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Chapter 13
大地&亜湖さんの結婚式に行きます ④
しおりを挟むだけど、わたしはなにも答えず、
「元麻布まで」
と、運転手さんに告げた。
タクシーのドアが閉まった。
将吾さんの実家までの道を、流れ行く車窓の景色とともに過ごす。
披露宴会場では頭の隅っこに押しやられていた「現実」がやっぱりど真ん中にやってきた。
——これから、どんな顔をして彼に会おうか?
普通は、訊くべきだろう。いや、問いただすべきかもしれない。
正式に結納を交わした「婚約者」のわたしには、その権利がある。
だけど……わたしたちは「政略結婚」だ。
しかも、今となっては経済界で知らぬ人間はいない、っていうほどの、ビッグイベントになっている。
今さら、頓挫させるわけにはいかないのだ。
だから……聞きたくても、訊けない。
——将吾さんはわかばちゃんのことを、どう思っているの?
゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜
そうこうしているうちに、タクシーは将吾さんの家の前に着いた。Su◯caで支払いを済ませて、仕方なく降りて門の中へ入って行く。
セミイブニングドレスの上に、アクアスキ◯ータムのファーのついたカシミアのロングコートを羽織っているが、二月の夜風は身を切るように冷たい。
わたしは出迎えを避けるために、ハウスキーパーの静枝さんが気づかないほどひっそりと玄関に入り、そのまま自分の部屋へ向かった。
——とりあえず、いったん自分の部屋に入って落ち着こう。
今のわたしの気持ちとは裏腹な……ゴージャスなドレスやアクセサリーやピンヒールはさっさと脱ぎ捨てて……熱いシャワーでも浴びて……今夜は早く眠りにつこう。
——自分のベッドで。ひとりだけで。
そう思って、わたしは自分の部屋のドアを開けた。
最初は、だれもいない部屋なのに、どうして灯りが点いてるのだろう?と思った。
そのうち、向こうの方で、もぞもぞする人影が見えた。
ベッドの上だ。
——将吾さんと、わかばちゃんだった。
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