婚約破棄から始まるジョブチェンジ〜私、悪役令嬢を卒業します!〜

空飛ぶパンダ

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35.悪役令嬢、○○○のお話を聞く

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あのあと、首を傾げるローゼリアに、『転生者』が何なのか、『日本』がどういう場所なのか、王妃様は詳しく説明してくれた。


「ーーというわけなの。どうやら、ローゼリアは前世の記憶がないようね。でも、この国の者達や身分の低い者に対する態度が、この世界のないのよね。
ローゼリアの話によると婚約破棄される前は、自他共に認める『悪役令嬢』だったのでしょう?婚約破棄の衝撃ショックで、だけが蘇って、それがローゼリアに影響してるのかも……
それに、この世界にはない言葉も時々思い浮かぶのでしょう?『悪役令嬢』だって、この世界でそんな表現する人はいないわ。前世で乙女ゲームか、そういう設定の小説でも読んでなきゃ出てこない言葉よ。つまり…ローゼリア、あなたもわたくし達と同じね!」


……仲間……


「『転生者』仲間…ですか?」


「違うわっ『オタク』仲間よ!!」


……おたく、お宅?仲間?


このあと、王妃様からは『オタク』とは何かを事細かに教授された。侍女に目線で助けを求めたが、首を横に振られ諦めるように求められた。
どうやら、『オタク』の話を遮ることは有能な侍女を持ってしても難しいらしい。


「『オタク』とは自分の好きな事柄や興味のある分野に傾倒する人の俗称のことなの。色んな種類があるのだけれど、私はオタクの中でも男性同士の恋愛物語が好きな『腐女子』だったの!」


…婦女子?なら、私もそうね。だから、私もお宅仲間なのかな?


なんとかローゼリアを同じに引き込もうと、興奮しすぎた王妃様の体調が若干悪くなってドクターストップならぬ侍女ストップが入るまで、王妃様の説明は止まらなかった……(一部、理解しきれない部分もあった。『びーえる』やら『かっぷりんぐ』など)

ちなみに、王妃様いわく『攻め』の反対は『受け』と答えるのが、腐女子的正解なのだとか。謎ね…。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


「ごめんなさい、前世の話なんて他の人には絶対に話せないから、つい興奮しちゃって……」


「いえ!夢のような世界の話なのに、不思議と懐かしく感じて、私も楽しかったです!私にも前世の記憶があれば、もっと共感出来ましたのに……残念ですわ。」


「「ローゼリア(奥様)……」」


「私もきっと、二人と同じ世界に生きていたのでしょうね。いったい、どんな人生だったのかしら…」


どんなに思い出そうとしても、カケラも思い出せない。それは、なんだかとても寂しく、悲しいことのように感じた。

落ち込むローゼリアに気を使った王妃様が前世の自分について教えてくれた。
ちょっと恥ずかしい前世だけど、少しでも元気を出して欲しいからって。


「私は前世、日本という国の熊本県に住む女子大生だったの。前世も小さい頃から目が悪かったわ。『眼鏡』なしじゃ、顔の目の前の物さえぼやけて見えるくらい…
あ、『眼鏡』っていうのは、レンズ…向こう側がハッキリ見えるくらい透明な薄い板状の物をレンズっていうんだけど、そのレンズが、ちょうど目の位置に来るように装着すると、目の力を助けてくれて、物がよく見えるっていう道具なの。原理は…ごめんなさい、分からないの。でも、前世はこの眼鏡のおかげで、生活に不自由はなかったわ。
それで、前世の私は、太めで不細工な上に、人見知りで根暗で…『腐女子』だったの。
私自身は異性愛者だけど、見た目や性格が酷い上、趣味を理解してくれる男性は皆無…死ぬまでお付き合いした方はいなかったわ。
私の死因は列車事故。イベント帰りに沢山の荷物(薄い本達)を抱えて不安定になっていた体を、人に押されて『電車』…人が何百人も入るほど大きくて箱状の高速で動く乗り物のことなんだけど、この電車の前にフラッと飛び込んじゃって、そのまま…グシャっと。」


ぐしゃっと。


ローゼリアが蒼白になっていると、侍女が慌てて口直しと言わんばかりに自分の前世を話し出した。


「私は同じく日本という国の首都、東京に住むアラサーOL…えーと、29歳独身、製薬会社の開発事務をしておりました。
勉強に仕事に忙しくしていましたので、異性とお付き合いしたことはありません。薬学の知識が多少ありますので、こちらの世界の薬草で独自開発した薬を使い、先ほども王妃様を治療いたしました。あ、勿論きちんと臨床実験を経て安全の保証された物しか人には使用しておりません。ご安心下さい。」

……臨床実験……

「王妃様と同じく、前世の私もオタクな趣味がありました。とにかく美麗な『イラスト』…絵が大好きで『乙女ゲーム』…選択次第で結果の変わる、美形な男女の織りなす恋物語を見るのが大好きでした。…私の死因は、交通事故。狙っていた乙女ゲームの発売日、初回限定版に付いてくる『ポスター』…絵画が、ど~~しても欲しかった私は、大雨洪水雷警報が出る中、家を出ました。予約していたゲーム店へ急ぐ途中、大雨のため視界不良で暴走した『トラック』…家具などの大物を運ぶ箱状の馬車のようなものに衝突して、そのまま…」


そのまま…また『ぐしゃ』っと?


……なんだか、私もまともな死に方をしていない気がしてきましたわ。二人とも、何かにぶつかって、ぐしゃっとした最期なのですもの…記憶がないということは、私は『ぐしゃ』っとどころではないのでは…ガクブル


「記憶があるというのも、良きことばかりではありませんのね。」

ローゼリアが二人に同情の視線を向ける。

「…ねぇ?私、二人の共通点を一つ見つけたわ。私は前世の記憶がないから確認のしようもないけど、二人ともな女性だったのね。」


「「あ。」」


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