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神様おねがい-2
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その日の夜はヴェリルさんは戻らなくて。カルロさんに家まで送られてそのあとまたドアを叩いてくれたのもカルロさんだった。
「エリザ……」
「ただいま……」
「……しょうがないでしょ。ドタキャンとはまた違うくない?」
カルロさんに嗜められて渋々頷くエリザ。
「わかってるけどぉ」
デートの途中でジルベルトさんにも通達が届いたのか。エリザはそのまま放っていかれてジルベルトさんは討伐に飛んで行ったらしい。
「放っていく?普通、こんな可愛い子放置でワイバーン目掛けて走って行くかね?!」
「エリザ……」
「ジルは戦闘バカだからさぁ……血の気が多いというか……」
「つまんなーい。強い男は女より魔獣好き?ちぇー」
不貞腐れてそのまま自分の部屋に篭ってしまった。送ってくれたカルロさんに愛想もない、我が妹ながら自由すぎる。
「カルロさん、ごめんなさい。ご丁寧に送ってもらっていてお礼も言わずに……」
代わりに頭を下げるとヘラっと笑われた。
「全然。放置のところをたまたま見かけたから夜道も危ないしついでだよ。あのまま一人にしてたらまたジルへの体裁も悪くなりそうだしね、アリスちゃんに」
「……」
「大丈夫だよ~ジルも駆けつけてるなら問題ないでしょ~」
「……」
「あんまり心配しないで。戸締りちゃんとして寝るんだよ?」
年上らしい発言で頭をポンポンされるとなんだかまた泣きそうになる。こういう優しさに慣れていない。甘やかされるのは得意じゃないんだ。いつだって私が、ってエリザを守らないとって片意地を張って生きているから……。
「ここ。俺たちが今住んでる宿。俺もフラフラしてるだろうけど、あんまり心配だったら覗きにおいで?明日には戻ってるんじゃないかな」
手渡されたパピルス紙に記されていた宿名は心当たりがある。護衛依頼や大きな依頼などで別の町にしょっちゅう移動すると、定住しているよりは宿屋を転々としたほうが安上がりになる理由もあるのだろう。流れ者たちは大抵宿屋を利用していると聞く。
「……何かあったら……知らせてもらえますか?」
「……もちろん」
何か、の意味はカルロさんはなにも問わない。私もその意味を深く言葉にはしない。ただ渡されたパピルス紙を掌にギュッと握りしめてカルロさんにお休みを告げてその夜は更けていった。
ワイバーンの群れが上空を飛び回るのが落ち着いたと情報が入ったのは翌日の昼を過ぎた頃だった。駆り出された上級者ギルドたちに託されていた依頼や案件の処理が遅れて職場も少し慌ただしい。昨日から森が落ち着かないのか中級クラスのギルドたちも急な仕事を振られたりしてバタバタしていた。
私の心もずっと落ち着かない。二人は無事に戻って来たのだろうか、まだ森の中?ワイバーンに毒性があるタイプだったらどうしよう、なにか良くない事が起こっていたら……考え出すと悩みが尽きなくて。正直仕事に全く集中できなくて、なんならミス連発。マスターにも呼び出されて怒られる始末だ。
「ジルベルトさん、大丈夫かなぁ……」
エリザの呟きに私も静かに頷く。
「……うん」
「なんかさ、怖いものないんだってー」
「え?」
「ジルベルトさん。魔物とか仕留めてる時が一番ワクワクするんだって。何にも考えずに空かけるみたいに闘ってる時が一番生きてる気がするって。ちょっとヤバいよね?」
だいぶヤバい。
「あ~これガチの戦闘狂だぁ……って思ったけど……それがまたかっこいいとかなっちゃった……私もやばぁ」
「……」
「お姉ちゃんは絶対無理なタイプだと思うよ?ジルベルトさんって」
「……」
「命なんかどうでもいいって笑ってたよ。無理でしょ?そんな男」
なんとなく胸の中をざわつかせてときめいていた私の気持ちをきっとエリザは気づいていたんだろう。異性に慣れない、頭でっかちの私の恋愛脳。今まで出会ったことのない野性味あふれたイケメンで、どこか狂気めいてるのに変に優しい。だからなぜか惹かれてしまう、あの熱に揺れたような金色の眼に。
でも、エリザの言う通りだ。
私は――命を雑に扱う人なんか……大っ嫌いだ。
「エリザ……」
「ただいま……」
「……しょうがないでしょ。ドタキャンとはまた違うくない?」
カルロさんに嗜められて渋々頷くエリザ。
「わかってるけどぉ」
デートの途中でジルベルトさんにも通達が届いたのか。エリザはそのまま放っていかれてジルベルトさんは討伐に飛んで行ったらしい。
「放っていく?普通、こんな可愛い子放置でワイバーン目掛けて走って行くかね?!」
「エリザ……」
「ジルは戦闘バカだからさぁ……血の気が多いというか……」
「つまんなーい。強い男は女より魔獣好き?ちぇー」
不貞腐れてそのまま自分の部屋に篭ってしまった。送ってくれたカルロさんに愛想もない、我が妹ながら自由すぎる。
「カルロさん、ごめんなさい。ご丁寧に送ってもらっていてお礼も言わずに……」
代わりに頭を下げるとヘラっと笑われた。
「全然。放置のところをたまたま見かけたから夜道も危ないしついでだよ。あのまま一人にしてたらまたジルへの体裁も悪くなりそうだしね、アリスちゃんに」
「……」
「大丈夫だよ~ジルも駆けつけてるなら問題ないでしょ~」
「……」
「あんまり心配しないで。戸締りちゃんとして寝るんだよ?」
年上らしい発言で頭をポンポンされるとなんだかまた泣きそうになる。こういう優しさに慣れていない。甘やかされるのは得意じゃないんだ。いつだって私が、ってエリザを守らないとって片意地を張って生きているから……。
「ここ。俺たちが今住んでる宿。俺もフラフラしてるだろうけど、あんまり心配だったら覗きにおいで?明日には戻ってるんじゃないかな」
手渡されたパピルス紙に記されていた宿名は心当たりがある。護衛依頼や大きな依頼などで別の町にしょっちゅう移動すると、定住しているよりは宿屋を転々としたほうが安上がりになる理由もあるのだろう。流れ者たちは大抵宿屋を利用していると聞く。
「……何かあったら……知らせてもらえますか?」
「……もちろん」
何か、の意味はカルロさんはなにも問わない。私もその意味を深く言葉にはしない。ただ渡されたパピルス紙を掌にギュッと握りしめてカルロさんにお休みを告げてその夜は更けていった。
ワイバーンの群れが上空を飛び回るのが落ち着いたと情報が入ったのは翌日の昼を過ぎた頃だった。駆り出された上級者ギルドたちに託されていた依頼や案件の処理が遅れて職場も少し慌ただしい。昨日から森が落ち着かないのか中級クラスのギルドたちも急な仕事を振られたりしてバタバタしていた。
私の心もずっと落ち着かない。二人は無事に戻って来たのだろうか、まだ森の中?ワイバーンに毒性があるタイプだったらどうしよう、なにか良くない事が起こっていたら……考え出すと悩みが尽きなくて。正直仕事に全く集中できなくて、なんならミス連発。マスターにも呼び出されて怒られる始末だ。
「ジルベルトさん、大丈夫かなぁ……」
エリザの呟きに私も静かに頷く。
「……うん」
「なんかさ、怖いものないんだってー」
「え?」
「ジルベルトさん。魔物とか仕留めてる時が一番ワクワクするんだって。何にも考えずに空かけるみたいに闘ってる時が一番生きてる気がするって。ちょっとヤバいよね?」
だいぶヤバい。
「あ~これガチの戦闘狂だぁ……って思ったけど……それがまたかっこいいとかなっちゃった……私もやばぁ」
「……」
「お姉ちゃんは絶対無理なタイプだと思うよ?ジルベルトさんって」
「……」
「命なんかどうでもいいって笑ってたよ。無理でしょ?そんな男」
なんとなく胸の中をざわつかせてときめいていた私の気持ちをきっとエリザは気づいていたんだろう。異性に慣れない、頭でっかちの私の恋愛脳。今まで出会ったことのない野性味あふれたイケメンで、どこか狂気めいてるのに変に優しい。だからなぜか惹かれてしまう、あの熱に揺れたような金色の眼に。
でも、エリザの言う通りだ。
私は――命を雑に扱う人なんか……大っ嫌いだ。
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