婚約破棄から始まるジョブチェンジ〜私、悪役令嬢を卒業します!〜

空飛ぶパンダ

文字の大きさ
15 / 42

15.飲酒した翌日は二日酔いと後悔に苛まれる

しおりを挟む
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

時は少し遡り、その日の朝、ガーネット公爵家にて。


……や、やってしまいましたわぁ……


フェンリルに絡み酒をかました翌朝、ローゼリアはベッドの上で、頭を抱えていた。

頬に手を当てて、困ったわポーズをするレベルを超えた自分の昨夜の失態に、頭をかかえているのもあるが、純粋に二日酔いによる頭の痛みもあっての行動である。

記憶はある、消したい記憶だけれど。

意味不明なことを不明瞭な言葉で伝えられたフェンリルの混乱具合といったら、可哀想になるくらいだった。

最後の方は記憶にないと言うことは……寝落ちしたのね。そして、体のどこも痛くないということは、またしても、抱きとめてもらってますわね……距離的に、フェンリル様に。

ボボボッと羞恥に顔が染まる。そして、封印したはずの恋心が蘇ってくる。

なんでっ、なんで他に愛している方がいるくせに、私にも優しくするんですの?!あんなに素敵な殿方に、目をかけていただけて、落ちない女はいなくてよ!!

フェンリル様の浮気者!女ったらし!!

頭の中で悪口を叫びつつも、心は彼に惹かれることを止められない。

はぁ、と溜め息をついたところで、ローゼリア付きの侍女が入室の許可を求めてきたので、許可を出す。


「奥様、昨夜は申し訳ございません。奥様がお酒に弱いとは露知らず、度数の高い果実酒をお勧めしてしまって……頭痛がするのではと思いまして、お薬をお持ちいたしました。」


「良いのよ、私も自分がこんなにお酒に弱いとは知らなかったもの。美味しいからって調子に乗って飲み過ぎた自分のせいなのだから……まぁ、気が効くわね!頭が痛いと思っていたの。ありがとう、頂くわ。」


侍女から渡された薬を飲んでしばらくすると、嘘のように頭痛が消えた。


「すごいわね!こんなに早く痛みが消えるなんて!」


「お褒め頂き光栄です。実は、この薬は私の故郷に伝わる秘伝の薬なんです。もう数はあまりないので、他の方には内緒にしていただけると助かります。」


「まぁ、そんなに貴重なものを私の為に…本当にありがとう。勿論、他の方には言わないわ!」


侍女はニコリと微笑むと、本日はいかがなされますか?と今日の過ごし方を聞いてきた。
いつものローゼリアなら、自室で読書か、庭でお茶くらいしか選択肢がないが、今日は一味違う。


「フェンリル様は王宮へ戻られたのよね?…私、昨夜の事を直接会ってお詫びしたいの。どうにかならない?」


そう侍女に相談すると「では、王宮へ参りましょう」と返された。
簡単に自分の希望が通り驚く。ローゼリアが驚いている間に、侍女はサクサク準備を進めて、あっという間に王宮へ向かう馬車に、その侍女と二人で乗っていた。


「…フェンリル様はお仕事中よね?本当に、王宮へ突然お邪魔して、大丈夫なの?」


「(旦那様は昨夜の奥様のご様子に取り乱しており、今朝も仕事に出る前かなり気にされていたので)問題ないかと。」


さらっと回答する侍女。

最早その言葉を信じて進むしかないローゼリアは、フェンリルに会った時、昨夜伝え切れなかった思いを、うまく伝える方法を考えることにした。

王宮に到着し、衛兵にフェンリルの場所を尋ねると、王の執務室ではないかと回答があった。
流石にそこまで押し入るわけにはいかないと思い戸惑っていると、侍女が衛兵と話をつけてローゼリアの手を取り、王宮内部へ向けてズンズンと歩き出した。
この侍女は、よく王宮へフェンリル宛の荷物を届けに来るため、道を熟知しているそうで、王宮の長い廊下を右へ左へ進んでいく。


「…ねぇ、本当に突然お邪魔して大丈夫なのかしら。なんだか薬の効き目が切れてきたのか、疲れたわ。…やっぱり帰りましょう?」


ローゼリアの言葉を聞き、急停止した侍女は、「(ここで帰ったら元の木阿弥、かくなる上は…)奥様、旦那様を呼んで参りますので、お疲れのところ大変申し訳ありませんが、こちらで少々お待ちいただけますか?」と言い、まるで帰してなるものかと言わんばかりに足早に先へ行ってしまった。


あら、まぁ……はぁ、置いて行かれたわね。


ローゼリアが頬に手を当て困ったわポーズで素直に待っていると、何かに呼ばれた気がした。
侍女には、ここで待つようにと言われたが、どうしても気になったローゼリア。

気になる方へ進んでいき、廊下を曲がったところで、具合の悪そうなフェンリルを見つけたのだ。




「…フェル様?」



思わず、愛称呼びしてしまったと気付き反省するも、彼が心配で気遣う言葉がでた。


「フェンリル様?こんなところで、お一人でどうかなさいましたか?具合が悪いのですか?」


「…一人?」


フェンリル様、なんだか様子が変ね…
それに…なんだか汗ばんでて、目も潤んでいるような…………ゴクュリ。




「リア?…心配してくれるのは嬉しいが、その、そんなに見つめられると、照れてしまう…それに、なんでリアがここに?」


「…や、やだわ!私ったら。あの、私、昨夜の事をお詫びしたくて…あと、どうしてもお話したいことがあって、侍女に相談したら王宮へ行こうという話になって……こちらには侍女と二人で参りましたの。……でも、やっぱり非常識でしたわね。突然訪ねるなんて、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」


「迷惑なんて!自分は、リアになら、いつだって、……それより、リア?共に来たという侍女の姿が見えないが…」



「はい、先ほどまで一緒にいたのですが、フェンリル様を呼びに行くから少し待っているようにと言われて…」


「そうか…リア、少し話をしないか?確認したい事がある。」


「は、はい。私も、フェンリル様とお話「フェル。」したいです……ぇ?」


「フェル、だよ?」


「で、ですが…」


「リア…」



い~や~‼︎これは無理、卑怯!
フェンリル様が捨てられた子犬のような目で見てくるわ~



「フ、フェル様。」


ぱぁああ!と、晴れ渡る空のような良い笑顔を取り戻すフェンリル。


きゃ~~‼︎今度は尻尾をブンブン降ってる大型犬が見えますわ~
これも無理、卑怯!
撫で回して、甘やかしたくなるじゃな~い!!


そうして、二人で戯れていると、戻ってきた侍女に見つかり、フェンリルと話をするため、王宮の一室に連れて行かれた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

契約破棄された聖女は帰りますけど

基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」 「…かしこまりました」 王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。 では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。 「…何故理由を聞かない」 ※短編(勢い)

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...