【完】こじらせ女子は乙女ゲームの中で人知れず感じてきた生きづらさから解き放たれる

国府知里

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#46、 ブランシュとイルマラ

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「ラリッサ、メローナ、部屋に戻ったらすぐブランシュお兄様に会いたいと先振れを出してちょうだい」
「承知いたしました」

 門から城へ戻るなり、奈々江はにわかに薄暗い廊下に目を凝らした。
 そこに立っていたのは、なにを隠そうブランシュ本人だった。

「ナナエ……」
「お兄様……!? こんなところにいたのですか!? 
 すぐ側にいたのに、どうしてライスになにも声をかけて下さらなかったんですか?」
「ナナエ、声が高い。こっちへ」

 城の裏門には、目の届かないようなところに下働きの者も多い。
 人の目と耳を気にしたブランシュに連れられて城の庭園にやってきた。
 従者さえも人払いをさせると、ブランシュは、はあと大きなため息をついた。

「俺はどうしたらいいのだ……」
「お兄様……」

 ブランシュは重い荷物を肩に背負っているかのように花壇の石積みに腰を掛けた。
 両の手で顔を覆い、疲れたように背中を丸くしている。

「どうしてこんなことになったのだ……。
 俺には理解できない、ライスのことが全く分からなくなってしまった」
「お兄様、ライスはなにも変わってはいませんわ」

 ブランシュがぱっと顔を上げて、答えを求めるように奈々江を見上げる。

「変わっていないというのなら、ライスはずっと俺に嘘をついていたのか?
 俺だけでなく、父上や母上、皆のものをだまし続けていたのか?
 これまでライスは全てまやかしだというのか?」
「落ち着いて下さい、お兄様。
 すべてが嘘だったのではありません。
 言えない部分はあっても、それ以外は紛れもなくお兄様とライスは信頼の厚い兄弟同士ですわ。
 でも、こんなに悩んでいたのなら、どうして相談して下さらなかったのですか?」

 ブランシュが思いもよらなかったというように目を見開いた。

「そ、それは……、俺は長男だし、兄弟会のリーダーでもあり、皆を引っ張っていかなければならない立場なのであって……。
 すまない、考えてもみなかった……」
(良くも悪くも、指導的立場という自負がそうさせたのね。それはわからなくもないけれど)

 奈々江はそっとブランシュの肩に手をやった。
 ブランシュはまるで救いを求めるかのようにその手に手を重ねる。
 心乱れてよほど頼りない気持ちでいたのだろう。

「ブランシュお兄様、ひとりでなにもかも背負うことはありませんわ。
 確かにわたしでは頼りないかもしれませんが、お兄様とライスのために力になりたいと思っています。
 こんなときのための家族であり、兄弟ではありませんか」
「そうだな……。ありがとう、ナナエ。
 お前が一番害を被ったというのに、お前がこの状況で一番冷静だな。
 俺も父上もどうしていいのかわからず、母上はただ泣くばかり。
 さきほどライスに保護の魔法陣を授けてくれたのを見ていたよ。
 あれは、俺や父上が気がつかなければならないことだった。
 ロカマディオール修道院は戒律に厳しいことで知られている。
 父上は鍛え直せばライスは元に戻るのではないかと信じているのだ。
 きっと厳しい指導を受けるに決まっている。
 俺もそう言われて、父上の言う通りかもしれないと思い……。
 ロカマディオール修道院へ送ることに反対しなかったのだ。
 しかも、ライスは自ら回復魔法ですら使ってはならないと戒めの魔法アイテムを授けられている。
 あの厳粛な修道院では、些細な怪我や風邪をひいただけでも、粗末な凍えるような狭い部屋で一カ月寝込めば命取りになるという話だ」
「え、そんなに厳しいところなのですか?」
「険しい山岳地帯に建てられた霊験あらたかな修道院だからな。
 そうだ、よく考えてみたらあのような軽装では今年の冬を越せるわけがない。
 冬用の衣服に靴下、手袋、それに毛布。
 なにも持たせずに行かせてしまった。
 いつもなら母上が気がつくのに、母上も気が動転しているのだ」

 奈々江はブランシュを観察しながら考える。

(もともと"恋プレ"にはBL要素がない。
 だから、ブランシュたちがうまく対処ができないのは当然かもしれないわ。
 わたしの記憶が持ち込んだ要素なのだから、わたしが解決へ導かないといけないんだわ。
 この事態が治まらなきゃ、乙女ゲームに戻る気にすらなれないよ)

「わかったわ、お兄様。ライスに会いに一緒に行きましょう。
 冬越しに必要なものを持って。
 でも、鍛えたからといってライスの性質が思った通りに矯正されるという希望を捨てたほうが良いと思います。
 それはライスを苦しめるだけですし、矯正するほうも骨折り損のくたびれ儲けですわ」
「し、しかし……」
「なにをためらうの? なにもしなかったら、ライスは風邪をこじらせただけで死んでしまうかもしれないんでしょ?」
「い、いやそれは……」
「心配なことがあるなら話して、お兄様」

 ブランシュは瞳を揺らす。
 二、三度唇を開いては閉じた後、口にするのもはばかれるというように漏らした。

「ど、どんな顔をして会ったらいいのか……。
 俺は、ライスの気持ちには、応えられない……」

 ライスの思い人が自分だったということに、いまだ動揺しているのだ。
 奈々江が肩の手にぐっと力を込めると、ブランシュがはっとして、顔を上げる。

「お兄様、それは当然ですわ。でも、それでいいのです」
「え……」
「男女の恋であっても、必ずしも相手に思いが通じるとは限りません。
 それでも人は自分の気持ちを素直に相手に伝え、受け止めてもらえたら、次に進めるのです。
 ライスは今まで自分の気持ちを押し隠して来ました。
 それはとても辛くて苦しいことだったと思います。
 ですから、ブランシュお兄様が今心に抱えている思いも、胸に秘めている間は心をかき乱し続けます。それを、素直に相手に伝えなければ」

 ブランシュはゆっくりと含み取るように考え始める。
 しばらくすると、ひとりでに答えを出した。

「そうだ、その通りだ。
 俺はブランシュの気持ちには応えられない。
 でも、ブランシュは俺にとって今もこれからも、大切な弟だ」
「それをそのままライスに伝えたらいいと思います」
「うむ」

 ようやくブランシュの顔に光が戻る。

(もともと暑苦しいほど兄弟想いのブランシュが、この程度のことで折れるわけがないのよ)

 どこか自分のことのようにブランシュを思った。
 そのとき、庭の先からイルマラがやってくるのが見えた。
 イルマラはすぐさま白い扇子で口元を隠し、じっとこちらを観察している。

「ブランシュお兄様、ナナエさん。ひょっとして例の秘密の相談事かしら。
 わたくしをのけ者にするなんていけませんわ」
「イルマラさん、いえ、これは」
「ナナエさんたら、あんまりですわ。
 わたくしとの約束がありながら、罪人にあのようなことを申し出させるなんて。
 金銭的な援助なら、わたしく骨身を惜しみませんことよ」
「えと、それは」

 突如、イルマラがナナエの脇に立ち、ぐっと腕を引き寄せた。

(えっ、なに!?)

 イルマラが長いまつ毛をぱたぱたさせて、じいっと見つめてくる。
 奈々江はようやく気がついて、素早くこめかみを叩いた。

(オレンジのゲージが目いっぱいになってる! 
 そうだった、今は太陽のエレスチャル効果が百パーセントなんだ……!)

 イルマラが陣取ったナナエの横を誰にも渡さないとばかりに胸を張る。

「わたくしとナナエさんは兄弟会の中でも唯一の姉妹同士。
 なんでも一番にわたくしに話してくれなくてはだめよ。
 あんな罪人なんかと一体何を相談なさっているというの?
 さあ、わたくしにも話してくださいな」
「えっ、いや~……」
(話すもなにも、あれは口から出まかせで、単にライスと会うための口実づくりなんだけど……)

 頭を巡らせていると、ブランシュまでもが思い出したかのように加勢してきた。

「そうだ、それに関してはイルマラのいう通りだ。
 いつの間にそのような話をライスとしていたのだ?
 あの騒ぎの間に、お前とライスにそのような時間があったのか?」
「えっ、えと~……」
(どうしよう、なにも思いつかないよ……)

 答えあぐねていると、イルマラが今度は嘘泣きのような声を上げ始めた。

「うっ……、ナナエさんたら、話してくれないのね。ひどいわ……。
 わたくしは本当にナナエさんのことを姉妹と思っているのに。
 これも、お母様とクレア様の仲が悪いせいね。
 いっそのこと、ナナエさんが本当のわたしの姉妹だったらよかったのに……」
「……あー、えと、その……」
(太陽のエレスチャルのせいで、イルマラが親友モードになってる……。
 ちょっとびっくりしちゃったけど、今ならひとまずなんでも聞いてもらえそうだね……)

 奈々江はそっとイルマラの腕に手を重ねた。

「イルマラさん、その、今はまだ話せないけれど、もう少ししたらイルマラさんにも聞いてほしいと思っていますの。
 もちろん、ブランシュお兄様にも。
 それまで、少し時間をいただけないかしら」
「まあ……。そういうことならわかりましたわ。
 でも、ブランシュお兄様よりも先にわたくしに話して下さいな。
 わたくしたちは姉妹なんですもの」
「そ、そうですね、わかりましたわ。先にイルマラさんにお話しします」

 イルマラがさらに強くぎゅっと腕を引き締めたので、奈々江は苦笑いを浮かべてうなづいた。
 ついでに、奈々江は太陽のエレスチャル効果頼みで付け加えた。

「イルマラさん、できればライスのことは罪人と呼ばず、今まで通りライスと呼んでくださいませんか」
「え、どうして……?」
「例え修道院送りになっても、王籍から外れても、ライスはわたしたちのお兄様に変わりありませんわ」
「でも、王籍から外されたんですのよ。
 罪を犯した者が今も王家のものから兄という扱いを受け、関わりを持っていると知られたら、それは王家の威信にかかわりますわ」
「でしたら、内々の時だけでもいいのです。
 ライスは間違いを犯しましたが、心に深い孤独を抱えていて、とても辛かったのです。
 きっと今後ライスは世間からの厳しい風当たりにさらされます。
 そんなとき、少しでもわたしたち兄弟が寄り添えたら助けになるとは思いませんか?」
「ナナエさん、あなた寛容すぎますわ。ライスは、だって……」

 イルマラはちらりとブランシュを見て、いったん言葉を探した。
 強張った眉間と歪んだ口元に、その感情がにじんでいる。

「とても不自然ですわ。わたくしには気味が悪くて仕方ありませんの。お母様もそうおっしゃっていましたわ」
「そうですね」
「そうよね、ナナエさんもそう思うでしょう?」
「でも、それでもいいではありませんか」
「えっ……?」
「正直、わたしもにも同性の方に思いを寄せてしまうという感覚は理解できませんわ。
 その苦しみも、当人と同じように理解するのは無理だと思っています。
 自分とは違う、世間とは違うということは、内外に大きな違和感を生みます。
 そうした中で誰もが、気味が悪い、わからない、怖い、どうしたらいいのかわからない、そう思うのは普通のことだと思います。
 未知のものが不安で恐ろしいというのは、生物の本能ですから」
「本能……。そうよね、確かにわからないからなんだか妙に怖いのよ」
「ですから、怖いなら無理に近寄る必要はありません。
 今はただ、無理をしないで安全な距離をとっておけばいいのです。
 そういう人もいるのね、わたしにはわからないけれど、あなたってそういう人なのね、そこにいてもいいわよ、と見守れたらいいと思うのです」
「まあ……。それなら我慢できると思うわ……」
「ええ。無理に近寄り過ぎると、恐怖から相手を無駄に傷つけてしまいます。
 お互いに傷つけあわない距離で、そこにいることを許し合うだけでいいのです。
 そういう相手が兄弟にいたとしても、イルマラさんの安全にはなにも影響はないはずですわ」

 しばらく黙っていた後、イルマラの顔から強ばりが消えていった。
 それもそうかというように、いつの間にかけろりとしている。

「いわれてみれば、そうかもしれないですわね。
 そもそもこれ以上関わることもないでしょうし、ライスがどうだろうと、わたくしには何の影響もありませんわ。
 そうね、わからないからなんだか不安になるんですわ。
 怖がって、確かめようとしないからですわ。
 でも、ナナエさんのいうように、ライスはそういう人だから、距離を取っておけばいいとわかっていればそれでいいのね。
 その通りだと思うわ。わたくし、もうなにも怖くないわ。
 ライスがなんであろうと、このわたくしを脅かす相手になどなりませんわ」

 いつの間にか、罪人呼びがライス呼びになっている。
 イルマラはちろっと上目遣いを見せた。

「でも、正直ナナエさんのように会いに行くのは絶対無理ですわ。
 会って話をしたら、きっと酷い言葉を投げつけてしまう気がしますの」
「素直な気持ちを話してくれてありがとうございます。
 それでいいと思います。それが今は適切な距離感ですわ」

 急にイルマラがぎゅっと腕にしがみついてきた。

「あなたは本当に寛大なのね。もしも、もしもだけど……」

 ナナエが見ると、イルマラは真っ直ぐに見つめ返してきた。

「わたくしが万が一なにかの間違いで罪を犯してしまったとしても、ナナエさんだけはわたしを姉妹と呼んで下さるのかしら?」

 一瞬驚いてしまった。
 まさか、イルマラからそんな言葉を聞くとは夢にも思わなかった。
 ユーディリアが野心家だというせいで、イルマラも不安を身に受けたことがあるのだろうか。
 それとも、ただの思いつきでいっているのだろうか。
 どちらにせよ、ナナエの返事は決まっていた。

「もちろんですわ」

 するとイルマラは天使のような微笑みを浮かべ、ちゅっと奈々江の頬にキスをした。
 思わぬ口づけに、奈々江は固まってしまった。
 彼氏いない歴を毎年更新し続けている奈々江には無理からぬことだった。
 海外生活に慣れた友人もいなければ、女友達同士のふざけ合いでさえしたことない。
 親からでさえ、大人になってからのほっぺにキスを受けていない。
 こんな不意打ちの美少女からのキスに免疫があるはずもなかった。

「約束ですわ。わたくしも、ナナエさんが困っていたらなにがあっても助けて差し上げますわ」
「こ、心強いですわ……」

 なんとかそう答えた奈々江は、太陽のエレスチャルの効果を心中で再確認した。
 アイテムのせいで久々に居心地の悪さを経験する羽目になった。
 いや、慣れれば悪い気はしなくなるのかもしれないが、それでも奈々江にはハードルがまだ充分に高い。

(わかっていたけど、このアイテムさ、最強すぎる……)

 やはり、時と場合によっては、太陽のエレスチャル効果を制限したほうがいいだろう。
 セレンディアスにまた薬をもらいに行こうと頭の片隅にメモをした。
 イルマラが去った後、ブランシュと早速ロカマディオール修道院へ行く段取りを決めた。

「馬車で行けば最寄りの町まで一カ月、そこからふたつの峠を越えて、ロカマ山の山頂までたどりつくの二週間かかる。
 俺たちはゴールドファルコンの羽根を使って行くとしよう」
「ずいぶんな僻地なんですね。たどり着くだけで体力が削り取られてしまいそうですわ。
 ともかく、それまでに持っていく荷物を準備すればいいのですね。
 マイラ様にも持って行ってあげたいものを聞いてみたほうがいいですわね」
「ああ、だが、父上の耳には入らないように注意してくれ」

 ブランシュが慎重そうに言う。

「俺以上に混乱しているのが、ライスを修道院に送ったことで少しは落ち着いたはずだ。
 それなのに、こうした動きを耳に入れて、再び心を乱したくない」
「でも、いずれは陛下にも向き合っていただく必要があると思いますわ。
 ですが、それは今でなくてもいいですわね。
 それはそうと高価な魔法アイテムや持っていくものにかかる費用については大丈夫でしょうか?
 どうあっても、陛下のお耳に入るのでは」
「俺と母上の資産から出すから、父上の耳に入ることはない」
「金銭面では全くお役に立てなくて申し訳ありません……。
 未だに魔法陣を書くことくらいしかわたしにできることが思い当たらず……。
 わたしの魔法で少しでも収入を得られるような特技のひとつでもできるようになれば、お母様の気苦労も少しは減らせるんですけれど……」
「兄弟会での活動費のことなら気にするな。
 こういう状況になった以上、俺もイルマラと同じだ。
 イルマラが急にあそこまでお前に傾倒し出したのには驚いたがな。
 あれは、太陽のエレスチャルの効果だろう?」
「あ……、やっぱりばれていましたか?
 すみません、時と場合によっては、この力を頼ることにしました」
「ああ、構わない。
 今はその力が役に立つタイミングでもあると思う」
「ご理解いただけて幸いですわ」

 ブランシュがふっと笑った。

「こういってはなんだが」

 奈々江が見ると、ブランシュはためらいをにじませながら口を開いた。

「お前が国に残ってくれてよかったよ。
 俺や父上や母上だけではきっとライスとの縁が途絶えてしまったに違いない」

 はっとして、奈々江はブランシュの表情を注視した。

(……そう、つまり、ブランシュは立場を変えていないということね。
 わたしの婚約者はライスではなくなったけれど、その他の親族の誰かということは変わらない。
 ブランシュは今もわたしのグランディア王国行きに賛成はしていないということ。
 ……でも、忘れていないかしら?
 わたしには太陽のエレスチャルがある。
 困難はあるかもしれないけれど、どうにかしてわたしの思うままに人を動かせるはず)

 だが、今ここでそれを行使するのは賢明とはいえない。
 そもそも、この件が片付かない限り、落ち着いて乙女ゲームに戻る気分になれないのだ。

「落ち着いたら、ナナエの婚約者については改めて父上とよく相談してみる。
 今度はクレア様の納得のいく相手を選ぶと約束する」

 奈々江は何も答えず、下を向いて見せた。
 ブランシュは唐突に奈々江の手を取る。

「本当だ。全ての願いをかなえてやることはできないが、お前には幸せになってほしい。
 そして、できることなら、これからもそばで俺を支えてほしい」

 ちょっとした驚きだ。
 奈々江にとってブランシュは頼れる兄という存在ではあったが、ブランシュから何かを頼られるというのはこれが初めてだ。
 今度のことはよほど堪えたのだろう。
 一息ついてから、兄を見上げた。

「今はなにも考えられませんわ。
 ライスとブランシュお兄様がまた元のような兄弟の絆を確かめ合えるまでは、わたしはなにも頭に入ってきませんの。
 今のわたしの望みはそれだけですわ」
「ナナエ……」
「さあ、善は急げですわ。マイラ様のところへお伺いしましょう」
「うむ」


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