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ガリア王国王宮編
8. 肉パーティー
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謁見翌日、大活躍のオレへのご褒美に何でも好きな物を作ってあげる、と言われたので、肉をお願いした。
だって、ジルは目の前でおあずけになっちゃったし、オレには執事さんがくれたクッキーがある。それに俺も肉は好きだよ。ただし美味しく調理したものね。
そして、肉パーティーが始まるぞってところで、なぜか王子様が伯爵のお屋敷に来た。突然だったから、屋敷中が大騒動になっているのが、ジルとオレの耳には聞こえている。
「このような屋敷においでいただき光栄でございます、殿下」
「突然来て悪いな」
警備とかいろいろ大変なんじゃないかと思ったけど、毒が出される王宮よりも危険なところがあるのか?と言って反対する人を黙らせたらしい。それ反論できないやつ。まあね、即死じゃない限りオレがいるところが一番安全かも。
そしてもう1人、なんでここにって人がいる。
「そなたは治癒術師のカリーナだな」
「はい。お会いできて光栄です、殿下」
あれ?姫、イメージチェンジした?
「レディ、前回の花のようなドレスも素敵でしたが、本日は夜にきらめく星のようで、貴女の美しさが一層際立っていますね」
「そうでしょう。可愛いだとキリくんとキャラが被るから、妖艶に変えたのよ」
突然貴族っぽい言動を始めたご主人に、キュリアンたちがポカンとしているし、王子様やお兄さんはダメな子が頑張っているのを見守るような目で見ている。
一方、姫の妖艶への路線チェンジ発言には、付き添いの貴族から苦笑が送られている。
妖艶かどうかは分からないけど綺麗だよ。前のふわふわなのより、今のシュッとしたほうが似合ってるよ。よっ!女神様!
「まあ、キリくん、踊ってるの?」
「ドレスがよくお似合いで、女神のようだと称えているのです」
「キリくん、ありがとう。あれから私も練習して、少しだけ治癒魔法を飛ばせるようになったのよ」
さすが見た目詐欺の姫。キャラは濃いけど、実はすごく真面目なんだよね。
こっちはなんでお屋敷にいるかと言うと、治癒魔法を飛ばすのが出来るようになった報告と、アドバイスが欲しいということで、謁見の後に訪問の申し入れがあって、どうぞと言ってあったそうだ。そこに王子様が割り込んできちゃったのだ。
姫の筋肉たちは控室でお留守番らしい。謁見の間にもいなかったけど、従者の扱いになるので、こういう所には一緒にいられないそうだ。その代わり謁見の間でも見た貴族が一緒だ。
「長い距離はうまく飛ばないのだけど、見て何か気付くことがあったらアドバイスを貰いたいの」
「カリーナ、殿下の前で魔法は禁止だ」
「構わぬ。治癒魔法に特化していると聞いている」
「恐れ入ります」
王子様も治癒魔法を飛ばすと言うのに興味津々のようで、許可も出たところで、実演タイム。
少し離れたところにブノワが萎れた花を持って立っている。なんで萎れた花?と思ったら、治癒魔法でよみがえるから、治癒魔法の練習に使われるメジャーな方法らしい。知らなかった。
「行きます。回復魔法!」
おお、飛んだ。姫、すごい。前の時は出来なかったのに。初めて見たのか後見の貴族も、ほお、と感心している。
「この距離までは出来るのですが、これ以上離れるとうまくいかなくて」
ブノワが次の萎れた花を受け取って、さらに少し離れる。
次の魔法はブノワに届く前にふわっと霧のようになって消えてしまった。うーん、なんでだろう。
オレが姫より遠いところから、元気になーれ、えいってやったら、ブノワのところまで届いて、花がみずみずしく生き返った。出来るよねえ。
なんでかなとご主人を見たけど、ご主人にも分からないらしいので、もう1人の魔法使いであるリュードを見た。
「固定の魔力が足りないんじゃ……」
「固定ですか?」
おずおずと発言したリュードに姫が聞き返すが、ご主人もオレもピンとこない。固定って何?そんなのオレ使ってないよ?
そんなご主人と揃って首をかしげるオレたちの様子に苦笑しながら、お兄さんが説明してくれた。
「魔法を撃つのに必要なのは、最初に形を作り、次にその形をとどめ、最後に押して移動させる、その3つだと学園で習ったはずだよ、フレデリク」
「……記憶にありません」
「お前は豊富な魔力でゴリ押しだからね。カリーナ、形をとどめる魔力が足りていない。遠くへ飛ばすために押す魔力を上乗せすると、形をとどめる魔力も上乗せしなければ崩れる。魔力を込めた分速くもなるからコントロールが難しくなる。魔法の初歩で皆が躓くところだ」
へえ。普通の魔法では最初に習うことらしいけど、治癒魔法はそもそも飛ばしたりしないから姫は今までやったことがなかった。だから、姫が初歩の初歩で躓いているとは誰も思わなくて、治癒魔法特有の何かがあるのだろうと考えてオレのところに来たらしい。
オレもやってみよう。
形を作って、形ととどめて、そっと押す。あ、落ちた。なるほど。この形をとどめるのと押す力のバランスが必要なのか。
いつも、えいってやってるのは、この過程を全部適当にやってるから、多分魔力の無駄遣いをしてるんだろう。
「この治癒魔法を飛ばす方法は教会に伝えてもいいことか?」
「今まで治癒でやる者がいなかったっだけで、他の魔法では普通のことですから、問題ないでしょう」
「キリはどうやって習得したんだ?」
「襲撃された際に、やってみたら出来たと言っていました」
「飼い主に似るものだな」
うう、王子様にオレもノーコンだと思われた。そんなことないよ。多分ちゃんとコントロール出来るよ。
形を作って、少し強めに形をとどめて、一気に押す。あ、すごい速さでどっか飛んで行った。押しすぎたっぽい。
「キリくん、治癒魔法で穴が開けられそうだね」
「キリ、攻撃だと勘違いされるから、今のはダメだ」
むう、難しい。このままではオレのノーコン疑惑が晴らせない。魔力の節約になるから、出来るように訓練してみよう。
姫、オレも頑張るから、一緒にがんばろうね。
ってことで、頑張ったらお腹がすいたので、肉パーティーだ。
ジルとオレの前にずらっと並んだ肉料理が壮観だ。労働の後はやっぱり肉だね。
「美味しそうに食べるな。ウルフもキリのように舌が肥えているのか?」
「普段は味付けをしていない人の食事と同じものを食べているそうですが、ウルフは肉食ですからね」
呼んだ?ってジルが王子様のほうを見ているけど、肉を咥えたままはやめなさい。
ジルとオレのために、薄味にした肉が用意されているんだけど、いろんな味のソースが用意されている。全部野菜の甘みと旨味だけで、調味料使ってないんだって。
エマさんが俺たちの食べたいものを取り分けてくれるんだけど、あれ食べたいなーって見るだけで分かってくれるエマさん、超優秀。
オレはこの赤色のソースが気に入った。赤いけど辛くなくて甘いんだ。脂身の少ないあっさりの肉につけて食べると、ボーノボーノ。
「キリ様の赤いソースはパプリカですね。焼いてから潰して甘みを凝縮させています。ジル様のほうはトマトソースです」
ジルは同じ赤いソースだけど、トマトソースのちょっぴり酸味があるのが気に入ったらしい。でもさ、口の周りにつけてるとちょっとグロいんだよね。この肉はとってもほかほか新鮮ですって感じになっちゃうから、そこは気を付けたほうがいいと思うんだ。
そんな心配をしていたら、やっぱり王子様も感じちゃったらしい。
「動物を狩って食べたりするのか?」
「ジルは森で育ちましたので、食べ物がなければ狩ってきます。会って最初のときにキリくんのためにウサギを狩ってきたんですが、キリくんはそれを見て震えていました」
「イタチはウルフに狩られる側か」
「野生ですとそうなのかもしれません。ですがジルは最初からキリくんが大好きですね」
リュードが直接王子様と話をしている。無礼講だって言われてもキュリアンとブノワは相変わらず空気になり切ってるけど、動物好きが立場を越えて一体感を作り出すのはどこでも一緒らしい。
リュードはジルを狙った毒を執事さんが特定してくれたことで、王子様と執事さんカッコいいって感じでファンになっている。ブノワはいつもと同じで寡黙だから何考えているのかよく分からないけど、王子様に緊張しているキュリアンの胃が大変なことになりそうだ。
人が食べているのは、肉てんこ盛りではなくて、普通のコース料理だ。姫が来るからってことでもともとコース料理の予定だったところに、王子様が来たので、急遽ちょっとだけ内容がグレードアップされたらしい。ホントは毒見とか必要だけど、オレがいるからってことで今回は全部すっ飛ばされている。
「カリーナ、この国での冒険者の治癒術師の活動はどんなものだ?我が国は現在キリくん以外の治癒術師の冒険者はいないので参考にしたい」
「はい。この国でも冒険者の治癒術師は少なく、治癒魔法に特化しているのは私だけです」
お兄さんが姫に治癒術師の冒険者のことを聞いているけど、王子様も興味深そうにしているので、これは王子様が知りたいことなのかも。
ミリアルも教会が変わったから、今後治癒術師の冒険者が出てくるかもしれないもんね。オレたちもお兄さんに料金設定とかいろいろ聞かれたんだよね。でも貴族の依頼は受けてないから、姫からはそういうところを中心に聞いている。
ときどき王子様も質問しながら、治癒魔法と使役獣に関することを中心に話に花を咲かせて、肉パーティーは和やかに終わり、王子様はお城に帰って行った。多分ホントはお城でのお茶会がこうなる予定だったんだろう。
「突然で緊張しましたね」
「ええ、まさかミリアルの王子殿下がいらっしゃるとは」
「私も聞いていなかったので、先にお知らせできず申し訳ありません」
伯爵と姫のお付きの貴族とお兄さんで話しているけど、貴族でも王族が来ると緊張するらしい。予定になかったから、本当は揃って出迎えないといけない伯爵夫人も出かけちゃっていないし、おもてなしとしてはボロボロだったらしいけど、あの王子様は気にしてなさそう。
3人は治癒術師を抱える貴族のおうち同士で仲良くしようねって話をしているから、まあ結果的にはよかったんだろう。
冒険者のほうは、キュリアンが灰のようになってるけど大丈夫だろうか。
「何食ったか覚えてねえ」
「まさか王子様とお話しできるなんて。私、見染められてミリアルに嫁ぐことになったりするかしら」
「おとぎ話かよ」
姫、なかなか妄想が逞しいね。でも姫はそれくらい強かじゃないとね。
お兄さんからミリアルに来るときは面倒をみるよっていう言葉を貰ってホクホクしながら、姫は帰って行った。
人にとっては怒涛の、治癒術師にとっては実りある、ジルとオレにとっては大満足の、肉パーティーでした。まる。
だって、ジルは目の前でおあずけになっちゃったし、オレには執事さんがくれたクッキーがある。それに俺も肉は好きだよ。ただし美味しく調理したものね。
そして、肉パーティーが始まるぞってところで、なぜか王子様が伯爵のお屋敷に来た。突然だったから、屋敷中が大騒動になっているのが、ジルとオレの耳には聞こえている。
「このような屋敷においでいただき光栄でございます、殿下」
「突然来て悪いな」
警備とかいろいろ大変なんじゃないかと思ったけど、毒が出される王宮よりも危険なところがあるのか?と言って反対する人を黙らせたらしい。それ反論できないやつ。まあね、即死じゃない限りオレがいるところが一番安全かも。
そしてもう1人、なんでここにって人がいる。
「そなたは治癒術師のカリーナだな」
「はい。お会いできて光栄です、殿下」
あれ?姫、イメージチェンジした?
「レディ、前回の花のようなドレスも素敵でしたが、本日は夜にきらめく星のようで、貴女の美しさが一層際立っていますね」
「そうでしょう。可愛いだとキリくんとキャラが被るから、妖艶に変えたのよ」
突然貴族っぽい言動を始めたご主人に、キュリアンたちがポカンとしているし、王子様やお兄さんはダメな子が頑張っているのを見守るような目で見ている。
一方、姫の妖艶への路線チェンジ発言には、付き添いの貴族から苦笑が送られている。
妖艶かどうかは分からないけど綺麗だよ。前のふわふわなのより、今のシュッとしたほうが似合ってるよ。よっ!女神様!
「まあ、キリくん、踊ってるの?」
「ドレスがよくお似合いで、女神のようだと称えているのです」
「キリくん、ありがとう。あれから私も練習して、少しだけ治癒魔法を飛ばせるようになったのよ」
さすが見た目詐欺の姫。キャラは濃いけど、実はすごく真面目なんだよね。
こっちはなんでお屋敷にいるかと言うと、治癒魔法を飛ばすのが出来るようになった報告と、アドバイスが欲しいということで、謁見の後に訪問の申し入れがあって、どうぞと言ってあったそうだ。そこに王子様が割り込んできちゃったのだ。
姫の筋肉たちは控室でお留守番らしい。謁見の間にもいなかったけど、従者の扱いになるので、こういう所には一緒にいられないそうだ。その代わり謁見の間でも見た貴族が一緒だ。
「長い距離はうまく飛ばないのだけど、見て何か気付くことがあったらアドバイスを貰いたいの」
「カリーナ、殿下の前で魔法は禁止だ」
「構わぬ。治癒魔法に特化していると聞いている」
「恐れ入ります」
王子様も治癒魔法を飛ばすと言うのに興味津々のようで、許可も出たところで、実演タイム。
少し離れたところにブノワが萎れた花を持って立っている。なんで萎れた花?と思ったら、治癒魔法でよみがえるから、治癒魔法の練習に使われるメジャーな方法らしい。知らなかった。
「行きます。回復魔法!」
おお、飛んだ。姫、すごい。前の時は出来なかったのに。初めて見たのか後見の貴族も、ほお、と感心している。
「この距離までは出来るのですが、これ以上離れるとうまくいかなくて」
ブノワが次の萎れた花を受け取って、さらに少し離れる。
次の魔法はブノワに届く前にふわっと霧のようになって消えてしまった。うーん、なんでだろう。
オレが姫より遠いところから、元気になーれ、えいってやったら、ブノワのところまで届いて、花がみずみずしく生き返った。出来るよねえ。
なんでかなとご主人を見たけど、ご主人にも分からないらしいので、もう1人の魔法使いであるリュードを見た。
「固定の魔力が足りないんじゃ……」
「固定ですか?」
おずおずと発言したリュードに姫が聞き返すが、ご主人もオレもピンとこない。固定って何?そんなのオレ使ってないよ?
そんなご主人と揃って首をかしげるオレたちの様子に苦笑しながら、お兄さんが説明してくれた。
「魔法を撃つのに必要なのは、最初に形を作り、次にその形をとどめ、最後に押して移動させる、その3つだと学園で習ったはずだよ、フレデリク」
「……記憶にありません」
「お前は豊富な魔力でゴリ押しだからね。カリーナ、形をとどめる魔力が足りていない。遠くへ飛ばすために押す魔力を上乗せすると、形をとどめる魔力も上乗せしなければ崩れる。魔力を込めた分速くもなるからコントロールが難しくなる。魔法の初歩で皆が躓くところだ」
へえ。普通の魔法では最初に習うことらしいけど、治癒魔法はそもそも飛ばしたりしないから姫は今までやったことがなかった。だから、姫が初歩の初歩で躓いているとは誰も思わなくて、治癒魔法特有の何かがあるのだろうと考えてオレのところに来たらしい。
オレもやってみよう。
形を作って、形ととどめて、そっと押す。あ、落ちた。なるほど。この形をとどめるのと押す力のバランスが必要なのか。
いつも、えいってやってるのは、この過程を全部適当にやってるから、多分魔力の無駄遣いをしてるんだろう。
「この治癒魔法を飛ばす方法は教会に伝えてもいいことか?」
「今まで治癒でやる者がいなかったっだけで、他の魔法では普通のことですから、問題ないでしょう」
「キリはどうやって習得したんだ?」
「襲撃された際に、やってみたら出来たと言っていました」
「飼い主に似るものだな」
うう、王子様にオレもノーコンだと思われた。そんなことないよ。多分ちゃんとコントロール出来るよ。
形を作って、少し強めに形をとどめて、一気に押す。あ、すごい速さでどっか飛んで行った。押しすぎたっぽい。
「キリくん、治癒魔法で穴が開けられそうだね」
「キリ、攻撃だと勘違いされるから、今のはダメだ」
むう、難しい。このままではオレのノーコン疑惑が晴らせない。魔力の節約になるから、出来るように訓練してみよう。
姫、オレも頑張るから、一緒にがんばろうね。
ってことで、頑張ったらお腹がすいたので、肉パーティーだ。
ジルとオレの前にずらっと並んだ肉料理が壮観だ。労働の後はやっぱり肉だね。
「美味しそうに食べるな。ウルフもキリのように舌が肥えているのか?」
「普段は味付けをしていない人の食事と同じものを食べているそうですが、ウルフは肉食ですからね」
呼んだ?ってジルが王子様のほうを見ているけど、肉を咥えたままはやめなさい。
ジルとオレのために、薄味にした肉が用意されているんだけど、いろんな味のソースが用意されている。全部野菜の甘みと旨味だけで、調味料使ってないんだって。
エマさんが俺たちの食べたいものを取り分けてくれるんだけど、あれ食べたいなーって見るだけで分かってくれるエマさん、超優秀。
オレはこの赤色のソースが気に入った。赤いけど辛くなくて甘いんだ。脂身の少ないあっさりの肉につけて食べると、ボーノボーノ。
「キリ様の赤いソースはパプリカですね。焼いてから潰して甘みを凝縮させています。ジル様のほうはトマトソースです」
ジルは同じ赤いソースだけど、トマトソースのちょっぴり酸味があるのが気に入ったらしい。でもさ、口の周りにつけてるとちょっとグロいんだよね。この肉はとってもほかほか新鮮ですって感じになっちゃうから、そこは気を付けたほうがいいと思うんだ。
そんな心配をしていたら、やっぱり王子様も感じちゃったらしい。
「動物を狩って食べたりするのか?」
「ジルは森で育ちましたので、食べ物がなければ狩ってきます。会って最初のときにキリくんのためにウサギを狩ってきたんですが、キリくんはそれを見て震えていました」
「イタチはウルフに狩られる側か」
「野生ですとそうなのかもしれません。ですがジルは最初からキリくんが大好きですね」
リュードが直接王子様と話をしている。無礼講だって言われてもキュリアンとブノワは相変わらず空気になり切ってるけど、動物好きが立場を越えて一体感を作り出すのはどこでも一緒らしい。
リュードはジルを狙った毒を執事さんが特定してくれたことで、王子様と執事さんカッコいいって感じでファンになっている。ブノワはいつもと同じで寡黙だから何考えているのかよく分からないけど、王子様に緊張しているキュリアンの胃が大変なことになりそうだ。
人が食べているのは、肉てんこ盛りではなくて、普通のコース料理だ。姫が来るからってことでもともとコース料理の予定だったところに、王子様が来たので、急遽ちょっとだけ内容がグレードアップされたらしい。ホントは毒見とか必要だけど、オレがいるからってことで今回は全部すっ飛ばされている。
「カリーナ、この国での冒険者の治癒術師の活動はどんなものだ?我が国は現在キリくん以外の治癒術師の冒険者はいないので参考にしたい」
「はい。この国でも冒険者の治癒術師は少なく、治癒魔法に特化しているのは私だけです」
お兄さんが姫に治癒術師の冒険者のことを聞いているけど、王子様も興味深そうにしているので、これは王子様が知りたいことなのかも。
ミリアルも教会が変わったから、今後治癒術師の冒険者が出てくるかもしれないもんね。オレたちもお兄さんに料金設定とかいろいろ聞かれたんだよね。でも貴族の依頼は受けてないから、姫からはそういうところを中心に聞いている。
ときどき王子様も質問しながら、治癒魔法と使役獣に関することを中心に話に花を咲かせて、肉パーティーは和やかに終わり、王子様はお城に帰って行った。多分ホントはお城でのお茶会がこうなる予定だったんだろう。
「突然で緊張しましたね」
「ええ、まさかミリアルの王子殿下がいらっしゃるとは」
「私も聞いていなかったので、先にお知らせできず申し訳ありません」
伯爵と姫のお付きの貴族とお兄さんで話しているけど、貴族でも王族が来ると緊張するらしい。予定になかったから、本当は揃って出迎えないといけない伯爵夫人も出かけちゃっていないし、おもてなしとしてはボロボロだったらしいけど、あの王子様は気にしてなさそう。
3人は治癒術師を抱える貴族のおうち同士で仲良くしようねって話をしているから、まあ結果的にはよかったんだろう。
冒険者のほうは、キュリアンが灰のようになってるけど大丈夫だろうか。
「何食ったか覚えてねえ」
「まさか王子様とお話しできるなんて。私、見染められてミリアルに嫁ぐことになったりするかしら」
「おとぎ話かよ」
姫、なかなか妄想が逞しいね。でも姫はそれくらい強かじゃないとね。
お兄さんからミリアルに来るときは面倒をみるよっていう言葉を貰ってホクホクしながら、姫は帰って行った。
人にとっては怒涛の、治癒術師にとっては実りある、ジルとオレにとっては大満足の、肉パーティーでした。まる。
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