裏ルート攻略後、悪役聖女は絶望したようです。

濃姫

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悪役聖女の末路

真珠は溶けて…

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 あれからオルカは毎晩のように訪れた。仕事を長引かせて策を講じようともお付きの神官はいつの間にか下がり何てことのないかのようにオルカが現れる。
 この巣窟では全てが無意味だと分かるまで一日ともたなかった。

 
 「っ…、はっ…。あ、…っふぁ?!」

 つい先日までは清らかな乙女だったと言ってもこの光景を見れば誰も信じないだろう。最初は抵抗していたが最終的に結果は変わらないせいでやる気も失せてしまった。

 大きくて骨格のある手から触れられた所が熱い。焼けるような熱さに涙が出て、目が痛くなる。
 何度目かの果てを尽きると脱力しぶらん、となる身体。それでも獣は満足することなく私の身体を引き寄せ離さない。

 ただただ苦痛の時間。リミットを越えた快楽を強制的に送られ続ける地獄だ。
 身体が生存本能で警告を鳴らす時もある。脳が直に電気信号を送られてくる感覚。頭がバカになったみたいだ。

 
 「…っぁ、ぅ…、ぁ……~ーーッ゛?!!!」
 喘ぎ漏れた嬌声が喉を枯らして、目の奥から意識が飛び出そうになる。


 「シルティナ…、ずっと離さない。愛してる」
 三文(さんもん)にも鳴らない愛の言葉が空っぽになった私の心に押し入る。

 『』、そんな安っぽい言葉で私の心を踏み荒らして、私の身体を暴いて、気持ちが悪い。欲望のままに好き勝手犯す獣が、そんな言葉で私を貶めるな。


 「愛してる、シルティナ。…ずっと、ずっと一緒にいよう」

 興奮して常時完璧なコントロールを見せる膨大な神力が空間を揺らいでいる。
 密度の高い神力は空間を歪めるまでに至るのか、なんてくだらないことに気づいては強過ぎる刺激に脳が揺れる。

 「いやぁ゛あ゛ぁあ゛っ…つ……!! 放してッ! はなッ、イ、ッギ?!!」

 何度目かも分からぬ激しい律動が繰り返され、これ以上快楽を味わえば死にすら直結すると悟った私の身体は限界まで力を振り切って抵抗する。

「ぃ゛つ、やあ…。い゛、ぐっ! イ゛ッ?!」

 が、快感の圧倒的暴力から逃げ出そうと身をよじっても、その体格差から余計に体躯が押し潰されるだけだった。声を上げて快感を逃しても、その間に新たな刺激が加わって意味がない。

 口の端からはみっともなく涎を垂れ流し、全身が空気の振動を敏感に感じとって辛い。口を少しでも開けばまるで小鳥に餌をやるように舌がねじ込まれる。

 秘所からは粘膜が絶え間なく生産され、お互いの汗が濃密に絡み合っていた。私がイき果ててもその律動は止まらない。揺れる寝台に、不気味なほど世界は私達二人の声しかしなかった。

 生温かい液が私を満たして、つい先ほどまで張りつめた腹は少し世幅を持った。それでも甘い快感の並みに私は休む暇なく、体勢を変えられてうつ伏せの状態になる。

 「ぅそ…、っ。いや、もうぃやあ!」

 意識が浮遊した状態から我に返り、恐怖で青ざめたままなんとか抜け出そうとジタバタ暴れるのもつかの間、ガシッと細い腰を両手で鷲掴みにされた。そして私達の間にできた少しの隙間も一瞬にして詰められ、奥の奥まで犯された。

 「えあっ…、ぁつ。ォ、ルカっ、オルカぁ…つ」

 もう止めてほしい。身体が与えられる快感に追いつかない。そう願って叫んだ名前は、余計な熱を与えてしまい重なる手からそれを伝えられた。

 体力に差があり過ぎるせいで後半になるに連れて私は抵抗もできない肉人形となる。これが本当に愛し合う者同士の行為と言えようか。
 いや、は違う。これはただの、性欲処理に等しい。

 嬌声も弱まり生理的な涙が頬を伝う。暴力的なまでの快感を終わりなく与えるこの男に、それを悦ぶ私の身体。どちらも汚れきっている。

 いっそ手酷く犯せばいいものを、静止の声は聞かぬくせにその手からは愛情ばかり伝うものだからよっぽど質が悪い。


 とぷ…っ、
 もう一度吐き出された精が今度こそ腹を満たす。

 「っ……ぁ、……ふ」
 膨らんだ腹からゆっくりと引き抜かれたからも貪欲な身体は快感を見出だした。

 つい最近まで初だった身体は、ここ数日の度重なる行為によって作り替えられてしまったのだ。

 それは一種の防衛本能なのかもしれない。躾を重ねるごとに痛みに耐性ができたように、身体は許容以上の快感を受け止められる器となっただけ…。

 またいつものように行為後のケアを済ませたオルカが最後におでこにキスをして部屋を去る。いくら神殿内の周知の事実としても対外的な名目でオルカが朝まで私の部屋にいることはない。

 一人取り残された部屋がやけに心細いと言えばなんて馬鹿なことかと一笑されるだろう。
 それでも、私はこの無駄に広い部屋に寂しさを感じた。私を閉じ込める鳥籠のようで、冷たく太陽を遮るこの部屋に…。














 ######

 ごぽっ、ごぽぽ…
 「ぉぇ゛っ…ツ?! ん゛、んん゛んぅうん~~~ッ゛!!!」 

 身体が繋がった状態で顔を上に向けさせられ、途切れることのない水が喉を通る。
 口を閉じようにもオルカの手が強制的に開かせ、結果逆流してきた水を吐きながら新たな水を入れることになる最悪な循環が誕生した。

 
 「おごっ…、ぐぇ…ッ。ぉぇぇ゛えxぁ?!!」
 「あぁ…、駄目だよシルティナ。ちゃんと全部飲み干さなきゃ」
 私が溢した分だけ水量が上がる。魔法によって作り出された水だから、オルカの気分次第で苦しさが段違いに変わった。

 
 「ゴホッ、げほげほッ!!! ぅ゛つ、おぇぇ゛え…っ」
 「言った傍から…、行儀が悪いなぁ」

 上手くできなかった罰だとでも言いたげに軽く右手の指二本が手折られる。悲鳴を上げればさらに喉は詰まり、上げねば痛みに悶え苦しむ。

 一体どうしたらこんな非人道的な所業を思いつけるのか、もはや身体を合わせる仲だというのに関係は相変わらず一方的だ。

 それにしてもまだ数分しか経っていないにも関わらず早くも胃が限界を訴えかけている。それに食道管も常流と逆流で機能が麻痺してるみたいだし、気絶しようにもこのシステムじゃ許してくれない。

 以前ラクロスが悪ふざけで手配した食事に毒を入れたときもそうだけど、このままじゃ水に対しても拒絶反応が出てしまいそうだ。あのときは死なない程度に内蔵を溶かせる毒だったから余計食事が怖くなったんだっけ。

 もとより神殿からの食事は人間が生きる上での最低限度を下回り、頼れる先は彼らだけ。それが教皇閣下に報告がいっているのかは定かではないが、どうせ吐いてしまうのだからあまり意味はない。

 が終わった後に与えられるものこそ本物の食事と言えるのだ。人間が栄養を接種する上で欠かせない、【食事(しょくじ)】。

 
 「ッひゅー…、ヒュー……。ぅ、っ…ごほghッ゙」
 体感では永遠に、実際には数分にわたって行われた水攻めから開放された身体は至るところから体液を溢れさせてベッドに倒れ伏した。

 鼻に水が入ったのかツンとして痛い。それに気が緩むとすぐに胃から吐き気が込み上げて気持ち悪い。吐く力すらも残っていないのだから、後味の悪さだけが私を襲う。

 
 「シルティナ。大丈夫?」
 「…ハー……、はーっ…n。ぉ゛ぇE、gh」

 私の背中をさすって吐き気を促しているつもりだろうか。オルカの存在自体に吐き気が増して存分に吐き出せたのは好都合だったが、私の呼吸が一段落するとすぐにまた行為が始められた。

 吐き切って力の残っていない私の身体を、好き放題に貪るオルカ。この男は今本当にを抱いている気だろうか。

 腕はだらんと重力に従って落ちて、口を閉じることもできずに涎がが溢れるこの顔を見てなお、生きた人間を抱いているのだろうか。

 結局深夜の0時が過ぎても終わらず、私の身体はボロボロになった状態でベッドに朽ち果てられた。ようやく満足したのか私の限界を察してかオルカはゆっくりと私のナカから引き抜く。

 まともな意識状態じゃない私は目線だけを動かしてじっと入浴を済ませ戻ってきたオルカを見ていた。その視線すらも合わせて愛しい者を見るかのように頬を赤らめて微笑むオルカ。

 どこまでも対象的な二人だ。一人は憎しみすら通り過ぎた空の瞳を、一人は愛した者を抱いた光悦の瞳を向けて相反した。

 私と貴方を繋ぐのはいつだって『苦しみ』だった。支配と隷属で繋がれたこの関係は、互いが廃れ果てるまで続くのだろう。

 のそっと身体を無理してでも引き起こす。そして私を支えようとしたオルカのしなやかな首に、そっと両手を添えたのだ。
 それでもまだ完全には掴めないのだから、私の手が小さいのかオルカの首が太いのか。

 力を入れているつもりだけど、神経がまともに働いていないせいで子供の悪戯程度の力しか込められない。私の突然の奇行にも嘲笑っていられるオルカとは真反対に、私が追い詰められていた。


 「ぁなたを殺せば…、自由になれる……?」

 かすれた声で振り絞って出した言葉。入浴を済ませバスローブを着たオルカとは違い、私は裸体のまま醜態を晒している。
 まるで娼婦が貴族の男に縋るみたいに、貧民街では珍しくもない光景を神殿の本拠地で行う罰当たりな二人だ。

 分かってる。私にオルカは殺せない。殺したいけど、どうしても殺せない。それは心情的なものじゃない。ただどうしても覆すことのできない単純明快な力の差だ。

 神殿に閉じ込められた【聖女】と世界中を往来してきた【大神官】。影響力は私の方が持っているはずなのに、実質的なものでは比較にすらならない。
 力も、権力も、名声も、影響力も、どうやっても勝てる未来が浮かばない。それこそが既に勝敗がついた証拠だった。

 それにオルカを殺したとして、その後私はどうすればいい? 私には後始末を任せるだけの人間はいないし、少なくとも【聖女】としては生きられない。
 そしたらもう二度と死ぬことはできない。【運命】からは外れてしまうから…。

 こんな時でもオルカの瞳には熱を映している。まるで殺さんとすることを愛おしむように、この男もまた気が狂っている。

 どれくらいの時間見つめ合ったのか、私はするりとオルカの首から手を離してしまった。するとオルカは私を横抱きにし浴槽まで連れて行く。

 当然移動の最中も愛の言葉を囁いて、綴って、触れる。ご機嫌な様子に奇怪さを感じつつも、それに抗う気には到底なれずふっと目を閉じた。

 眠くはないが身体中から感じる倦怠感に身を任せて、いつぞの日か訪れた身の凍える雪山に思いを馳せて…。

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