最弱職テイマーに転生したけど、規格外なのはお約束だよね?

ノデミチ

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帝国とベルンの戦争

59.

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「で、俺様を引っ張り出すと?」
広域極大爆裂魔法エグゾフレイムを数発撃てる魔法使いでもあるのだぞ、件のテイマーは。それに対抗しうる魔法使いとなると、卿しか思い付かないのだ、バレンホイム子爵」

 ベルン王国次期宮廷魔導師と評判の高い魔法使い、マーカス=バレンホイム子爵。実力的には、現宮廷魔導師たるブレスト老師を超えているとの事。本来男爵家であったバレンホイム家を、近衛魔導団での働きと、その類い稀なる魔法で陞爵させた実力者。

 礼儀作法に難有り。

 誰に聞いても、まずその評価なのは会ってみると押して知るべしの感がある。元帥相手にも『俺様』で通す辺り筋金入りだな。

「テイマー相手と聞いて、少し気が抜けていたがね。広域極大爆裂魔法エグゾフレイムか。面白い勝負になりそうだな」

 そう言って出て行った。
 まぁ、魔法の撃ち合いにならずとも、膠着状態になってくれればしめたものだ。

 兎に角、あの帝国の切札ジョーカーを何とかせねば。彼1人に、悉く手を潰されているのだから。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「これでまた、俺様の名が上がる訳だ」

 ヴァイセルバーグへの侵攻は是非にとも成し遂げたい。あのゼクト元帥が俺様に泣き付いて来やがった。

 クッククク。

「そうね。名を上げ、英雄となって凱旋。素晴らしい未来が待っているのね」

 な、何だ?

 黒髪の…、闇魔導師?
 何を?何だ?この、この湧き上がる力は!

 く、ククク!英雄だ!凱旋だぁ‼︎
 素晴らしい未来!俺様に相応しい未来が待っているのだぁ‼︎

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 リザン山脈へかかる山道の上空。
 グリフォングランに跨り偵察行動をしていたら、山道を進むベルン王国の騎士団発見。

 って、先日撤収したんじゃなかったのかよ。

 騎団の旗が違う?
 あれは第4騎団、つまりは…確か…、そうそう、ベルン王国軍総司令のゼクト元帥直属の一撃離脱を旨とする神速装甲騎団。とすると、なるほど。後方に歩兵大隊か。コッチが占領部隊な訳だ。

 まだヴァイセルバーグ占領を諦めてないと?
 この5日程、何の動きもなかったのに。

 懐から連絡水晶球を出して。
「聞こえますか?皇太子殿下にお伝えください」

 それと…、この魔力は?かなり高位の魔法使いがいる?うん、成る程。

 魔力の隠蔽もしないのは、余程自信があるのか、そもそも隠蔽を知らないのか?まぁ、あんなのしか居ない訳ね。
 どうやら、「地上の星」は変わらず傭兵は拒否したんだろう。大賢者サターンに来られると厄介だったけど、彼以外の魔法使いならば、そうそう苦労はしないと思える。

 あの女神のお陰で、魔法使いレベルカンスト状態になった事になっているから。しかも+α付き。

 目立ちたくないけど、これも仕事のウチ。
 今のオレは、「帝国皇太子切札ジョーカー」なのだから。

『ロディ、ヴァイセルバーグへの侵攻は絶対に阻止。実力行使も必要ならば許可、やり方は任せます』

 おっと。これは皇女殿下リスティアさん
 やり方は任せます、か。

「グラン、やるよ。ちょい前にファイアブレス」

 グルルルルルゥ!

 ボォオオオオオー!

 少し降下しつつ、グランのファイアブレスを騎士団の前に。

「敵襲!」

 うん。騒ぎ出した。列が乱れて…、そう、直ぐには止まれないし、急に止まると後ろは大混乱。

「『伝声スピーカー』ここ迄だ!引き返してもらうよ!」
「させねぇ!グリフォンに乗ってるって事は、お前が噂のテイマー野郎か‼︎」

 上がってフライトきたよ?
 割と単純だな。魔法使いって、もっと理知的だと思うんだけどな。まだ若いな、ってオレが言うことじゃ無いよね。コチトラまだガキ呼ばわりされても否定出来ない身だ。

「さぁ、俺様の手柄に成りやがれ!」

 火球ファイアボール
「グラン、上」
 飛んでる相手にする攻撃じゃないよね。コッチが3次元で動けるって分かってないな。

「ちっ、チョコマカと。だが、コイツでどうだ!」

 そんなの、詠唱じっと待ってるって思うの?
電撃ジオン
 パリッ。
「ぐっ、て、テメェ‼︎」
「魔法使いとサシで殺り合った事ないのかよ、三下ドシロート!」
「ブチ殺してやらぁ‼︎」

 火球ファイアボール連射。
 質より量?ダーメだ、コイツ。

「グラン、アイツら嘗めつつジグザグ」

 ドン、ドガガン、ドガン、ドドン。

 オレ達がベルン師団の列と重なろうと気にしない?いや、その頭無いんだ。

「ギャアアア、ば、馬鹿な」
「こ、コッチに来るなぁ」

「うぜぇ!消えクサレ‼︎」

 広域爆炎魔法メガフレア
 味方毎見境無しかよ?ったく。

 ベルン師団が巻き添え食っても、『自業自得だ、ザマァ』って立場なんだけどなぁ、オレ。
 とは言え、これは夢見が悪い。

「リフレクトミラー!」

 魔力の鏡を作って!
 コイツは如何なる魔法攻撃をも、単純に反射出来るお袋メーヴオリジナル。

「ぐわぁ?な、何だ、それはぁ‼︎」

 おー、避けた、避けた。
 必死で避けたが、ちょい掠ったか?右手脚焦げ付いてるな、アレ。

 うん、落ちた。

「くっ、魔女のオリジナルか…。何でそんなモン知ってる?どうやってオリジナル魔法を聞き出した!」

「逆に聞くよ。何故、1人息子に秘匿するって思う訳?」

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 我々神速の装甲騎団、第4騎団に与えられた命令は可及的速やかにヴァイセルバーグに侵攻し、此れを占領せしむ事。
 件のテイマーは王国きっての実力者バレンホイム子爵が相対するので、騎団は憂慮無く侵攻に専念されたし。

 そう聞かされた私~第4騎団団長ヴォルフ=サバリッシュ子爵は、今度こそ王国の威信をかけて、とゼクト元帥に言われ意気揚々と出陣したのに。

 礼儀態度は兎も角、実力は確かに王国最強。その実績は疑うべくもなかったと言うのに。

 我が目が信じられない。

 王国最強の魔導師ではなかったのか?
 まるで大人と子供だ。

 グリフォンの強襲を受けて、騎団はパニックになった。流石に上空からランクAの魔物の攻撃等そうそうお目にかかるものではない。
 私でさえ、冷静さを失いかけた。

 だが、バレンホイム子爵が飛び上がった時、あのテイマーをも抑えられると信じたのだ…。

「ギャアアア、ば、馬鹿な!」
「こ、コッチに来るなぁ」

 馬鹿め。我等の存在すら忘れ去ったのか?
 揶揄う様に避けるテイマーとグリフォンに、ムキになって火球を飛ばすとは?

 な、あんな魔法を?我々に向けて撃つ?
 馬鹿な?彼奴の所為で全滅する?

 こ、これは?
 何だ?この魔法は?

 まさか?魔女が創り上げたオリジナル魔法?
 そんなモノまで使えるのか?
 
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