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11.悪役令嬢、本領発揮ですわ!
しおりを挟むカーンッ!!!
心の中で、ゴングの鳴る音が響く。
レフリーの「fight‼︎」って声が聞こえてきそうね…
ん?ゴングにレフリー??なんだか、また訳の分からないモノが頭に浮かんだけれど…困ったわ。
今はそれよりも目の前の敵をどうするか考えなくてはいけないのに…
母国にいた頃のように手に扇を持っていれば、ミシミシと音を鳴らしていたに違いない。それほどに、目の前の光景が気に食わない。
あの美女、名前はソフィア様といったかしら。確か、ローレル子爵令嬢…だったわよね?
この国の若い娘は少ないから覚えていたわ。
…今日は私とフェンリル様の婚約披露のため陛下が開いてくださった夜会なのよ?
それなのに、挨拶した後に婚約者である私の目の前で、フェンリル様にダンスを強請り、ファーストダンスは婚約者と踊るからと遠回しに断ったフェンリル様に、では、2番目で構いませんので是非…とか強調するように両手を胸の前に組んで懇願しやがりましたのよ!!
女性から男性にダンスを強請るだけでも恥知らずなのに、なんだ、その胸は!!いくら夜会用のドレスだからって、ギリギリ隠せていれば良いというような布の少なさと、体に張り付く素材で作る必要ないでしょ?!破廉恥でしてよ!!
しかも、そんなドレスで人の婚約者にベッタリ密着してダンスを踊るなんて、喧嘩売ってるとしか思えない!
どう料理してくれようか……と考えたところで、心に強い引っ掛かりを感じてハッと我に帰る。
いけない、これじゃあ、前と同じだわ……。
入場前に感じた不安が振り返す。
私がこんなだから婚約破棄されたのに、また、同じように嫉妬して、相手の娘を酷い目に合わせてやろうとするなんて……
自然とこんなこと考えてしまうんだもの。さすが、悪役令嬢ね。
はぁ~、とひどく落ち込んだため息を吐くと、その憂い顔に引き寄せられた者達がローゼリアの周りに近寄ってきた。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「…フェンリル様、わたくし、ローゼリア様のこと、知りませんでした…」
「ソフィア嬢、この婚約は王命でつい最近決まったことです。恐らく多くの貴族が知らなかったと思いますよ?」
「王命で、ですか……」
「ソフィア嬢……以前にありました縁談の件ですが、このような結果となり、事前にお話をせずに不義理を致しましたこと、申し訳なく思っています。」
謝罪のため軽く頭を下げたフェンリル。踊りながらも常に視界の端にローゼリアの姿を収めていたが、最初はこちらを見ていた彼女は今は俯いている。
具合が悪くなったのかもしれない。入場前も、酷く顔色が悪かった。早く戻ってやらなければ……
そんなことを考えてローゼリアを見つめていた。だから、気付かなかった。ローゼリアを見つめるフェンリルを見て、ドロッとした嫉妬の視線を向けるソフィア嬢に。
一方その頃ローゼリアは、非常に困惑していた。
自分の悪役令嬢ぶりに呆れ落ち込んでいたら、多くの貴公子がローゼリアの周りに集まり、我も我もとアピールを始めたからだ。
やれ、うちの領地の〇〇が凄いやら、ドレスや宝石を贈りたいやら、どうか当家にお越し下さいやら、庭に出て休みませんか?という下心を隠さないものまで。
母国にいた頃は幼い時に王子の婚約者に選ばれ、その苛烈な性格もあってか、男性に絡まれることは無かった。ゆえに、このような時の対処に困る。
「お初にお目にかかります、私はコレワ伯爵と申します。ローゼリア様、アルジャン王国でしか取れない魔石に興味はありませんか?」
魔石!!
思わず反応を示してしまったローゼリア。
そんな彼女に好感触を得たのか、コレワ伯爵は周りの貴族を、その丸々と太った巨体で押し除けて近くへ寄ってきた。
「グフフ、ローゼリア様は魔石にご興味がおありのご様子。我が家は王国随一の魔石が取れるのですよ。宜しければ、是非、我が家へ……」
「必要ない」
コレワ伯爵の言葉を遮り隣に戻ってきたフェンリルによって貴公子達の群れから助け出されたローゼリアは、ホッと安堵した。
「ありがとう存じます、フェンリル様。私、殿方との会話に慣れていなくて…公爵家に嫁げば社交も頑張らないといけませんのに、駄目ですわね…」
落ち込む私にフェンリルは目を見開き驚く。
「リア?なぜ、愛称で呼んでくれない?自分はなにか、リアの気に触ることをしてしまった?謝るから、だから、フェルって呼んで?」
「ッ!フェル様。いいえ、怒ってなどいません!ただ、自分の不甲斐なさに落ち込んでしまって…夜会のような公式な場では愛称呼びをして良いか確認していなかったので、呼ばなかっただけですわ。」
「なんだ(ホッ)どんな場でも自分はリアにフェルと呼んで欲しい………お互いが特別な存在だと、示したいから。」
特別~~!!!
なんだか一気に気分が良くなりましたわ♪あっ、誰ですか?『チョロい』とかいった方は!ところで、チョロいとはどういう意味です??
「あの、フェル様?先ほどダンスを踊られていたソフィア子爵令嬢とは、親しいのですか?」
「いや、彼女とは以前少し話したことがある程度で、踊ったのも今日が初めてだ。ただ……」
ただ?
「まぁ!フェンリル様ったら酷いわ。わたくし達、今回の王命が無ければ婚約していた仲ではありませんか。」
なっ!?
「ソフィア嬢?!なにをっ」
ギュッとその巨乳を押し潰す勢いでフェンリルの腕に抱きつくソフィア嬢。
……ブッチーン。
そう、ふふ。そっちがその気なら、いいわ。やってやろうじゃないの、悪役令嬢、本領発揮ですわ!
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