひとつでこんなに軽くしてくれるなんて。俺の旦那様はサイコーだ。
俺はぎゅっぎゅっすりすりと体を押し付けて抱き着いた。しかし、レオナルド殿下の困った声が俺に振ってくる。
「セス、そう体を擦りつけられると堪らないんだが?」
「へ?」
俺は意味が分からなくて顔を上げると、レオナルド殿下の瞳に熱情が宿り、そしてぐりっと腰を押し付けられた。そこはもうすでに少し硬くなっていた。
ナニが硬くなっていたとまでは言うまい。
「わひゃ! あ、ごめんなさい!」
俺は慌てて離れたが、その時、ビンッと俺の髪が自分の腕に引っ張られた。
「ぎゃ!」
俺は痛さに驚き、シーツの上を見る。そこには長い茶髪の束が。
……なんだ?
体を起こして見ると、さらっと俺の肩に髪の毛が流れた。それを見たレオナルド殿下もすっかり目を覚まして驚いた顔を見せた。そして俺も驚いた。
「セス、それは……!」
「ええ!? お、俺の髪が伸びてる!!」
俺は自分の髪を引っ張ってみるが、やっぱり俺の髪の毛だ。
俺は慌ててベッドを下りて、壁に立て掛けられている姿見の鏡に自分の姿を映す。そこには長髪になった俺がいた。
「な、なんでぇーーっ!?」
摩訶不思議な現象に俺は驚き、朝っぱらか大きな声を上げた。
「本当に髪が長いな~、セス」
「ふむ、長い髪のセスも珍しいな。そうして髪を結んでいると、ダンウィッカー氏のようだ」
仕事を終えた夕方。
ランス殿下にまたも捕まり、俺は応接間に連れてこられ、そこにはアレク殿下もいた。そしてこの前と同じようにソファの真ん中に座らされて二人に挟まれている。
……なぜだ。
「コレ、どういう事なんでしょうか」
俺は自分の髪を掴み、二人に尋ねる。
「どう思います? アレク兄上」
ランス殿下はわからないのか、すぐにアレク殿下に尋ねた。アレク殿下はお茶を一口飲み、それからゆったりと答えた。
「それはレオナルドが知ってるだろう」
「レオナルド殿下が?」
朝、何も言っていなかったけどな?
俺は朝を思い出して思ったが、でも、そこへタイミングよくレオナルド殿下がやってきた。
「兄上……前も言いましたが、セスを連れ出すなら連絡をしてください」
レオナルド殿下はむすっとした顔をして言った。
「言わなくても、お前ならすぐにセスを見つけられるだろ? とりあえずそこに座れよ」
「ああ」
二人の兄に言われてレオナルド殿下はしぶしぶと席に座った。
うーん、前も見たな。この光景。
「あ、あの、レオナルド殿下。アレク殿下が、この髪が伸びた理由をレオナルド殿下は知っていると言っていたのですが本当ですか?」
俺が尋ねると、レオナルド殿下はちらりとアレク殿下を見た。
「アレク兄上」
「お前なら、見当はついているのだろう?」
アレク殿下が言うと、レオナルド殿下はふぅっと息を吐いた。
「確証がなかったから朝は何も言わなかった。でも、髪が伸びた理由はセスがあるモノを飲んだからだと思う」
「あるモノ?」
……俺、何か飲んだっけ??
俺は首を捻って思い出す。でも、何を飲んだのか思いつかない。
そんな俺にレオナルド殿下は教えてくれた。
「セス、フェニを見送る時、何かを飲み込んだだろう? そして体が淡く光った」
「ああ……そういえば!」
フェニとの別れが悲しくて、すっかりその事を忘れていた。
確かにあの時、きらりと光った何かを飲み込んだ。あれは、なんだったんだろう?
「あれが俺の髪が伸びた理由?」
「ああ……セスはフェニの、不死鳥の涙を飲み込んだんだ」
「……え?」
俺は顔を引きつらせて尋ね返した。
……ふ、不死鳥の涙ってものすごく高価で、確か一粒で城が買えるほどの金額がしたんじゃ。
「不死鳥の涙を飲めば、体のあらゆる病、怪我、呪いを治癒してくれる。その副作用で、髪の毛が伸びるんだよ。今日、資料を調べてその記述を見つけた。アレク兄上はご存じだったようですが」
アレク殿下は何も言わずに、フッと笑みを見せた。
「おおおお、俺がふぇ、フェニの涙をぉ!?」
嘘だろーー!? 飲み込むぐらいなら、研究に取っておきたかった! いや、そもそも俺より治療が必要な人に飲ませるべきなのにッ!!
そう頭を抱える俺だったが、その隣でランス殿下がクスッと笑った。
「まるでフェニの恩返しだな。まあ、セスには必要なかったみたいだけど」
「ランス殿下、笑い事じゃありませんよ! 俺、健康体なのに不死鳥の涙を飲んじゃったんですよっ!」
「まあ、仕方ないだろ。より健康になってよかったな。セス」
ランス殿下は呑気に俺に言った。でも『なんで、飲んだんだ! 他に必要としている人がいるのに!』と責められるよりは気が楽だ。
「しかし、不死鳥が無事に巣立って良かったな。セスは寂しいだろうが」
俺の隣でアレク殿下が呟くように言った。
確かに寂しい。あの笑顔に会えないのかと思うと。
でもきっとフェニなら強く生きていくだろう。そして不死鳥の彼のように立派な魔鳥になる。
「寂しいですけど……誰にだって巣立ちはあります。フェニの場合はちょっと早かっただけ。それに一人で巣立ったわけではないから、きっと大丈夫です」
「そうか……しかし、誰にでも巣立ちはある、か。耳の痛い言葉だ」
アレク殿下はそう言うと、瞳の奥に誰かを思い浮かべているようだった。きっとまだまだ小さい二人の王女様だろう。今はまだ小さいが後、十五年もすれば二人は立派な淑女だ。
その頃には美しくて聡明な女性になっているだろう。きっと引く手数多だ。
アレク殿下はその事を思ったのか、ふぅっと小さく息を吐いた。アレク殿下は意外に子煩悩なパパなのだ。
「アレク殿下にはまだ時間がありますから、たっぷり接してあげたらいいですよ」
「そうだな」
アレク殿下は俺の言葉にくすっと笑って答えた。
そして俺はアレク殿下とランス殿下に改めて視線を向ける。
「アレク殿下、ランス殿下、今回はフェニの事でいっぱい力を貸してくださってありがとうございました」
俺がお礼を言うと二人は少し驚いた顔をした。そして俺の言葉の後にレオナルド殿下もお礼を告げた。
「私からもお礼を言います、アレク兄上、ランス兄上」
俺達二人からお礼を受けたアレク殿下とランス殿下は黙ったままで、しばらくしてからランス殿下が照れくさそうに声を上げた。
「馬鹿だな。弟が困ってたら助けてやるのが兄貴ってものだろう?」
「ああ、そうだな」
ランス殿下の言葉に同意するようにアレク殿下は頷いた。
「レオナルドもセスも俺達の大事な弟だ。だから俺達に頼っていいんだよ」
ランス殿下は俺の頭に手を乗せると、わしゃわしゃっと少し乱暴に撫でた。それはまるで照れくささを隠すように。
「また困ったら私達に言いなさい。力になろう」
そうアレク殿下は優しく俺とレオナルド殿下に言ってくれた。
レオナルド殿下との結婚は思わぬ経緯があっての事だったが、俺は結婚によって優しいお兄ちゃんが二人もできてしまったようだ。
一人っ子の俺が夢見てた兄弟。
俺は嬉しくて「はい!」と元気よく答えた。
それからセスとレオナルドは応接間を後にし、残ったランスとアレクサンダーは兄弟二人だけの話を始めた。
「セスは歳を取っても変わりないですね。あんな人間珍しい」
「だからこそ、レオナルドが惚れたのだろう?」
アレクサンダーの言葉にランスは「まあ、そうですね」と笑って答えた。
「なんでもできてしまう弟が唯一惚れた相手ですからね」
「セスの事になると、ああも不器用になってしまうとはな。ふふっ」
「ま、そのおかげでレオナルドの事、嫌いじゃなくなりましたけど」
ランスはお茶を飲んで、何気なく言った。そんなランスをアレクサンダーはちらりと見た。
「昔、お前とレオナルドの仲は悪かったからな。いや、一方的にお前が嫌っていた」
ハッキリと言われてランスはふぅっと小さく息を吐いた。
「……まあ、今だから言えますけど、弟のくせに何でもできるレオナルドが嫌だったんですよ」
ランスは白状するようにアレクサンダーに吐露した。
「二歳違いなのに、勉強も魔法も剣術も俺はあいつに敵わなかった。その上、一歳違いの兄上も珍しい霊力の持ち主で。俺にはなーんにもなかった。周りは子供の俺に言いましたよ。取り柄のない第二王子だと」
それはランスの苦い思い出だった。
第一王子であるアレクサンダーは珍しい霊力があり、第三王子であるレオナルドは全てに秀でて、どんなに努力してもランスでは太刀打ちできなかった。
周りからは取り柄がないと蔑まれ、レオナルドが悪い訳ではないと分かっていても、心には嫉妬や妬みが生まれた。だから昔はこんな風にお茶を取り囲む程、仲良くなんてなかったのだ。むしろ険悪だったといって言い。
でもそれを変えたのはセスだった。
小さな子供に振り回されているレオナルド。それはあまりにも滑稽で、でもあんなに何でもできる人間でも自由にならない事があるのだとわかった。
そしてセスは数十年前、ランスに言ったのだ。その言葉をランスは一度たりとも忘れた事はない。
「でも……セスが言ってくれたんです。そこら辺にある葉っぱを掴んできて『これはね、ただの葉っぱに見えるけどお薬になる葉っぱなんだよ? だからお兄さんもみんなもまだ気が付いてないだけだよ。もしかしたら、すっごい力を持っている葉っぱかも! 誰かにその部分を見つけてもらえるといいね』って。……その時にわかったんです。自分は何の取り柄もないと思い込んでいたのだと。周りから言われていても、それはたった一部にしかない事だと」
「なるほど、それからか。ランスが変わったのは」
アレクサンダーは納得したように呟いた。
「ええ、価値のないものだと思っていても、それは誰かにとっては価値のあるものだと言われて……目から鱗でした。そしてそれから自分に自信が付いたんです。おかげで今はこうして外交官として働けています。……あの時、セスの言葉がなかったら、今の自分はなかったかもしれません。少なくともこうして兄上やレオナルドと笑って話すことなどできなかったでしょうね」
ランスは笑いながら言ったが、それは本当に正直な気持ちだった。そして今だからこそ、言える事だ。
「でも……そういうアレク兄上もセスに何かされた口でしょう?」
ランスはちらりとアレクサンダーを見て尋ね、アレクサンダーは少し黙った後、静かに微笑んで答えた。
「まあな」
そう答えつつ、アレクサンダーは昔を思い出した。
霊力は先を読んだり、人には感じられない事を感じる事が出来る特別な能力だ。しかし、それは時に苦痛もあった。
他人の気持ちに敏感になったり、悪い事を予言したら気味悪がられたり。この霊力目当てで近づかれたり。
アレクサンダーはあまりこの霊力に幼い頃からいい印象を持っていなかった。そして他人の気持ちに敏感になるあまり、人と関わることを極力避け、どんどん口下手になっていった。
けれど幼いセスはそんな事、お構いなしだった。
「ランスも知っての通り、この霊力で人の事がわかり過ぎた私は人と関わりたくないからと昔は返事も何もしなかった。だが、セスにその事を怒られたのだよ。『何かして貰ったらありがとう、悪いことしたらごめんなさいって言わないと駄目でしょ!』って。そんな事を第一王子の私に言う者など、父上や母上ぐらいだった。でもあの時の私は聞かなかった。だが、小さな子供にそう指摘されて、痛い思いをしたよ。そして私は気が付いたんだ。権威にかまけて、そういう人として大事な事を忘れかけていたのだと。セスはそれを思い出させてくれた。なにより……幼いセスはこの霊力の事をあまりわかっていなかったんだろうが、私の霊力を『便利だね』その一言で片づけた」
笑って言うアレクサンダーにランスも苦笑した。
「セスらしい」
「私は霊力を特別な力だと言われて、その事が重かった。予言が外れれば失望され、予言が当たれば持ち上げられる、そんな事の繰り返しで。でも何気なく“便利だ”と、言われて……セスにとっては裸眼か眼鏡をかけるか、その程度のものにしか感じなかったのだろう。でもそれは私にとって心地よいものだった。あまり気負い過ぎなくてもいいのだと。実際霊力はそう言うものだ。人に見えないモノが見えるだけ、それだけだ。たまには見間違う事もある。そう思えばいいのだと、あの子が教えてくれた」
「なるほど。だからですか、ある時を境にアレク兄上の態度が軟化したのは」
「ランスと同じだよ」
「違いないですね」
ランスはくすくすっと笑って答えた。そして、静かに微笑んだ。
「セスは不思議な子ですね。レオナルドが気に入るのも無理はない」
「ああ」
「まあ、レオナルドはセスに傾倒しすぎなところがありますが……。あ、アレク兄上。知ってますか? レオナルドの奴、この前セスとデートをしたらしいんですけど、その時……」
ランスとアレクの二人はその後も新しくできた義弟とレオナルドの話で盛り上がり、久しぶりに兄弟の時間を過ごした。
まるで若い頃、仲違いしていた間の溝を埋めるように……。
目を覚めると、ちょうど太陽が昇り始める頃で、カーテンの隙間から朝日がうっすらと入り込んでいた。
……もう朝か。レオナルド殿下はまだ寝てるな。昨日は俺達よりずっと早起きして、ラペツァの領主様と話していたみたいだし、帰ってきたら帰ってきたで夜遅くまで戻ってこなかったもんな。色々と今回の処理をしてくれたんだろうな。
俺はじっと端正な顔立ちの、頼れる自分の夫を見つめる。
でも、不意につい昨日まで俺とレオナルド殿下の間にあった、もう一つの小さな温もりを思い出し、寂しく思う。
……フェニ、大丈夫かな?
そう思うと、引っ込んだはずの涙がじわじわと溢れ出てきちゃう。
……昨日も泣いたのにっ。レオナルド殿下が起きる前に、涙を引っ込めなきゃ。
俺は目をごしごしと拭いて涙を誤魔化す。でも胸に宿った寂しさは消えてくれなくて、涙がじんわりと溢れ出てくる。
……うぅーーっ、泣きたくないのにぃ。
そう思っても涙は流れて、そうしている内にレオナルド殿下が目を覚ました。
「ん? セス」
「あ、ごめんなさい。起こしちゃった?」
「いや……泣いているのか?」
レオナルド殿下は眠気眼でうっすらと瞳を開けて俺を見た。
「気にしないで。ちょっと悲しくなっちゃっただけだから」
俺は顔を隠して言ったけれど、そんな俺をレオナルド殿下は手を伸ばし、ぎゅっと自分の元に引き寄せた。
「我慢しなくていい、セス。泣きたい時は泣いたらいいんだ。私が傍にいるから」
温かな声と温かな体温に包まれ、レオナルド殿下の優しさに俺はもっと泣きそうになった。
「はい……レオ」
俺はレオナルド殿下にぎゅっと抱き着いて、逞しい胸に顔を押し付けた。でもそうしたら、涙はすっと止まって。
……ああ、レオナルド殿下はすごいな。俺の気持ちを言葉ひとつでこんなに軽くしてくれるなんて。俺の旦那様はサイコーだ。
俺はぎゅっぎゅっすりすりと体を押し付けて抱き着いた。しかし、レオナルド殿下の困った声が俺に振ってくる。
「セス、そう体を擦りつけられると堪らないんだが?」
「へ?」
俺は意味が分からなくて顔を上げると、レオナルド殿下の瞳に熱情が宿り、そしてぐりっと腰を押し付けられた。そこはもうすでに少し硬くなっていた。
ナニが硬くなっていたとまでは言うまい。
「わひゃ! あ、ごめんなさい!」
俺は慌てて離れたが、その時、ビンッと俺の髪が自分の腕に引っ張られた。
「ぎゃ!」
俺は痛さに驚き、シーツの上を見る。そこには長い茶髪の束が。
……なんだ?
体を起こして見ると、さらっと俺の肩に髪の毛が流れた。それを見たレオナルド殿下もすっかり目を覚まして驚いた顔を見せた。そして俺も驚いた。
「セス、それは……!」
「ええ!? お、俺の髪が伸びてる!!」
俺は自分の髪を引っ張ってみるが、やっぱり俺の髪の毛だ。
俺は慌ててベッドを下りて、壁に立て掛けられている姿見の鏡に自分の姿を映す。そこには長髪になった俺がいた。
「な、なんでぇーーっ!?」
摩訶不思議な現象に俺は驚き、朝っぱらか大きな声を上げた。
「本当に髪が長いな~、セス」
「ふむ、長い髪のセスも珍しいな。そうして髪を結んでいると、ダンウィッカー氏のようだ」
仕事を終えた夕方。
ランス殿下にまたも捕まり、俺は応接間に連れてこられ、そこにはアレク殿下もいた。そしてこの前と同じようにソファの真ん中に座らされて二人に挟まれている。
……なぜだ。
「コレ、どういう事なんでしょうか」
俺は自分の髪を掴み、二人に尋ねる。
「どう思います? アレク兄上」
ランス殿下はわからないのか、すぐにアレク殿下に尋ねた。アレク殿下はお茶を一口飲み、それからゆったりと答えた。
「それはレオナルドが知ってるだろう」
「レオナルド殿下が?」
朝、何も言っていなかったけどな?
俺は朝を思い出して思ったが、でも、そこへタイミングよくレオナルド殿下がやってきた。
「兄上……前も言いましたが、セスを連れ出すなら連絡をしてください」
レオナルド殿下はむすっとした顔をして言った。
「言わなくても、お前ならすぐにセスを見つけられるだろ? とりあえずそこに座れよ」
「ああ」
二人の兄に言われてレオナルド殿下はしぶしぶと席に座った。
うーん、前も見たな。この光景。
「あ、あの、レオナルド殿下。アレク殿下が、この髪が伸びた理由をレオナルド殿下は知っていると言っていたのですが本当ですか?」
俺が尋ねると、レオナルド殿下はちらりとアレク殿下を見た。
「アレク兄上」
「お前なら、見当はついているのだろう?」
アレク殿下が言うと、レオナルド殿下はふぅっと息を吐いた。
「確証がなかったから朝は何も言わなかった。でも、髪が伸びた理由はセスがあるモノを飲んだからだと思う」
「あるモノ?」
……俺、何か飲んだっけ??
俺は首を捻って思い出す。でも、何を飲んだのか思いつかない。
そんな俺にレオナルド殿下は教えてくれた。
「セス、フェニを見送る時、何かを飲み込んだだろう? そして体が淡く光った」
「ああ……そういえば!」
フェニとの別れが悲しくて、すっかりその事を忘れていた。
確かにあの時、きらりと光った何かを飲み込んだ。あれは、なんだったんだろう?
「あれが俺の髪が伸びた理由?」
「ああ……セスはフェニの、不死鳥の涙を飲み込んだんだ」
「……え?」
俺は顔を引きつらせて尋ね返した。
……ふ、不死鳥の涙ってものすごく高価で、確か一粒で城が買えるほどの金額がしたんじゃ。
「不死鳥の涙を飲めば、体のあらゆる病、怪我、呪いを治癒してくれる。その副作用で、髪の毛が伸びるんだよ。今日、資料を調べてその記述を見つけた。アレク兄上はご存じだったようですが」
アレク殿下は何も言わずに、フッと笑みを見せた。
「おおおお、俺がふぇ、フェニの涙をぉ!?」
嘘だろーー!? 飲み込むぐらいなら、研究に取っておきたかった! いや、そもそも俺より治療が必要な人に飲ませるべきなのにッ!!
そう頭を抱える俺だったが、その隣でランス殿下がクスッと笑った。
「まるでフェニの恩返しだな。まあ、セスには必要なかったみたいだけど」
「ランス殿下、笑い事じゃありませんよ! 俺、健康体なのに不死鳥の涙を飲んじゃったんですよっ!」
「まあ、仕方ないだろ。より健康になってよかったな。セス」
ランス殿下は呑気に俺に言った。でも『なんで、飲んだんだ! 他に必要としている人がいるのに!』と責められるよりは気が楽だ。
「しかし、不死鳥が無事に巣立って良かったな。セスは寂しいだろうが」
俺の隣でアレク殿下が呟くように言った。
確かに寂しい。あの笑顔に会えないのかと思うと。
でもきっとフェニなら強く生きていくだろう。そして不死鳥の彼のように立派な魔鳥になる。
「寂しいですけど……誰にだって巣立ちはあります。フェニの場合はちょっと早かっただけ。それに一人で巣立ったわけではないから、きっと大丈夫です」
「そうか……しかし、誰にでも巣立ちはある、か。耳の痛い言葉だ」
アレク殿下はそう言うと、瞳の奥に誰かを思い浮かべているようだった。きっとまだまだ小さい二人の王女様だろう。今はまだ小さいが後、十五年もすれば二人は立派な淑女だ。
その頃には美しくて聡明な女性になっているだろう。きっと引く手数多だ。
アレク殿下はその事を思ったのか、ふぅっと小さく息を吐いた。アレク殿下は意外に子煩悩なパパなのだ。
「アレク殿下にはまだ時間がありますから、たっぷり接してあげたらいいですよ」
「そうだな」
アレク殿下は俺の言葉にくすっと笑って答えた。
そして俺はアレク殿下とランス殿下に改めて視線を向ける。
「アレク殿下、ランス殿下、今回はフェニの事でいっぱい力を貸してくださってありがとうございました」
俺がお礼を言うと二人は少し驚いた顔をした。そして俺の言葉の後にレオナルド殿下もお礼を告げた。
「私からもお礼を言います、アレク兄上、ランス兄上」
俺達二人からお礼を受けたアレク殿下とランス殿下は黙ったままで、しばらくしてからランス殿下が照れくさそうに声を上げた。
「馬鹿だな。弟が困ってたら助けてやるのが兄貴ってものだろう?」
「ああ、そうだな」
ランス殿下の言葉に同意するようにアレク殿下は頷いた。
「レオナルドもセスも俺達の大事な弟だ。だから俺達に頼っていいんだよ」
ランス殿下は俺の頭に手を乗せると、わしゃわしゃっと少し乱暴に撫でた。それはまるで照れくささを隠すように。
「また困ったら私達に言いなさい。力になろう」
そうアレク殿下は優しく俺とレオナルド殿下に言ってくれた。
レオナルド殿下との結婚は思わぬ経緯があっての事だったが、俺は結婚によって優しいお兄ちゃんが二人もできてしまったようだ。
一人っ子の俺が夢見てた兄弟。
俺は嬉しくて「はい!」と元気よく答えた。
それからセスとレオナルドは応接間を後にし、残ったランスとアレクサンダーは兄弟二人だけの話を始めた。
「セスは歳を取っても変わりないですね。あんな人間珍しい」
「だからこそ、レオナルドが惚れたのだろう?」
アレクサンダーの言葉にランスは「まあ、そうですね」と笑って答えた。
「なんでもできてしまう弟が唯一惚れた相手ですからね」
「セスの事になると、ああも不器用になってしまうとはな。ふふっ」
「ま、そのおかげでレオナルドの事、嫌いじゃなくなりましたけど」
ランスはお茶を飲んで、何気なく言った。そんなランスをアレクサンダーはちらりと見た。
「昔、お前とレオナルドの仲は悪かったからな。いや、一方的にお前が嫌っていた」
ハッキリと言われてランスはふぅっと小さく息を吐いた。
「……まあ、今だから言えますけど、弟のくせに何でもできるレオナルドが嫌だったんですよ」
ランスは白状するようにアレクサンダーに吐露した。
「二歳違いなのに、勉強も魔法も剣術も俺はあいつに敵わなかった。その上、一歳違いの兄上も珍しい霊力の持ち主で。俺にはなーんにもなかった。周りは子供の俺に言いましたよ。取り柄のない第二王子だと」
それはランスの苦い思い出だった。
第一王子であるアレクサンダーは珍しい霊力があり、第三王子であるレオナルドは全てに秀でて、どんなに努力してもランスでは太刀打ちできなかった。
周りからは取り柄がないと蔑まれ、レオナルドが悪い訳ではないと分かっていても、心には嫉妬や妬みが生まれた。だから昔はこんな風にお茶を取り囲む程、仲良くなんてなかったのだ。むしろ険悪だったといって言い。
でもそれを変えたのはセスだった。
小さな子供に振り回されているレオナルド。それはあまりにも滑稽で、でもあんなに何でもできる人間でも自由にならない事があるのだとわかった。
そしてセスは数十年前、ランスに言ったのだ。その言葉をランスは一度たりとも忘れた事はない。
「でも……セスが言ってくれたんです。そこら辺にある葉っぱを掴んできて『これはね、ただの葉っぱに見えるけどお薬になる葉っぱなんだよ? だからお兄さんもみんなもまだ気が付いてないだけだよ。もしかしたら、すっごい力を持っている葉っぱかも! 誰かにその部分を見つけてもらえるといいね』って。……その時にわかったんです。自分は何の取り柄もないと思い込んでいたのだと。周りから言われていても、それはたった一部にしかない事だと」
「なるほど、それからか。ランスが変わったのは」
アレクサンダーは納得したように呟いた。
「ええ、価値のないものだと思っていても、それは誰かにとっては価値のあるものだと言われて……目から鱗でした。そしてそれから自分に自信が付いたんです。おかげで今はこうして外交官として働けています。……あの時、セスの言葉がなかったら、今の自分はなかったかもしれません。少なくともこうして兄上やレオナルドと笑って話すことなどできなかったでしょうね」
ランスは笑いながら言ったが、それは本当に正直な気持ちだった。そして今だからこそ、言える事だ。
「でも……そういうアレク兄上もセスに何かされた口でしょう?」
ランスはちらりとアレクサンダーを見て尋ね、アレクサンダーは少し黙った後、静かに微笑んで答えた。
「まあな」
そう答えつつ、アレクサンダーは昔を思い出した。
霊力は先を読んだり、人には感じられない事を感じる事が出来る特別な能力だ。しかし、それは時に苦痛もあった。
他人の気持ちに敏感になったり、悪い事を予言したら気味悪がられたり。この霊力目当てで近づかれたり。
アレクサンダーはあまりこの霊力に幼い頃からいい印象を持っていなかった。そして他人の気持ちに敏感になるあまり、人と関わることを極力避け、どんどん口下手になっていった。
けれど幼いセスはそんな事、お構いなしだった。
「ランスも知っての通り、この霊力で人の事がわかり過ぎた私は人と関わりたくないからと昔は返事も何もしなかった。だが、セスにその事を怒られたのだよ。『何かして貰ったらありがとう、悪いことしたらごめんなさいって言わないと駄目でしょ!』って。そんな事を第一王子の私に言う者など、父上や母上ぐらいだった。でもあの時の私は聞かなかった。だが、小さな子供にそう指摘されて、痛い思いをしたよ。そして私は気が付いたんだ。権威にかまけて、そういう人として大事な事を忘れかけていたのだと。セスはそれを思い出させてくれた。なにより……幼いセスはこの霊力の事をあまりわかっていなかったんだろうが、私の霊力を『便利だね』その一言で片づけた」
笑って言うアレクサンダーにランスも苦笑した。
「セスらしい」
「私は霊力を特別な力だと言われて、その事が重かった。予言が外れれば失望され、予言が当たれば持ち上げられる、そんな事の繰り返しで。でも何気なく“便利だ”と、言われて……セスにとっては裸眼か眼鏡をかけるか、その程度のものにしか感じなかったのだろう。でもそれは私にとって心地よいものだった。あまり気負い過ぎなくてもいいのだと。実際霊力はそう言うものだ。人に見えないモノが見えるだけ、それだけだ。たまには見間違う事もある。そう思えばいいのだと、あの子が教えてくれた」
「なるほど。だからですか、ある時を境にアレク兄上の態度が軟化したのは」
「ランスと同じだよ」
「違いないですね」
ランスはくすくすっと笑って答えた。そして、静かに微笑んだ。
「セスは不思議な子ですね。レオナルドが気に入るのも無理はない」
「ああ」
「まあ、レオナルドはセスに傾倒しすぎなところがありますが……。あ、アレク兄上。知ってますか? レオナルドの奴、この前セスとデートをしたらしいんですけど、その時……」
ランスとアレクの二人はその後も新しくできた義弟とレオナルドの話で盛り上がり、久しぶりに兄弟の時間を過ごした。
まるで若い頃、仲違いしていた間の溝を埋めるように……。
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辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
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